目次
目的
- 非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の概要について理解を深め、適切なケアを行う
NPPVとは
- 気管内挿管や気管切開を行わずに、マスクなどを装着して陽圧換気をする人工呼吸療法
- 症状の悪化に対して、内科的治療(薬物療法や酸素療法など)が十分に行われているにも関わらず、呼吸機能の改善が見られない場合に適応となる
- とくに、自発呼吸が弱く、気道内分泌物の喀出が困難な場合、あるは誤嚥の危険性がある場合やマスクがフィッティングされていない場合など、気道の確保が困難である場合は、IPPVが選択されることが多い
IPPVとNPPV
IPPV(Invasive Positive Pressure Ventilation )
- 侵襲的陽圧呼吸という
- 気管挿管または気管切開を行い、そのチューブを介して行う人工呼吸のこと
- メリット
- 気道確保が確実に行えるため、呼吸・循環管理がしやすい
- 誤嚥の可能性が少なく、気管内を吸引しやすい
- デメリット
- 苦痛を伴うため、鎮静剤などの薬剤が必要
- コミュニケーションが取れない
- 気道や口腔内粘膜を損傷する可能性がある
- 感染(人工呼吸関連肺炎VAP)を起こしやすい
NPPV(Noninvasive Positive Pressure Ventilation )
- 非侵襲的陽圧呼吸という
- 気管挿管や気管切開は行わず、マスクを介して行う人工呼吸のこと
- 1998年に在宅治療に対する保険が適用となっている
- メリット
- 苦痛が少なく、コミュニケーションが取れる
- 鎮静剤などを軽減できる
- 咳反射が温存できるため、気道クリアランスを保持できる
- IPPVと比較し、感染(人工呼吸関連肺炎VAP)の可能性を軽減できる
- IPPVと比較し、導入および管理が容易であるため、在宅での換気療法の第一選択となることが多い
- デメリット
- 意識があり、自発呼吸がある患者のみに適応される
- 気管とともに食道にも送気するため、呑気や誤嚥のリスクが高い
- 不快感が出るため気道内圧を高く出来ず、気道が確保されない場合がある
- マスクのフィッティングが不十分だと十分な効果が得られない
- 機械音に慣れるまで入眠困難となる場合もある
NPPVの適応
急性期
- NPPV は、呼吸困難、起床時の頭痛、過度の眠気などの症状や肺性心の徴候な
どがある場合 - 高度な呼吸困難があり、薬物療法にも反応が不良な場合
- 呼吸性アシドーシス(pH≦7.35),高二酸化炭素 血症(PaCO2 ≧ 45 mmHg)が認められる場合
- 胸部X線検査で、自然気胸が無いと確認された場合
慢性期
- 高二酸化炭素血症の改善や換気補助を目的に行われ、酸素療法との組み合わせも可能
- 在宅人工呼吸療法(HMV)の導入時には、薬物療法、呼吸リハビリテーション、 栄養療法などの治療が最大限に行われている必要がある
- 自覚症状として、呼吸困難感、起床時の頭痛や頭重感、過度の眠気などがある場合
- 肺性心(体重の増加・頸静脈の怒張・下肢の浮腫など)がある場合
- 次のうち、1つ以上の条件を満たす場合
- PaCO2 ≧ 55 mmHg
- PaCO2 < 55 mmHg であるが、夜間の低換気による低酸素血症が認められる場合
- 安定期でPaCO2<55 mmHgであるが、高二酸化炭素血症を伴い、急性増悪による入院を繰り返す場合