目的
- 院内肺炎(HAP)の治療方針について理解を深め、適切なケアを行う
院内肺炎の重症度分類(成人院内肺炎治療ガイドラインより)
- 成人院内肺炎治療ガイドラインでは「生命予後予測因子」と「肺炎重症度規定因子」による重症度分類がある
生命予後予測因子
- 生命予後予測因子は次の5つ
- I(immunodeficiency【免疫不全】):悪性腫瘍または免疫不全状態
- R(Respiration【呼吸】):SpO2>90%を維持するためにFiO2>35%を要する
- O(Orientation【見当識】):意識レベルの低下
- A(Age【年齢】):男性70歳以上、女性75歳以上
- D(Dehydration【脱水】):乏尿または脱水
- 上記項目の該当が3項目以上:重症群(C群)
- 上記項目の該当が2項目以下の場合、下記の肺炎重症度規定因子に基づいて分類する
肺炎重症度規定因子
- 肺炎重症度規定因子は次の2つ
- CRP≧20mg/dl
- 胸部X線写真で陰影の広がりが一側肺の2/3以上
- 該当なし :軽症群(A群)
- 1個以上該当あり:中等症群(B群)
院内肺炎の治療方針
エンピリック治療
- 検査で、原因微生物を同定することは重要だが、判定までに数日を要するものが多い
- 症状やこれまでの経過、頻度からある程度、原因微生物を推測する
- 確定診断を待たずに治療を開始する必要がある(エンピリック治療)
重症度による予後の予測
- 一般的に、高齢、意識障害、脱水や乏尿、免疫抑制、酸素化の増悪がある場合、予後不良と考えられている
重症度分類に基づく抗菌薬投与
A群(軽症群)
- 考慮するべき病原微生物
- 肺炎球菌
- インフルエンザ菌
- クレブシエラなど
- 使用する抗菌薬
- 第三世代セフェム系(肺炎球菌に対し、活性を有する)
- ペニシリン(β-ラクタマーゼ阻害薬配合)
B群(中等度群)
- 考慮するべき病原微生物
- MRSAを除く多剤耐性菌(緑膿菌など)
- 使用する抗菌薬
- ペニシリン(β-ラクタマーゼ阻害薬配合)
- 第三、四世代セフェム系
- カルバペネム系(緑膿菌に対し、活性を有する)
- クリンダマイシンなど
C群(重症群)
- 考慮するべき病原微生物
- MRSAを除く多剤耐性菌(緑膿菌など)
- レジオネラ
- 使用する抗菌薬
- ペニシリン(β-ラクタマーゼ阻害薬配合)、第三、四世代セフェム系、カルバペネム系(緑膿菌に対し、活性を有する)、クリンダマイシンなど
- 上記に、以下の2剤からいずれかを併用する
- ニューキノロン系
- アミノグリコシド系 など
鑑別診断の重要性
- 治療開始が遅れたために死亡するケースが非常に多いため、HAPが少しでも疑われる場合は、すぐり治療の検討を行う
- 食物の誤嚥が明らかな場合は、化学性肺臓炎の疑いが高い
初期治療、治療中止の判断
初期治療
- 各種の培養検査提出後、早期の段階で医師の経験に基づき、抗菌薬を投与する
- 緑膿菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しての治療も考慮する
治療中止
- 抗菌剤の投与を7日間行い、回復傾向にある場合は治療を中止する
- MRSAや緑膿菌などが原因である場合、抗菌薬を2週間以上投与することが多い
アセスメント
- 院内肺炎とは何かを理解しているか
- 治療方針について理解しているか
- 重症度分類に基づく抗菌薬投与について理解しているか