目的
- 細菌性肺炎の原因菌による違いについて理解を深め、適切なケアを行う
肺炎球菌
菌の特徴
形態・性状
- グラム陽性球菌
- 好気性
- 双球状
生息場所
- 鼻咽喉
特徴的な症状・所見
- 上気道炎が起こる
- 続いて高熱(悪寒・戦慄)が起こる
- 鉄さび色の排痰を生じる
上記の過程を経て、髄膜炎、関節炎、菌血症などを発症し、重症化する場合もある
対応する抗菌薬
- 第一選択はペニシリンG、アンピシリン(広域ペニシリン)である
- 髄膜炎合併症例では、バンコマイシンやカルバペネム系などを使用する
- ペニシリン低感受性肺炎球菌(PISP)の治療としてペニシリンG、アンピシリンの薬剤を高用量で使用することが望ましい
黄色ブドウ球菌
菌の特徴
形態・性状
- グラム陽性菌
- 通性嫌気性
- ブドウの房のように複数の菌体が固まって存在する
生息場所
- ヒトの鼻腔・皮膚・腸管
- 自然環境に常在
特徴的な症状・所見
- 気管支肺炎により、肺組織の破壊が起こる
- その結果、膿胸や肺膿瘍を併発しやすい
対応する抗菌薬
- 第一選択として第一・第二世代セフェム系
- MRSAに対してはバンコマイシンなどの抗MRSA薬を使用する
インフルエンザ菌
菌の特徴
形態・性状
- グラム陰性桿菌
- 好気性
生息場所
- 鼻咽喉
特徴的な症状・所見
- 65歳以上の高齢者に多い
- 鼻粘膜損傷による鼻咽頭炎から起こる
- 菌が鼻咽頭で増殖し、
- 肺炎
- 中耳炎
- 副鼻腔炎
- 髄膜炎 などを起こす
- 慢性呼吸器疾患による急性増悪を引き起こす
対応する抗菌薬
- 第一選択として、β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン、ニューキノロン系、第三世代セフェム系
クレブシエラ(肺炎桿菌)
菌の特徴
形態・性状
- グラム陰性桿菌
- 通性嫌気性
- 楕円形
生息場所
- 口腔・腸管
特徴的な症状・所見
- 市中肺炎
- アルコール依存症患者、高齢者、糖尿病患者、または免疫機能が低下している人が起こりやすい
- 二次性肺炎
- ペニシリンの長期投与による菌交代現象により増殖
対応する抗菌薬
- 第一選択として第二代セフェム系
- ニューキロノン系、カルバペネム系も有効
緑膿菌
菌の特徴
形態・性状
- グラム陰性桿菌
- 好気性
- 楕円形
生息場所
- ヒトや動物の腸管内(常在している)
- 水回りなどの環境下
特徴的な症状・所見
- 易感染性患者に対する日和見感染の代表菌
- 特徴的な膿や緑色の喀痰を伴う
- 気管支肺炎により、気管支肺炎像が認められ、徐々に組織が破壊される
- その結果、膿胸や肺膿瘍を罹患しやすい
対応する抗菌薬
- 基本的には抗緑膿菌に活性を有する抗菌薬などの多剤併用療法が行われる
多剤併用療法
- ニューキノロン系
- カルバペネム系
- 抗緑膿菌活性を有する薬剤
- ピペラシリン
- 第四世代セフェム系
- β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン
- これらの薬剤に追加し、
- アミノグレコシド系
アセスメント
- 細菌性肺炎とは何かを理解しているか
- 細菌性肺炎の治療法について理解しているか
- 各細菌の特性を理解しているか