目的
- 人工呼吸器関連性肺炎(VAP)について理解を深め、適切なケアを行う
人工呼吸器関連性肺炎の定義
- 期間挿管下において、人工呼吸器装着中の患者に発症する
- 挿管後48時間以降に新たな肺炎の発症が認められる
日本のICUでは、1,000入院患者あたり数人(調査データによっては10人以上)発生するといわれており、ICU内での院内感染例としてもっとも多いという見解もある
人工呼吸器関連性肺炎の病態生理
病原菌の定着
- 口腔・咽頭内の病原菌が、気管挿管チューブを伝って気管内に定着する
- 経鼻挿管により、鼻腔内の病原菌が気管まで到達する
- カフ上部の分泌物(痰など)の貯留
- チューブの汚染に伴う生物膜(バイオフィルム)の形成
- 回路の汚染(気管吸引、回路交換、加温加湿水、結露)
消化管液による影響
- 胃管チューブを通じて、胃内の病原菌が気管内に定着する
消化管潰瘍予防目的での薬剤の使用や、早期からの経腸栄養により、胃酸がアルカリ化し、消化管内で病原菌が繁殖する
機能低下
検査・診断・治療
検査
- 血液検査:白血球数の増加、CRPの上昇
- 痰:抗酸菌、一般細菌(培養・塗抹)
- 血液培養
- 尿中抗原(肺炎菌、レジオネラなど)
- 胸部レントゲン、CT検査にて新しい陰影の出現
診断
- レントゲン像にて浸潤陰影
- 下気道からの細菌検出
- 肺酸素化能の低下
- 発熱
- 膿性気道分泌物
- 白血球数増加 など
呼吸器感染症の中でもVAPとは比較的新しい概念であり、明確な診断規準が確立していない部分もあるため、総合的な判断が必要とされている
治療
VAPはHAPの1つであり、抗菌薬の長期投与による耐性菌の問題もあるため、通常は7日間程度の投与で患者が回復したら、終了となることが多い(緑膿菌やMRSAが原因である場合は、14日間程度の投与となることもある
- 一般的な全身療法
- 輸液
- 栄養管理
- 体位ドレナージ
- 酸素吸入
- 口腔ケア など
予防策
口腔・咽頭・気道内の汚染(病原菌定着)
経鼻挿管による副鼻腔炎の合併
カフ上部の分泌物(痰など)の貯留
- カフ圧を適正に保つ(20~30cmH2O)
- カフ上部吸引付挿管チューブの使用
回路の汚染(気管吸引、回路交換、加温加湿水、結露)
- 回路内結露の定期的除去
- 回路交換は頻回にはせず、汚染時に交換
- 人工鼻を用いた加湿
- 閉鎖式吸引システムの活用
消化管液による影響
- 消化管液の逆流
- 逆流を防ぐ体位(半坐位、側坐位)の保持
- 経胃栄養ではなく、経腸栄養を選択し、胃内残渣容量の増大を回避
- 胃液のアルカリ化による細菌繁殖
喀痰排出能の低下
アセスメント
- 人工呼吸器関連性肺炎とは何かを理解しているか
- 予防方法は何かを理解しているか
- 治療方針について理解しているか
VAPは”挿管による人工呼吸器装着患者”に対して起こる感染症であるため、”抜管”も治療方針の1つとなることから、人工呼吸器離脱(抜管)について、毎日検討することもある
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