目的
- 人工呼吸器装着患者の吸引の目的、閉鎖式で行う場合の手技や注意点について理解できる
開放式吸引と閉鎖式吸引との違い
- 開放式吸引:吸引を行う度に呼吸回路を開放する必要がある
- 感染経路の開放、看護師への吸引物の暴露のリスク
- 大気圧に解放されることによる肺胞の虚脱のリスク
- 閉鎖式吸引:回路を閉鎖したまま吸引が可能
- 感染経路の遮断、分泌物の暴露の予防には効果的
- 機能的残気量の維持、肺胞虚脱や低酸素血症の防止に効果的
- コストが高く、手技は開放式に比べてやや難しい
- 開放式吸引と閉鎖式吸引では、感染防御の視点から見ると現時点では大きな差はないとされている(CDCガイドラインでは優位性について特に勧告されていないため)
閉鎖式吸引の流れ
必要物品を準備する
- 気管吸引に必要な物品を準備していく
- 施設によって下記以外に必要な物品もあるため、施設のマニュアル等を必ず確認する
- 吸引システム、接続チューブ
- 閉鎖式気管吸引カテーテル
- アルコール綿、付属のポート洗浄用滅菌水
- 感染防御具(エプロン、マスク、ゴーグル)
- 未滅菌手袋 など
1. 気管吸引の必要性の確認
- 気管吸引の必要性を下記の項目を参考に判断する
- チューブ内に明らかに分泌物が見える
- 気管から左右主気管支に低音性連続性ラ音を聴取できる
- 呼吸音が減弱している
- 胸部触診の際にガスの移動に伴った振動を感じる
- SPO2やPaO2が低下している
- 気道内圧の上昇、換気量の低下がみられる
2. 閉鎖式吸引の実施
- 患者へ説明をする
- 手指衛生と感染防御具(エプロン、ゴーグル、マスク、グローブ)の装着
- モニター装着と位置を調整(吸引中の状態チェックができるようにする)
- 吸引前の酸素化を実施を検討
- カフ圧を確認し、口腔内やカフ上部に貯留した分泌物を吸引しておく
- 吸引圧は10~20KPa(75~150mmHg)に設定し、吸引可能であるか確認する
- 閉鎖式吸引回路のサクションコネクターのキャップを外して接続チューブを接続する
- コントロールバルブの上部分を回してコントロールバルブのロックを解除する
- 片手で吸引回路と気管チューブの接続部を固定する
- スリーブ内のカテーテルを気管チューブに挿入する
- カテーテルのメモリを参考に、カテーテルの先端が気管分岐部に当たらない位置まで挿入する
- 気管チューブの目盛りとカテーテルの目盛りが一致したところから2~3cm先まで挿入する
- 吸引ボタンを押して陰圧を掛け、カテーテルを引き戻しながら吸引をする
- 吸引時間は可能な限り短時間(10~15秒以内)とする
- 下記の合併症を念頭に置いてモニタリングをする
- 気管、気管支粘膜の損傷
- 低酸素血症
- 徐脈、頻脈、不整脈、心停止
- 血圧変動、循環不全
- 呼吸停止
- 嘔吐
- 気管支攣縮
- 疲労、不快感、疼痛
- スリーブ内に黒いマーカーが見えたら、カテーテルを引き抜くのをやめる
- 付属の滅菌水を洗浄ポートに接続し、滅菌水(蒸留水または生理食塩水)を吸引しながら、カテーテル内を洗浄する
- 再吸引が必要かどうかを判断する
- コントロールバルブをロックし、サクションコネクターをアルコール綿で拭いてキャップをする
- 吸引システムのスイッチを切り、個人防護具を廃棄し、手指衛生を行う
- 吸引の効果やバイタルサインを確認し記録する
アセスメント
- 吸引の必要性を判断することができたか
- 吸引圧や、挿入するチューブの長さを確認しながら実施したか
- 患者への侵襲を最小限にするために短時間で手早く行えたか
- 吸引前、中、後で患者の状況を観察できているか