人工呼吸器装着患者の吸引(閉鎖式)
人工呼吸器装着患者の吸引(閉鎖式)【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2017年4月27日
最終更新日:2017年4月27日
(変更日:2017年9月22日) ※
目的
- 人工呼吸器装着患者の吸引の目的、閉鎖式で行う場合の手技や注意点について理解できる
閉鎖式吸引とは…
人工呼吸器の回路に組み込んだ専用の閉鎖式吸引カテーテルを用いて行う吸引
開放式吸引と閉鎖式吸引との違い
- 開放式吸引:吸引を行う度に呼吸回路を開放する必要がある
- 感染経路の開放、看護師への吸引物の暴露のリスク
- 大気圧に解放されることによる肺胞の虚脱のリスク
- 閉鎖式吸引:回路を閉鎖したまま吸引が可能
- 感染経路の遮断、分泌物の暴露の予防には効果的
- 機能的残気量の維持、肺胞虚脱や低酸素血症の防止に効果的
- コストが高く、手技は開放式に比べてやや難しい
- 開放式吸引と閉鎖式吸引では、感染防御の視点から見ると現時点では大きな差はないとされている(CDCガイドラインでは優位性について特に勧告されていないため)
閉鎖式吸引の流れ
必要物品を準備する
- 気管吸引に必要な物品を準備していく
- 施設によって下記以外に必要な物品もあるため、施設のマニュアル等を必ず確認する
- 吸引システム、接続チューブ
- 閉鎖式気管吸引カテーテル
- アルコール綿、付属のポート洗浄用滅菌水
- 感染防御具(エプロン、マスク、ゴーグル)
- 未滅菌手袋 など
蘇生バック(バッグバルブマスク、ジャクソンリース)、Spo2モニター等すぐ使えるように準備しておく
【グローブは滅菌か、未滅菌かについて】
実は、どちらを使用するべきかについてはCDCガイドラインでも未解決(2017現在)
いずれにしてもVAP(呼吸器関連感染症)防止のために、清潔操作が必要不可欠のため、施設のマニュアルに従い清潔に注意し実施すること
1. 気管吸引の必要性の確認
- 気管吸引の必要性を下記の項目を参考に判断する
- チューブ内に明らかに分泌物が見える
- 気管から左右主気管支に低音性連続性ラ音を聴取できる
- 呼吸音が減弱している
- 胸部触診の際にガスの移動に伴った振動を感じる
- SPO2やPaO2が低下している
- 気道内圧の上昇、換気量の低下がみられる
気管支の抹消末梢部位に貯留した分泌物は、気管吸引では除去できないため、加湿や体位ドレナージなど他の排痰援助方法を検討する必要がある
2. 閉鎖式吸引の実施
- 患者へ説明をする
- 手指衛生と感染防御具(エプロン、ゴーグル、マスク、グローブ)の装着
- モニター装着と位置を調整(吸引中の状態チェックができるようにする)
- 吸引前の酸素化を実施を検討
低酸素に陥りやすい患者に対しては、事前に100%酸素で酸素化しておく
状態が安定した患者の場合、必ずしも酸素化を行う必要はない
- カフ圧を確認し、口腔内やカフ上部に貯留した分泌物を吸引しておく
吸引動作により、口腔内やカフ上部に貯留した分泌物の垂れ込みを防ぐ
- 吸引圧は10~20KPa(75~150mmHg)に設定し、吸引可能であるか確認する
ここまでは、開放式吸引と同じ流れ
閉鎖式吸引回路の取り扱いは製品によって異なるため、各メーカーの取り扱い説明書を参照し正しく行う
- 下記の合併症を念頭に置いてモニタリングをする
- 気管、気管支粘膜の損傷
- 低酸素血症
- 徐脈、頻脈、不整脈、心停止
- 血圧変動、循環不全
- 呼吸停止
- 嘔吐
- 気管支攣縮
- 疲労、不快感、疼痛
アセスメント
- 吸引の必要性を判断することができたか
- 吸引圧や、挿入するチューブの長さを確認しながら実施したか
- 患者への侵襲を最小限にするために短時間で手早く行えたか
- 吸引前、中、後で患者の状況を観察できているか
本コンテンツの情報は看護師監修のもと、看護師の調査、知見、ページ公開時の情報などに基づき記述されたものですが、正確性や安全性を保証するものでもありません。
実際の治療やケアに際しては、必ず医師などにご確認下さい。
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