目的
- 人工呼吸器装着患者の口腔ケアを行う目的が理解でき、正しい手順で実施することができる
人工呼吸器患者の口腔ケア
目的
- 口腔内環境を清潔に保ち、人工呼吸器関連肺炎(VAP)などの感染を予防する
- 口腔内の観察と保湿を行い、乾燥や潰瘍形成などの口腔内トラブルを予防する
・人工呼吸器患者は唾液の分泌能が低下しているため、自浄作用が低下しており、口腔内細菌が増加しやすい状況となっている
・また常に開口していることによる口腔内の乾燥や、気管チューブの長期留置による口腔内潰瘍が発生しやすい
人工呼吸器患者の口腔ケアの実施
必要物品の準備
- 必要物品は過不足が無いように事前に準備し、ケア中は患者から離れない
- 歯ブラシ、舌ブラシ、スポンジブラシなど
- 水道水や洗口液
- カップ
- 清拭用タオル
- 洗浄用シリンジ
- 口腔内保温剤、ワセリンなど
- 個人保護防具(手袋、ビニールエプロン、ゴーグル、マスク)
- 吸引用カテーテル、吸引システム
- カフ圧計
- ペンライト
- 気管チューブ固定用テープ
- バイドブロック、口角鈎など(必要時)
口腔内の洗浄液や消毒液の使用については諸説あるが、施設の基準に従う
口腔ケアの手順
- スタッフ2名で実施し、1名は気管チューブの管理や患者の観察を行い
もう1名がケアを実施するとよい - 体位はセミファーラー位か角度を付けた側臥位とする
どの体位であっても誤嚥を予防するために頸部後屈を避け、枕やタオルなどで調整する
- 手洗い、手指消毒を行い、個人防護保護具を着用する
- 準備段階として、以下の確認を行う
- 気管チューブの固定位置が正しいか
- 固定は確実であるか
- カフ圧は適切か
- 呼吸状態、循環動態は安定しているか
必要に応じて、気管チューブの固定テープを一時的に外しておく(視野を確保するため)
- 口唇、口唇周囲を清拭して、口唇の損傷予防のためにワセリンを口唇へ塗布する
- 必要があれば口角鈎などで視野を確保し、口腔内が観察できるようにしておく
- 口腔、カフ上部の吸引を行う
- 片方の手で口腔内の粘膜をよけながら、ブラシを歯と歯茎の境目に直角に当てて、1~2本ずつ小刻みにブラッシングをする
- 頬の内側、舌、唇の内側、口蓋などの汚れを粘膜用ブラシで拭き取る
舌苔は細菌の温床となるため可能な限り除去する
舌苔除去のために、舌に強い摩擦を加えて舌表面を傷つけると、口腔内の雑菌が繁殖しやすくなるため、一度に除去しない(湿潤環境を維持しながら、丁寧に除去する)
- 洗浄液を少量ずつ、口腔内へ注入する
- 吸引しながら口腔内を洗浄する
ブラッシングによって剥がれ落ちた歯垢を除去するために洗浄が必要である
洗浄により誤嚥のリスクもあるため、十分な洗浄に加えて確実な吸引が必要となる
現在では、洗浄を必要としないキットも販売されている
常に開口している患者では保湿剤自体が固形化して口腔内汚染を助長することがあるので注意する
- 気管内チューブの固定位置を確認し、カフ圧を調整しながらテープで再固定する
- ケア終了後は下記を観察してから退室し、物品を片つける
- カフ圧は適切か
- 気管チューブは正しく固定されているか
- 呼吸状態、循環動態の変化がないか
- 人工呼吸器は正しく設定されているか
注意点
- 口腔内を刺激することにより、患者が誤って気管内チューブなどを噛むことがあるため、必要に応じてバイドブロックなどを使用する
- 気管内チューブの自己抜去に十分注意し、ケア中は患者から離れない
- カフ圧が低いと、気管内チューブを動かした際にカフ上部に貯留した分泌物や洗浄液が気管内に垂れ込むおそれがあるため、設定値かやや高めに圧を調整しておくとよい
ただし、カフ圧が高すぎると、カフ周囲への圧迫が強くなり、気管内壁に潰瘍を招く恐れがあるため、カフ圧の調整には十分注意する
アセスメント
- 人工呼吸器装着中の患者への口腔ケアの目的、注意事項が理解できているか
- 物品は過不足なく揃い、途中で退室せずともケアが行えたか
- 口腔内の汚れの洗浄方法を理解し、実践できたか
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