目的
- 人工呼吸器装着患者への鎮静について理解する
- 鎮静中の患者管理を適切に行うことができる
人工呼吸器管理中の患者への鎮静の意義
人工呼吸器装着患者が抱える不安や苦痛
- 人工呼吸器管理中の患者は、様々な不安や苦痛に悩まされることとなる
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- 発声ができないストレス
- 侵襲的モニター装着による苦痛
- 気管吸引などの処置に伴う苦痛
- 術後疼痛、創部痛などの苦痛
- この他、挿管(気管)チューブが留置されていることによる違和感や、鎮静薬による健忘、記憶の欠損などに対する不安もある
人工呼吸器装着患者へ鎮静を行う目的
- 患者の安全・快適性の確保
- 前述した人工呼吸器管理に伴う不安や苦痛を和らげる
- 挿管(気管)チューブ留置や、侵襲的モニター装着に対する不快感の軽減
- 安静の促進と、睡眠の促進
- 処置に対する苦痛の軽減
- 自己抜管の防止
- 酸素消費量、基礎代謝量を減少させる
- 換気の改善、圧外傷の減少
- 人工呼吸器との同調性を改善する
- 呼吸ドライブ(呼吸中枢)の抑制
鎮静管理の全体像
- 鎮痛と鎮静
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- 女性よりも男性の方が疼痛を強く感じる場合が多い
- 鎮痛を考慮しながら、鎮静を行うことが重要
- 侵襲的処置や疼痛を伴う処置を行う可能性がある場合は、処置等に先行して鎮痛薬を投与する
- 不穏と鎮静
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- 筋弛緩薬を使用している場合、定期的な鎮静深度および鎮静の質を評価することが望ましい
- せん妄
- ICUにおけるせん妄は、長期予後や死亡率との関連が研究されている
- 定期的なせん妄のスクリーニングを行うことが推奨されている
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- せん妄の予防として早期モビライゼーション(関節運動)が推奨されている
鎮静中の患者管理
- 鎮静中の患者のへの対応にとして、下記のケアを試みることから始める
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- 睡眠パターンが保たれるように環境を整える
- 不要なチューブやドレーンは抜去を検討する
- 鎮静が過剰になることを「過剰鎮静」という
- 過剰鎮静により、以下の障害が起こる可能性がある
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- 長期臥床により廃用症候群を生じる
- 体動が減ることで、褥創、深部静脈血栓症・肺梗塞のリスクが高くなる
- 呼吸筋の萎縮・筋力低下により、下側肺障害を招く
- 結果的に、人工呼吸器装着期間が長くなる可能性あり
- 鎮静により人工呼吸器装着中の記憶が残らないため、人工呼吸器から離脱後、精神障害を生じる可能性がある
- 鎮静が十分でない状態を「過小鎮静」という
- 過小鎮静により、下記の弊害が起こる可能性がある
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- 患者の不安や不快感が増す
- 充分な安全性が確保されない
- 不穏やせん妄を引き起こす可能性がある
- 酸素消費量、基礎代謝量が減少する
アセスメント
- 人工呼吸器管理中の患者の鎮静の目的を理解できているか
- 鎮静中の患者の全体像を把握できているか
- 鎮静中の患者が過少鎮静、過剰鎮静となっていないかを、観察等から導き出せているか