目次
目的
- 人工呼吸器患者に鎮静を評価する目的を理解できる
- 適切な評価を行うことができる
鎮静を評価する目的
患者ごとの適切な鎮静レベルの維持
- 必要な鎮静レベルを維持し、不要な鎮静を減らすために、鎮静の評価を行う
- 鎮静薬の過剰投与を防止し副作用を最小限にする
- リハビリやウィーニングにおける鎮静レベルの調整
- 適切な鎮静レベルの評価と調整によって、ICU在室日数の短縮、気管切開の確率等を減らすことができるという報告もある
鎮静の評価の実際
RASS(Richmond agitation-sedation scale)
- RASSは鎮静レベルの評価法として最もメジャーなスケールであり、日本呼吸療法医学会のガイドラインで推奨されている
- 鎮静レベルとともに不穏・興奮の評価も可能
スコア 用語 説明 +4 好戦的 明らかに好戦的、暴力的で、スタッフに対する差し迫った危険がある +3 非常に興奮 チューブ類またはカテーテル類を自己抜去
攻撃的+2 興奮 頻繁な非意図的な運動
人工呼吸器のファイティング+1 落ち着きのない 不安で絶えずそわそわしている
しかし動きは攻撃的でも活発でもない0 意識清明 -1 傾眠状態 完全に清明ではないが、呼びかけに10秒以上の開眼ができ、アイコンタクトで応答できる -2 軽度の鎮静状態 呼びかけに10秒未満の開眼ができ、アイコンタクトで応答できる -3 中等度の鎮静状態 呼びかけに体動または開眼で応答するが、アイコンタクトは不可 -4 深い鎮静状態 呼びかけに無反応
身体刺激で体動または開眼あり-5 昏睡 呼びかけにも身体刺激にも無反応 - ステップ1 : 30秒患者を観察し、視診のみでスコア 0~+4 で判定する
- ステップ2 : 患者に大きな声で声掛けするか、開眼を促す
10秒以上のアイコンタクトが不可能な場合は、繰り替えし呼びかけを行い、
スコア -1~-3 で判定する - ステップ3 : 声に対する反応が見られなかった場合、肩をゆする、胸骨への痛み刺激などを与え、スコア -4、-5 で評価する
- RASSが+3~+4のときはCAM-ICUを用いてせん妄の有無を評価すると、より客観的な評価が可能となる
CAM-ICU
- CAM-ICUとは主に鎮静の目的でもあるせん妄を評価する
- 中枢神経疾患や筋弛緩薬投薬中の患者を除いたすべての患者が対象
- 勤務シフトごとに1回以上、評価ツールを用いてスクリーニングを行う
- 患者にいくつかの簡単なテストを行い、陽性であればせん妄と判断する
- 気管内挿管などで言語的なコミュニケーションが取れない患者や、手先を細かく動かすことが難しい患者でもできるようなテストである
- 所見が4段階に分かれており、所見1+所見2、所見3か4のどちらかが揃えばせん妄と判断される
- 所見1 : 精神状態変化の急性発症または変動性の経過
- 所見2 : 注意力の欠如
- 所見3 : 意識レベルの変化
- 所見4 : 無秩序な思考
鎮静薬の減量と中断
浅い鎮静での管理
- 患者にとって充分と思われる鎮痛効果を維持しつつ、浅いレベルで鎮静を行う方法(眠らせずに痛みだけをとる管理)
- ただし、鎮痛薬を中断してしまうと、気管チューブの違和感や痛みがストレスとなり、不穏や興奮状態となる可能性がある
- 鎮痛を浅くすることで、鎮静が深くなることは避けるべき
鎮静の中断
- 別の言い方では、自発覚醒トライアルとも言う
- 鎮静薬・鎮痛薬の投与を中止し、その薬剤が必要ないと確認すること
- 鎮静薬の投与量を減らし、鎮静薬の蓄積を防ぐ
- 結果的に、人工呼吸器からの早期離脱の可能性が出てくる
注意点
- 一般的に人工呼吸器中の患者はRASS 0~-2程度にコントロールするのがよいとされている
- しかし、患者のストレスやせん妄のレベルなどは個人差があるため、症例に応じた鎮静レベルの目標設定と定期的な見直すこと
アセスメント
- 鎮静スケールを用いて患者の鎮静レベルを客観的に観察・評価できたか
- 患者の状態に応じて鎮静レベルを決定し、適切な管理ができているか