目的
- 人工呼吸器患者の鎮静をする際に使用する薬剤の効果について理解する
- 患者の状態や目的に応じた、適切な薬剤選択と投与量について理解できる
- 薬剤の副作用について理解し観察できる
鎮静で用いる薬剤とその使用方法
- 人工呼吸中に使用される鎮静薬・鎮痛薬には様々なものがあるが、鎮静レベルを一定に保つためには持続静脈内投与が可能な薬剤が望ましい
- 薬剤の特性に応じて使い分けたり、組み合わせて使用する
- なお、人工呼吸中の鎮静について保険適用となっているのは、プロポフォール、ミタゾラム、デクスメデトミジンの3つである(2017年現在)
プロポフォール(ディプリバン®)
- 静脈麻酔薬であり、中枢神経にあるGABA受容体などの中枢神経系に結合し神経伝達を阻害する
- 作用発現が早い短時間作用性で、調節性がよいため、よく用いられる
- 期待される作用は以下の通り
- 鎮静作用
- 催眠作用
- 抗不安作用
- 健忘作用
- 鎮痙作用
- 制吐作用
強い痛みに対しては、鎮痛薬投与が必要
- 起こりうる副作用は以下の通り
- 呼吸抑制
- 低血圧、徐脈、アナフィラキシー様症状
- 末梢静脈投与時の疼痛および静脈炎
- 高トリグリセリド血症(脂肪乳剤過剰投与による高脂血症)
- プロポフォール注入症候群、横紋筋融解症 など
プロポフォール注入症候群とは、高容量のプロポフォールを長期投与することで、代謝性アシドーシス、脂質異常症、多臓器不全が進行し、その結果、徐脈性不整脈や心停止に至ってしまうことをいう
- 神経学的な副作用
- 神経学的な評価が困難になる
- 前向性健忘(投与時以降の記憶が無くなる)を起こしやすい
- せん妄を高確率で引き起こす と言われている
- 静脈注射投与後1~2分で作用を発現し、短期投与で3~12時間、長期投与で50±6時間で効果が薄れ、消失する。
プロポフォールに含まれている脂肪乳化剤は細菌の温床になりやすく、感染防止対策上では、一度開封したものは12時間以内に交換することが推奨されている
静脈炎を起こしやすい薬剤であるため、刺入部および、血管の状態も併せて観察する。また中心静脈からの投与が望ましい
- 維持容量は静脈注射で0.3~3.0mg/Kg/時である
- 小児への投与は原則禁忌
ミタゾラム(ドルミカム®)
- マイナートランキライザー(緩和精神安定剤)であり、中枢神経にあるGABA受容体を活性化する、ベンゾジアゼピン主体の薬剤
- 短時間作用型であり、鎮静深度の調整が容易
- 他の薬剤と比べて循環抑制作用が少ない
- 期待される作用は以下の通り
- 鎮静作用
- 催眠作用
- 抗不安作用
- 健忘作用
- 鎮痙作用
患者が気管チューブにより咽頭部などに痛みを訴える場合、鎮痛薬の適応となる
- 副作用には呼吸抑制、低血圧があり、せん妄との関連性もある
- 神経学的な評価が困難になる
- 前向性健忘(投与時以降の記憶が無くなる)を起こしやすい
- 投与中止時にせん妄や興奮などの離脱症状がみられることがある
- 静脈注射投与後2~5分で作用を発現し、3~11時間で効果が薄れ、消失する。
- 維持容量は静脈注射で0.03~0.2㎎/Kg/時である
デクスメデトミジン塩酸塩(プレセデックス®)
- 我が国では近年発売された、中枢・末梢α₂アゴニストといわれる交感神経を抑制する物質
- 作用発現は速やかで覚醒も早く、深度調節性が良い
- 呼吸抑制がほとんどみられない
- 生理的な睡眠を誘発し、ミタゾラムに比べてせん妄が出現しにくいと注目されている
- 期待される作用は以下の通り
脊髄に分布するα₂受容体を刺激し、痛みの伝達抑制効果も期待できる
但し、刺激に対して容易に覚醒するため、深い鎮静には適さない
- 起こりうる副作用は以下の通り
- 徐脈
- 低血圧(交感神経遮断)
- 一過性高血圧(末梢血管への直接作用)
- 気道反射消失 など
血圧の昇降には個人差があるものの、刺激伝導系への影響はプロポフォールより強力であるため、徐脈の出現には特に注意する
- 静脈注射投与後5~10分で作用を発現し、8~3.1時間で効果が薄れ、消失する。
- 投与量は導入6μg/Kg/時で10分、維持は0.2~0.7μg/Kg/時である
アセスメント
- それぞれの薬剤の作用と副作用が理解できているか
- 薬剤の効果が出る時間と、消失半減期を理解しているか
- 薬剤投与による患者の状態の変化を観察できているか
- それぞれの薬剤の投与量を踏まえて医師の指示通りに投薬ができているか
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