用語解説
用語の読み
やくがい
用語の意味
私たちは病院を受診して医師から処方された薬を服用する前に、医師と薬剤師から薬の用法・用量の他、副作用についても説明を受けます。これは、どんな薬にも病気のもととなる原因や症状に働きかける主作用と同時に副作用を併せ持っているからです。もちろんこの副作用の出現の度合いは薬剤によっても異なりますし、薬を服用した人の全身状態や体格も副作用出現頻度・程度に影響を与えます。それでも私たちが処方された薬をあまり疑ったり不安になったりせずに服用しているのは「少しくらい副作用があっても仕方がない」と考えているからです。でもその副作用が「少しぐらい」を通り越して、死や不可逆的な障害を負うような事態を招く危険性があると知っていたら、その薬を使用することを当然拒否するでしょう。このように「薬害」は「副作用」とは区別して用いられるべき言葉であり、私たちが認識している「薬の副作用として受忍できる範囲」をこえて出現する健康被害のことを指します。また薬害は薬の有害性について予見することが可能であったにも関わらず、薬の製造・販売・監視ならびに投薬に関わった人達によってその情報が軽視・隠蔽・歪曲・遮断されることによって起こるとも考えることが出来ます。つまり薬がそれぞれに持つ副作用の出現そのものとは違い、研究・開発に関わる企業や国、医師、薬剤師による不備や過失がなければそのような被害は起こらなかった、または被害を最小限に抑えることができることから、薬害は「公害」「人災」であるとも言われます。この背景には、「行政・企業・研究機関の癒着構造」「企業の営利主義」「消費者自身の薬に対する無知・依存性」などがあると指摘されており、特に薬の開発や販売・投薬に関わった人の責任が追及されることになります。
しかしながら、薬害が薬害と認められることはそう簡単ではありません。それは「薬害」と「病気」を医学的に判断して区別することが難しいというだけではなく、長期間にわたって製薬企業・国・医師・薬害被害者とその家族・一般市民の間で展開される様々な相互作用を介在し、「薬害による健康被害である」と社会的に認められなければならないという側面を持つからです。
看護師・椿(つばき)の一言コメント
薬害⇒簡単に言うと…医薬品による健康被害(障害等)のことを言います。
これは国の薬事行政の矛盾や安全性の軽視・医療従事者の認識不足が大きな要因とされています。
薬害といってまず有名な事例は「薬害エイズ」ではないかと思います。
薬害エイズは1980年に血友病患者に血液凝固因子製剤(非加熱製剤)を使用し多くのHIV感染者を生み出し約400人以上が死亡したと言われて大きな社会問題となりました(10年かかって和解成立)
その他にもサリドマイド(眠剤により奇形児出産が多く発生し大きな社会問題となった)
イレッサ訴訟(抗がん剤のイレッサの副作用で間質性肺炎を発症し死亡したとされる事案)
薬害ステロイド(アトピー・膠原病・ぜんそくに長期的に用いられるステロイドの乱用)等・・が代表的です。
現在では薬害根絶のため再発の防止と体制を確立していますが、行政と企業との関係や監視体制・医療教育・研究等まだまだ抜本的改革が必要のように感じますよね。