用語解説
用語の読み
ろうじんかんご
用語の意味
我が国の人口の高齢化は加速的に進み、現在の医療・福祉制度では十分にカバーしきれていないという現状にあります。この問題の背景には「核家族化による各家庭の介護の手が不足している」「少子高齢化による年金システムの崩壊」など、日本の家族形態の変化による原因の他に、「病気や障害に焦点を当てるばかりで、それぞれの高齢者のニーズに合う医療・福祉が十分に用意されていない」という側面があります。今はまだ趣味や仕事で元気に過ごすことが出来ている団塊の世代が後期高齢者となる15年~20年後、我が国の高齢者の数は最多となりますが、その状況を迎えるにあたって高齢者の看護のあり方が今変革することを期待されています。
老年看護学は成人看護学・小児看護学・母性看護学などと同じように、一つの独立した体系を持つ学問領域でありながら、実際に現場で働く看護師の中では成人看護の延長上にあるものという意識が強い傾向にあります。これは患者の看護をするときに疾患や症状・障害にのみ目を向けているという習慣の現れで、また病院・介護施設という場所に限られた問題解決に重点を置いた看護介入をしていて、地域や家族と連携をするのは窓口業務と化していることを示しています。看護師はこの意識を改め、高齢者の個別性を踏まえた看護を実践できる能力を習得するとともに、高齢者と家族のQOL(生活の質)が少しでも向上するような支援をすることが求められています。具体的には、高齢者の疾病の予防・栄養状態の改善・褥瘡予防と処置・脱水予防・排せつ介助などの援助の他、せん妄や認知症など加齢による精神面の変化に対する適切な介入や社会資源の活用が必要です。この際重視されるべきことは、対象となる高齢者が持つ個別性・人権であり、これまでのその人の生き様や生活環境・家族背景を考慮した看護が実施されなくてはなりません。
今後ますます人口高齢化が進み、このことが様々な領域に影響を与える問題に発展することが予想される中、2002年に老人看護専門看護師が誕生しました。2011年4月現在で老人看護専門看護師として登録している人は32名で(専門看護分野はこれ以外にがん・精神・感染・母性・小児・地域・家族支援などを含む11分野)、病院や看護系大学の教員として活躍しています。
老人看護専門看護師は、医師をはじめとする医療チームや家族、地域の関連組織と協力・連携して高齢者が最期までその人らしさを保ちながら生きられるように、一人ひとりの事例とそれを取り巻くシステムの両面からアプローチしなくてはいけません。そのためには「高齢者看護への意識改革」「高齢者にマッチする医療・看護の提供」「高齢者の終末期医療の確立」という3つの方向から働きかけ、医療・看護分野から社会全体に向けて自ら発信していくという姿勢を持つ必要があります。
老人看護ができる職場に転職を考えている方へ
日本は高齢化社会であり、病院や施設には様々な高齢者の方が入院をしています。 そのため、ほとんどの職場では、高齢者の方と接する機会が多いため、そういう意味では老人看護はどこで働いてもできるといえますが、老人専門の病院や、施設も沢山あります。
その中の代表的なものに老人病院や介護保険施設がありますが、これらの職場は求人が多いためハローワークや求人雑誌でも比較的容易に探すことができるものの、施設によって勤務体制や待遇あるいは給与面、福利厚生などにかなり大きな違いがあるため、各施設の特徴をきちんと把握する必要があります。
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看護師・椿(つばき)の一言コメント
これから日本の未来は超高齢化社会に向かう見通しが経っています。
老人看護は高齢者の特有の疾患やADLの機能低下に対し疾患を予防したりケアを考える分野でまだまだ新しい分野と言えます。
現在においての老人看護の考え方は、生活機能の観点からアセスメントをして看護展開をする方法に変わってきています。
これから社会に期待される事は高齢者が安心して暮らすことのできる住環境の整備や・地域・医療機関・介護施設・介護サービス等多岐に及びます。
それに加え高齢者の家族の支援・ケアシステムの構築・地域の介護力の向上等まだまだ課題は多いように感じます。
これからの老人看護で看護師に求められる事は高齢者の健康支援や終末期ケアと高齢者の意思を尊重しながら心身や社会的環境等を配慮した看護となるのではないでしょうか。