用語解説
用語の読み
ごだいしっぺい
用語の意味
2006年度に行われた医療法改正により、厚労省は「患者数が多く、国を挙げて緊急に対策を講じる必要がある」「それぞれの事例に対してきめ細やかな対応が必要とされる病気」として、「がん」「脳卒中」「心臓病」「糖尿病」を4大疾病として位置付けました。これを受けて各都道府県は診療の中核となる医療機関の整備を進めたり、疾病の早期発見・早期治療・予防策などの医療計画を具体化してきました。さらに各都道府県はこの4大疾病に対する医療計画に加えて、救急・災害・僻地・周産期・小児領域の5つの事業の医療体制を整え、実現させることが義務付けられました。そして2011年7月、厚労省はこの4大疾病に「精神疾患」をあらたに付け加えて「5大疾病」と位置づけ、精神疾患も4大疾病と並んで重点対策を行う方針を打ち出しました。
2008年に行った同省の調査によると、がん患者数152万人、糖尿病患者数237万人であるのに対して、精神疾患の患者数は323万人にも上ることが明らかになっており、4大疾病の患者数を大幅に上回る結果となっています。我が国では毎年3万人以上の自殺者が出ますが、そのうちの多くが何らかの精神疾患を患ってる可能性があると考えられています。精神疾患の患者の多くは自殺念慮を抱くことが珍しくはなく、長期間に及ぶ薬物療法(場合によっては入院が必要)などと並行して専門医の診察・認知療法が必要となっています。精神疾患が急増した背景として、長引く不況による生活への不安を持つ人が増えていることの他、うつ病や統合失調症(精神分裂病から改称され、今ではこう呼びます)が一般の人に広く知られるようになったことから精神科を受診することに抵抗が少なくなり、精神疾患と診断される人の数自体が増加したことなどがあります。
我が国の精神疾患患者の平均入院期間は300日を超えていて、この日数は世界的に見ても突出しています。これは精神疾患の治療が行き届いていることを示しているのではなく、精神病院を退院した後に受け皿がないことを意味しています。精神疾患は一旦発症すると、再発防止のために長期間薬物療法を続ける必要があります。また、薬の副作用や対人関係への不安感からなかなか社会生活になじむことが難しくなるため、本人や家族の経済的な負担が大きくなることも問題視されています。そのため我が国の精神病院には「病院内寛解」といって、精神病院の中でだけは自立した生活を送ることが出来る人が多数存在しているのです。精神科医療をめぐるこのような現状のなか、精神科の在宅医療やグループホームの充実化を図ることは、患者の社会復帰を促す契機になると期待されています。
看護師・椿(つばき)の一言コメント
5大疾病はがん・脳卒中・心臓病・糖尿病・精神疾患を言います。元々は4大疾病だったのが2011年に精神疾患が加わり5大疾病と数が増えました。
厚生労働省は地域医療の基本方針として医療計画(都道府県が作成するもので5年更新)に盛り込む為に4大疾病を指定しました。都道府県が主に中心となり、疾患の予防や患者数の減少を図ったり、医療環境の整備を行うことになっています。
こうなると訪問診療や訪問看護の在宅医療の充実が要となりますからね、看護師の取り組み方も今後は重要となってくるでしょう。