用語解説
用語の読み
せんもうけあ
用語の意味
せん妄ケアとは、せん妄を発症した患者に対するケアのことです。
せん妄は、意識障害や注意、知覚、感情などの障害を症状として持つ精神症候群で、入院中の内科疾患患者の10〜30%、末期がん患者の30〜50%、終末期がん患者では80〜90%が発症すると言われます。大脳皮質、辺緑系、上部脳幹の認知、記憶、情動、睡眠覚醒周期などに深く関係する部位におけるアセチルコリン欠乏、抗コリン作動、ドパミン過剰が発症に関与していると言われ、主な原因としては感染症や欠乏症、鎮痛剤やアレルギー抑制剤、睡眠薬などの薬剤投与が挙げられます。
せん妄ケアで重要なことは、せん妄の原因の如何に関わらず、患者やその家族との十分なコミュニケーションを図り、環境を整えることです。その際、患者の人格を尊重し、患者を中心としたコミュニケーションを構築することが大切です。治療や、状況についての説明は、患者だけでなく家族にも、分かりやすい言葉で十分に行ない、患者の不安や当惑を軽減するように努めます。他にも、転倒や転落などの事故を防止する配慮や、患者のそばに時計やカレンダーの配置、日中の適度な運動、関わる看護師やスタッフを固定するなどの安心できる環境作りが求められます。
せん妄をもたらす要因分析は進み、それに基づくアセスメントツールの開発も盛んです。せん妄ケアでも、臨床的なケア方法の蓄積がされています。しかし、エビデンスの高いケア方法を導くような研究は、あまり多くされていません。臨床的事例の分析、検討を重ねながら、ケアの効果を明らかにするための介入研究や、せん妄ケアのマネジメントを促すような研究が、今後のせん妄ケアに対する課題と言えるでしょう。