胸腔ドレーン管理

胸腔ドレーン管理【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2015年12月22日
最終更新日:2020年07月30日
(変更日:2020年8月4日) ※

目的

  • 虚脱した肺の再膨張を促し、胸腔内圧を適正に保つ(気胸治療)
  • 胸腔内に貯留した空気や体液(滲出液、血液、膿など)を持続的に体外に排出させる(胸腔ドレナージ

気胸とは

  • 肺の表面(臓側胸膜)に穴が開き、空気が胸腔に漏れて(エアリーク)、肺が虚脱した状態
  • 胸腔内にある生理的胸水が静水圧・膠質浸透圧や、毛細血管と胸膜表面のバランスが崩れ、胸水が貯留した状態
胸腔ドレーンは気胸と胸腔内ドレナージの両方の目的で挿入される為、目的の違いを確認しておく事が必要

必要物品・準備

胸腔ドレーン挿入時

  • 胸腔ドレーン
  • 低圧持続吸引器と滅菌蒸留水
  • 消毒セット、縫合セット、局所麻酔薬、滅菌ガウンと滅菌手袋、滅菌ドレープなど

胸腔ドレーン管理

  • 必要に応じて、固定テープ、聴診器、クランプ用鉗子

方法

胸腔ドレーン挿入時

  1. 挿入に適した体位(仰臥位で挿入側の上肢を拳上する)をとる
  2. 挿入部を消毒し、滅菌ドレープをかける
  3. 局所麻酔を行う
  4. 胸腔ドレーン(トロッカーカテーテル)を挿入する
  5. ドレーンと低圧持続吸引器を滅菌操作で接続する(ウォーターシール部は予め滅菌蒸留水で満たしておく)
  6. 排液の有無とエアリークの有無を確認後、縫合する
  7. 挿入部にドレッシングを行い、固定用テープで固定する
  8. ドレーンの先端をX線画像で確認する
  9. バイタルサインとともに排液量や性状、皮下気腫やエアリークの有無、呼吸音の左右差、疼痛などを観察する

胸腔ドレーン管理

  • 患者に胸腔ドレナージの目的と注意点を十分説明する
  • 体動・移動方法について具体的な説明を行う
    • ドレーン部位の圧迫を避けるため、過度の屈曲は避ける
    • 逆行性感染を防止するため、排液バックはドレーン挿入部よりも常に低い位置に置く
  • チューブが閉塞しかけている場合は、適宜ミルキングを行う
  • 感染予防のため、最低1日1回は無菌操作で包帯交換を施行する

観察項目

胸腔ドレナージユニットの観察

  • 設定圧
  • 呼吸性移動(呼吸に伴って水封室の水面が上下する)の有無
  • エアリークの有無
  • ドレーンの屈曲・閉塞の有無
  • 正しい高さ(胸腔ドレナージバックは身体よりも20㎝以上低くする)に設置されているか
  • 確実に固定されているか(患者とドレーン、ドレーンと接続バック)
  • 吸引圧制御ボトルの水位が下がっている場合には、水を補充し、指示通りの吸引圧が保てるように確認・管理を行う
  • 粘ちょう度の高い排液や組織片などの混入がある場合にはドレーンが閉塞しやすいので、ドレーン内を確認し適宜ミルキングを行う

胸腔ドレナージユニット 観察のポイント

kyoukudoren

患者観察

  • バイタルサイン(発熱)
  • 検査データ(白血球値上昇、CRP上昇)
  • 挿入部位の感染兆候(創部の発赤・疼痛・びらん・熱感・搔痒感、ガーゼ上の膿、漿液、異臭の有無など)
  • 逆行性感染の兆候(排液の透明度の変化・浮遊物の有無・混濁など)
  • 胸部症状、呼吸音の変化、呼吸苦
  • 皮下気腫の有無や変化
  • 出血量の変化
  • 睡眠状況
  • 呼吸状態:呼吸音・呼吸回数・呼吸パターン・呼吸困難の有無と程度・SpO2
  • 胸部X線による胸腔内のエアと貯留液の量など
  • 循環動態:意識レベル・脈拍・血圧など

アセスメント

  • 水封室に連続的な気泡がみられる場合、患者の胸腔内か、胸腔ドレナージユニットのどこかでエアリークが起きている
  • エアリークを認めた場合、どこで起きているかを見極める
  • 感染兆候が認められた場合、すみやかにリーダーや医師へ報告し適切な処置を行う

排液から分かること

気胸の場合

  • 【血性】
    ドレーン刺入の際の血管損傷を疑う
  • 【膿瘍】
    膿胸合併の可能性を疑う

胸水の場合

  • 【血胸】
    外傷や自然気胸に合併することが多い
    出血に伴う血圧低下を考慮し、バイタルサインの変化に注意する
  • 【膿胸】
    排液の量、色調、においなどの変化を観察する
    感染がベースにあるため、全身状態や発熱の有無を確認する

排液量の変化

  • 【排液量が急に増えた時】
    混濁、血性、膿性など、しょう液性など、排液の性状を確認する
  • 【排液量が急に減った時】
    ドレーンの詰まり、曲がり、ねじれ、折れなどを確認する
    ドレーンの詰まりがある場合は、必要に応じてミルキングを行う

排液の性状の変化

  • 一般的に、術後ドレーンは血清からしょう液性へ、膿胸等の場合は膿性からしょう液性へ変化する
  • 【これ以外の変化がある場合は、何らかの問題を疑う】
    しょう液性排液から乳び胸水(白濁胸水)に変わった場合:胸管の損傷を疑う
    しょう液性排液から血性排液に変わった場合:胸腔内の出血を疑う

感染兆候の確認

排液が、しょう液性液体が膿性液体に変わった場合

  • 逆行性感染、胸腔内部の感染巣発症を疑う
  • 適切な抗菌薬の使用、胸腔洗浄などを検討するため、医師やリーダーに報告する

ドレーン挿入部の発赤・腫脹・排膿の有無・発熱状態・採血データ(CRP・WBC)も、感染兆候の指標となるため、適切な観察を行う

エアリークの確認

エアリークとは

  • 胸腔内に貯留していた空気が脱気されること
  • 胸腔ドレーンバッグ内の水封室に「ポコポコ」と空気が流入することで確認ができる

エアリークの量が増えた時

  • ドレーンの回路のどこかで接続不良が起きている可能性がある

注意点

  • 胸腔内は無菌状態であるため、ドレーンの挿入、ドレーンの管理とも無菌操作が必要
  • 胸腔内に感染が起こると重篤な経過を辿ることが多い
  • 胸腔ドレーン挿入時には、出血性ショック、排液の異常流出などのリスクがある
  • ドレーン挿入中のバイタルサインの異常(血圧低下、脈圧減少、頻脈など)が生じた場合は、迅速な対応が必要になる
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