歩行補助具を使用した歩行介助

歩行補助具を使用した歩行介助【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年5月23日
最終更新日:2013年5月23日
(変更日:2017年3月31日) ※

目的

  • 片麻痺患者に合った補助具を選択し、歩行がスムーズに行えるよう介助する

いろいろな補助具と特徴

T字杖

  • 歩行障害が軽度の場合に使用する
    • バランス保持のため、安定性を確保する
    • 歩行時における身体の支持やバランスを補強するために用いられる
  • グリップの形状からT字型、L字型、オフセット型がある

多脚杖

  • T字杖よりバランスが保ちやすく、優れた安定性を持つ
  • 地上と接する面が広いため、段差や凹凸のある所には不向きである
  • 右利き用、左利き用があるため、利き腕によって選択する
  • 安定性をより高めたサイドウォーカーという補助具もある

歩行器

  • 歩行状態が不安定で、上肢の筋力がやや弱く杖が使えない人や姿勢バランスがとりにくい人に適している
  • 固定型歩行器、前輪付歩行器、交互型歩行器などがある

歩行車

  • 歩行車に設置されている肘置き台に腕を乗せることにより、身体のバランスを保つことができる
  • 歩行状態が不安定な人に適している
  • 平衡感覚障害がある患者や、下肢筋力低下がある患者に適しているが、片麻痺患者には不向きである
  • 肘支持型歩行車:フレーム上部に肘をつき身体を支えることでバランスを保つ
  • 四輪歩行車(シルバーカー):左右のハンドルを持って移動する
    • 休息用の腰掛がついており、歩行の持続性が低い人に適している

方法

  • 患者に合った適切な補助具を選択する
  • 高さの調節を行う
    高さの調整は、靴を履いた状態で身体が前に傾いてしまわない高さが目安となる
  • 転倒しやすい方向に立って介助を行う
    ※原則として介助者は麻痺側に立つが、患者の状態により調整する
  • 患者の歩行リズム、歩幅、ペースに合わせた介助を行う

T字杖

  • 立位の状態になった際、グリップを健側の大転子部と同じ高さになるよう調整する
    このとき肘が30度ほど曲げた状態でグリップが握れる高さがベストの肢位となる
  • 杖は健側(麻痺のない側)に持ち、杖・患側・健側の順に動かしながら歩行してもらう
  • 介助者は患側(麻痺のある側)に立ち、患者の腰に手を添えて支える

多脚杖

  • 肘関節が十分に屈曲できる位置に高さを調整する
    杖先が杖の持ち手と同側の足つま先から約20cm先に置き、かつ肘が30度ほど曲げた状態でグリップが握れる高さに調節する

肘置き型歩行車

  • 直角に肘を屈曲して、身体の距離を約20cm程度空けて肘置き台の上に前腕を置くことが出来る高さに調整する
  • 肘置き台に手を左右対称に置いてから立位となり、前腕部で支えてバランスを取りながら歩行する
  • ブレーキがないものもあるため、体重が前方に行き過ぎて転倒しないよう注意する

観察項目

  • 歩行補助具の高さ調整は正しくされているか
  • 歩行補助具の破損やゆるみなどはないか
  • 患者は歩行補助具を正しく使用できているか
  • 患者の歩行状態は安定しているか

注意点

  • 歩行時、背中側に傾く患者や、前のめりになる患者もいるので、できるだけ正しい姿勢で歩行ができるよう介助を行う
  • 片麻痺患者では麻痺側の後ろ側から介助を行う
  • 後ろ方向だけではなく、前方へ手だけが進んでしまい腰が遅れる状態になると前方への転倒の危険もある
  • 必要に応じて腰椎ベルトや膝関節補助具、下肢装具なども併用し歩行の安定性を保つ工夫をする
  • 立ち上がり時は特に転倒が多いため、杖や足の位置に十分に注意し、手すりなど身体を支えられる環境下で行う

※【2017年3月31日】本文全体を 加筆・修正いたしました。

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