目次
目的
- 血清中に含まれるコレステロールの量を測り、脂質異常の有無を調べる
必要物品・準備
- 採血用シリンジ
- 血性脂質検査用スピッツ
※真空採血管の場合、真空採血管(スピッツ)、翼状針またはベネジュクト針など - 駆血帯
- 患者名等のラベル
- アルコール綿
- 非滅菌手袋
観察項目
総コレステロール(T‐Cho)
- 正常値:220 mg/dL以下
- 高値の時:腎疾患や肝疾患に付随する続発性高コレステロール血症(糖尿病・甲状腺機能低下症・ネフローゼ症候群・閉塞性黄疸・アルコール性肝障害)、各種内分泌疾患など
- 低値の時:甲状腺機能亢進症、下垂体機能低下症、重度の肝障害など
中性脂肪・トリグリセリド(TG)
- 正常値:150 mg/dL未満
- 高値の時:急性膵炎、ネフローゼ症候群、閉塞性黄疸、家族性高リポ蛋白血症など
- 低値の時:甲状腺機能亢進症、肝硬変、無もしくは低βリポ蛋白血症
HDLコレステロール(HDL‐C)
- 正常値:40 mg/dL未満
- 高値の時:原発性胆汁性肝硬変、閉塞性肺疾患
- 低値の時:脳梗塞、糖尿病、肥満、慢性腎不全など
LDLコレステロール(LDL‐C)
- 正常値:70~139 mg/dL
- 高値の時:甲状腺機能低下症、糖尿病、原発性肝細胞がん、ネフローゼ症候群など
- 低値の時:甲状腺機能亢進症、肝硬変重症肝炎、溶血性貧血、悪性リンパ腫など
アセスメント
- 正常範囲から逸脱している数値の理由を検討する
- 検査条件などによる手違い、測定ミス、計算違いの有無についても確認する
- 総コレステロール(T‐Cho)
- 細胞膜を構成する成分であり、胆汁酸や各種ステロイドホルモンなどの前駆物質として生体調整の役割を果たしている
- コレステロールが高値だと、脳血管障害や虚血性心疾患、動脈硬化を引き起こす危険があり、総コレステロール値は生活習慣病の指標にもなる
- コレステロールの合成は肝臓で行われるので、肝障害の指標としても役立つ
- 女性の場合、更年期を過ぎると増加しやすい
- 経口避妊薬やステロイド剤などの投与により、高値になりやすい
- 中性脂肪(TG)
- 経口避妊薬やエストロゲンの内服で高値、プロゲステロンの内服で低値を示す
- HDLコレステロール
- HDL(高比重リポ蛋白)は、肝臓へコレステロールを運ぶ役割を果たしており、HDLの総量を測定するためにHDLコレステロールの値を調べる
- 抗炎症作用や抗動脈硬化作用、抗酸化作用がある
- 激しい運動により増加し、長年の喫煙により低下する
- インスリンやエストロゲンの投与により、高値となりやすい
- 降圧剤・血糖降下薬の投与で低値となりやすい
- LDLコレステロール(LDL‐C)
- 高脂血症や低脂血症の診断や治療に利用される
- 動物性脂肪を摂取することが多い食習慣で値が上昇する
- 20歳以上から値が上昇傾向になり、閉経期を過ぎる時期から男性よりも女性の方が高くなりやすい
- ステロイド薬・β遮断薬・経口避妊薬の内服、飲酒などで値が高くなる場合がある
注意点
- 食事や運動、飲酒、ストレスなどで値が変動する場合があるので、採血時は毎回同一条件(検査前に食事をしないなど)で採血を行うことが望ましい
- TGの検査をする場合は食事の影響が大きいため、検査前日は高脂肪食を避け、12~ 16時間程度の絶食を行い、早朝空腹時に採血する
- 検査値が変化する可能性があるので、凍結保存や融解は行わない
- 時間の経過により検査値に変化を生じるため素早く検体を提出する
- LDLの検査をする場合、肝機能異常がある患者の場合は、質的変化が起こっている可能性があるのでLDLコレステロール値の信頼性には注意を要する