検体検査7 酵素および関連物質検査のポイント
検体検査7 酵素および関連物質検査のポイント【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年5月31日
最終更新日:2018年06月14日
(変更日:2013年11月7日) ※
目的
必要物品・準備
- 採血用シリンジ
- 検査用スピッツ
※真空採血管の場合、真空採血管(スピッツ)、翼状針またはベネジュクト針など - 駆血帯
- 患者名等のラベル
- アルコール綿
- 非滅菌手袋
観察項目
GOT(AST)
- 正常値:13~33IU/L(JSCC勧告法)
- 上昇の時:急・慢性肝疾患、中毒性肝炎、肝硬変、肝がん、閉塞性黄疸、心筋梗塞、皮膚筋炎、進行性筋ジストロフィーなど
GPT(ALT)
- 正常値:8~42IU/L(JSCC勧告法)
- 上昇の時:慢性肝疾患、中毒性肝炎、肝硬変、肝がん、閉塞性黄疸など
LDH(LD)
- 正常値:119~229IU/L(JSCC勧告法)
- 高値の時:心筋梗塞、白血病、、悪性リンパ腫、悪性・溶血性貧血など
- 低値の時:遺伝性LD―H欠損症、抗癌剤治療などで白血球の著明な減少がある場合
など
ALP
- 正常値:115~360IU/L(JSCC勧告法)
- 高値の時:胆道結石、胆管がん、ウイルス性肝炎、骨折後、骨肉腫、甲状腺・副甲状腺機能亢進症、肝硬変、卵巣がん、肺がんなど
- 低値の時:遺伝性低ALP血症
γ ―GTP(γ ―GT)
- 正常値:10~47IU/L(IFCC準拠法)
- 高値の時:慢性肝疾患、慢性膵炎、アルコール性肝障害、肝がん、長期に渡る薬剤投与など
CPK(CK)
- 正常値:男性160-287IU/L、女性 45-163IU/L (JSCC勧告法)
- 高値の時:心筋炎、急性心筋梗塞、進行性筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、痙攣、外傷、運動など
- 低値の時:妊娠、甲状腺機能充進症など
CK-MB
- 正常値:25IU/L以下(免疫阻害法)
- 高値の時:急性心筋梗塞、筋ジストロフィー、開心術後、心筋炎、横紋筋融解症など
アミラーゼ(AMY)
- 正常値:37~125IU/L(4.6Et G7-PNP法)
- 高値の時:腎不全、急性膵炎、唾液腺の化膿性炎症、耳下腺炎など
- 低値の時:高血糖、膵がん末期、膵外分泌不全など
総ビリルビン(T-BIL)
- 正常値:0.2~1.0mg/dL(バナジン酸酸化法)
- 高値の時:急性・慢性・劇症肝炎、アルコール性肝炎、肝硬変、肝がん、薬剤性肝障害、溶血性貧血、閉塞性黄疸など
直接ビリルビン(D-BIL)
- 正常値:0.0~0.4mg/dL(バナジン酸酸化法)
- 高値の時:急性・慢性・劇症肝炎、アルコール性肝炎、肝硬変、肝がん、薬剤性肝障害、閉塞性黄疸など
アセスメント
- 正常範囲から逸脱している数値の理由を検討する
- 検査条件などによる手違い、測定ミス、計算違いの有無についても確認する
- GOT(AST)
- 心筋や肝臓に多く存在しているため、心疾患や肝機能がわかる
- 心筋細胞や肝細胞が破壊されると、値が上昇する
- 基本的にGPTと共に検査が行われるが、GOTのみ値が高い場合は、肝臓・心臓・筋肉の疾患が疑われる
- 心筋梗塞の場合、24時間以内に値が上昇した後、3~6日程度で元に戻る
- GPT(ALT)
- 肝臓に多く存在し、細胞が破壊されると、値が上昇する
- 基本的にGOTと共に検査が行われるが、GPTはそのほとんどが肝臓にしか存在しないため、肝障害の指標となりやすい
- LDH(LD)
- 筋肉や肝臓における異常の有無をスクリーニングする
- 筋肉・肝臓・赤血球・などに多く存在しているため、筋肉細胞が破壊されると、値が上昇する
- LDHは新生児~幼児期にかけて高値を示すが、成人でも激しい運動後には上昇する
- LDHは全部で5種類あり、この検査のみで異常臓器を特定することは難しい
- ALP
- 胆管・骨・肝疾患、悪性腫瘍などの指標となる
- 胆管・骨・肝・小腸などに存在し、細胞が破壊されると、値が上昇する
- 乳幼児から思春期にかけて、成人の約2~3倍程度の上昇する
- 妊娠終盤から~出産後までは、基準値より高くなる
- 血液型がB型あるいはO型の分泌型の人の場合、特に脂肪食の摂取によって値が高くなる傾向がある
- γ ―GTP(γ ―GT)
- 肝臓や胆道の疾患などの指標となる
- 肝細胞が破壊されると、値が上昇する
- 飲酒により上昇した場合、アルコールを控えることで、短期間で下がる
- 胆管系の疾患がある場合、ALPやLAPと共に上昇する
- CPK(CK)
- 筋収縮に関係する重要な酵素であり、心筋や骨格筋の疾患の指標となる
- 骨格筋、心筋、脳、小腸に多く存在し、細胞の破壊により値が上昇する
- 激しい運動後や溶血が強い場合は高値を示すことがあるが、長期臥床や高齢者の場合は筋肉量の減少が見られるため10~20%低下する
- CK-MB
- 心筋梗塞の指標となる
- 心筋細胞が破壊されると、値が上昇する
- CKには骨格筋由来のCK-MM、脳と平滑筋由来のCK-BB、心筋由来のCK-MBという3種類のアイソザイムが存在するが、心筋梗塞の急性期にはCK-MBが高い値を示す
- AMY
- 唾液腺や膵臓から分泌されるデンプンを分解する消化酵素であり、唾液腺疾患や膵疾患の指標となる
- 唾液腺から分泌されるS-AMYと膵臓から分泌されるP-AMYがある
- T-BIL、D-BIL
- 黄疸や貧血がみられるとき、もしくは肝胆道疾患のスクリーニングとして検査する
- 間接型ビリルビンは肝臓へと運ばれた後、直接ビリルビンに変化し、胆汁中に排出される
- 新生児ビリルビンは一般的には出生後約3日がピークだが、その多くが間接型ビリルビンである
注意点
- GOT、LDHの検査時、溶血により高値を示す
- GPTは酵素自体が不安定なため、冷蔵(4℃)保存でも約2日で値が低下する
- LDHは冷蔵保存で活性が低下する
- ALPはEDTAやクエン酸などの抗凝固剤の使用により、著しい活性低下がみられる
- CPK、CK-MBは酵素自体が不安定なため、冷蔵(4℃)保存でも約4~7時間で低下する
- T-BILは光によって酸化する性質があるため、冷暗所にて保存する
心筋梗塞の急性期にはCPK(CK)が上昇するので、自覚的症状も含めた観察を行う
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