目的
脳動脈瘤の破裂(くも膜下出血)を予防し、患者が納得し治療を選択できるよう支援する
疾患の概要
脳動脈瘤とは
- 脳動脈瘤は、未破裂の段階ではほとんどが無症状で、検査等により偶然発見される事も多いが、大きなものは神経圧迫による症状が現れることもある
- 脳動脈瘤の多くはこぶ状の形をしており、動脈壁の弱いところに発生する
- 脳動脈瘤の90%は内頸動脈の灌流域(ウィリス動脈輪の前半部分)に形成される
- くも膜下出血の原因の85%は、脳動脈瘤破裂によるものである
- くも膜下出血の致死率は高く、その原因である脳動脈瘤を破裂する前に発見・治療することは有用である
原因
- 先天的な動脈壁の中膜欠損に、後天的要因(高血圧、動脈硬化、喫煙、遺伝的因子)や血管内皮の修復障害が加わり形成されると考えられている
- 中膜欠損は動脈分岐部に存在する事が多い
症状
- 動脈瘤が圧迫する神経の部位により症状は異なる
- 動眼神経圧迫による散瞳・複視・眼瞼下垂や、視神経圧迫による視力・視野障害などがみられる
- 症状の有無による分類
- 脳動脈瘤による神経圧迫症状がみられるもの:症候性脳動脈瘤
- 脳動脈瘤による神経圧迫症状がみられないもの:無症候性脳動脈瘤
- 脳動脈瘤が大きいほど神経圧迫の症状は出現しやすく、破裂しやすい
検査・診断
- 主にスクリーニングでは、MRA、3D-CTAにて動脈瘤が確認できる
- 手術などの治療を行う場合、深い穿通枝などとの位置関係を確認するため脳血管撮影が必要となる
治療
- 脳動脈瘤破裂(クモ膜下出血)を予防する事が重要となる
- 治療方針の決定には、未破裂動脈瘤を治療する事による破裂のリスクが伴うため、十分なインフォームドコンセントがなされる必要がある
- 未破裂動脈瘤の治療を考える場合、治療におけるメリットとリスクを勘案して決定する
- 年齢・健康状態などの患者の背景因子
- 大きさや部位・形状など病変の特徴
- 放置した場合の自然歴(破裂のリスク)と治療に伴うリスク
- 症候性:動脈瘤頸部クリッピング術(開頭し瘤にクリップをかける)、血管内コイル塞栓術(大腿動脈から血管内カテーテルを脳動脈瘤内まで到達させ瘤内に金属製コイルを充填する)など
- 無症候性:保存的治療(経過観察、血圧コントロール、生活習慣改善など)
※ただし瘤径が5~ 7mmを超えるものや不整形の瘤などは破裂の危険性が大きいため、手術(頸部クリッピング術やコイル塞栓術など)を検討する
観察項目
- バイタルサインの変動、意識レベルや神経症状、瞳孔所見の確認
- 脳動脈瘤破裂の危険因子の把握(瘤の大きさ、くも膜下出血患者の家系、破裂しやすい部位なのか、高血圧や喫煙歴があるかなど)
- 治療方針と説明内容、患者・家族の受け止めの状況、精神状態
- 脳動脈破裂時の症状の把握(突然の激しい頭痛、意識障害、けいれん、嘔気・嘔吐)
アセスメント
- 脳動脈瘤の破裂は、クモ膜下出血の最大の原因である事を常に念頭に置いてケアを行っているか
- 脳動脈瘤の部位を把握し、神経圧迫による症状を予測し、患者へも以下の症状出現時は受診するよう説明しているか
- ものが二重に見える
- 瞼が垂れ下がる
- ものが見えにくい など
- 脳動脈瘤破裂の危険因子を把握し、回避できるよう患者への指導を行っているか
- 脳動脈瘤が破裂した場合に、緊急対応できるような準備がなされているか
- 圧迫による症状が出現した場合、その理由について検討したか
合併症予防
- 最大の合併症はくも膜下出血であり、脳動脈瘤の破裂を予防することが重要である
- 血圧管理
- 患者への生活指導:禁煙、便秘がある場合は怒責を避けるよう排便コントロール
- 手術を受けた場合、以下の合併症に注意する
- 開頭クリッピング術:術後出血、脳浮腫、けいれん
- 血管内塞栓術:術中後を通して塞栓症のリスクが高いため、抗凝固療法を行う場合があり、それに伴う出血性合併症を起こしやすい
注意点
- 動眼神経麻痺(瞳孔散大・眼球運動障害・眼瞼下垂など)の出現は脳動脈瘤の切迫破裂のサインであり、神経学的な観察や迅速な画像検査が必要である
- 治療の決定に当たり、患者は大きな不安を抱えており、無用に不安を与えないよう注意し、精神的支援をしていく事が重要である