伝音難聴患者への対応
伝音難聴患者への対応【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年7月2日
最終更新日:2013年7月2日
(変更日:2013年11月29日) ※
目的
疾患の概要
- 伝音性難聴は、外耳から中耳にかけての音を伝える部位の障害によって起こり、中枢や内耳は障害されないのが特徴である
- オージオグラムでは気導聴力の低下は見られるが、骨導聴力は正常である
- 伝音難聴の症状が起こる病態には様々なものがあるが、急性中耳炎、中耳真珠腫・癒着性中耳炎を含む慢性中耳炎、滲出性中耳炎、耳垢塞栓、外耳道閉鎖、耳硬化症、耳小骨奇形などの中耳奇形、中耳腫、外傷、外耳などが挙げられる
主な疾患
耳小骨奇形
- 耳小骨奇形の病態には様々なものがあるが、大別して
- キヌタ骨やツチ骨が固着しているもの
- キヌタ骨やツチ骨に異常は見られないが、アブミ骨の底板部分に固着が見られるもの
- キヌタ・アブミ関節に離断が認められるもの の3つがある
- 奇形は胎児期における中耳形成の異常が原因であり、出生時から伝音難聴が起こるが非進行性である
- 一側性の難聴の場合、難聴を自覚する時期が遅い場合もあるため、一側性の耳硬化症との鑑別が難しい場合もある
- 両側性の難聴の場合は、一側性よりも広範囲もしくは複雑に障害が起きていることが多い
- オージオグラムでは色々な型の伝音難聴を示すため、障害がどこにあるのかを特定するのは難しい
- ティンパノグラムでは通常、離断がある場合はAd型を呈し、固着が見られる場合はAs型を呈する
- アブミ骨反射は基本的に消失していることが多い
耳硬化症
- 耳硬化症の発症は、遺伝性のものであるとされており、好発部位はアブミ骨、前庭窓である
- 骨性迷路膜の骨の部分に再骨化と吸収が不規則に吸収が不規則に生じるのが特徴的であり、前庭窓にアブミ骨の底板が癒着することで可動性の低下が認められる
- 緩やかに進行し、両側に難聴が見られ、多くの場合、耳鳴を併発する
- 病状の自覚は20代~30代に多い
- オージオグラムにおいて、混合難聴(軽度の感音難聴を合併)、もしくは低音障害型または水平型の難聴が見られることが多い
- カーハルトの陥凹(骨導のオージオグラムにて2000Hzを中心に約15~20dBの楔型を示す)やウィリスの錯聴(静かな場所ではなく、騒がしい場所での聴力が良い)は耳硬化症の診断に有用である
- ほとんどの症例においてアブミ骨筋反射の消失が認められるが、ティンパノグラムは正常である
- 一般的に、画像での確定診断は困難である
外傷
- 多くの場合、直達性の外傷(異物除去の際の誤動作による損傷や耳掃除)や頭部外傷などによって、外傷性鼓膜損傷が起こるが、ほとんどの場合は自然治癒の経過をたどる
- 耳小骨損傷や外傷性鼓膜の場合、聴力低下、めまい、耳鳴、疼痛、味覚障害、耳閉感、耳出血、悪心などの症状を呈する
- 耳鳴やめまいがある場合は、外リンパ瘻やアブミ骨底板の骨折を疑う
- 外傷性鼓膜穿孔の場合、20~30dB程度の伝音難聴が認められる
- ティンパノグラムにおいてAd型が見られれば、耳小骨奇形が疑われるが、この所見だけで確定診断をすることは難しい
治療
耳小骨奇形
- ツチ骨やキヌタ骨レベルにおける固着または耳小骨連鎖に離断が認められる場合には鼓室形成術にて耳小骨再建を行う
- アブミ骨に固着が認められる場合は小開窓アブミ骨あるいはアブミ骨切除術を行う
耳硬化症
- 一般的に小開窓アブミ骨切除術もしくはアブミ骨切除術が行われる
外傷
- 外傷性の鼓膜穿孔がある場合は経過観察を行い、創部の感染予防に努め、数ヶ月経過しても閉鎖が認められない場合には、鼓膜閉鎖術を施行する
- キヌタ・アブミ関節の離断だけが見られている場合は、残存しているアブミ骨を用いた耳小骨連鎖の再建術を施行する
- 外リンパ瘻が認められる場合はなるべく早い段階で手術を施行する
看護のポイント
- 手術を行う場合は基本的に全身麻酔での手術となるため、一般的な全身麻酔手術に対するケアが必要となる
- 基本的にアブミ骨手術あるいは外リンパ瘻の合併が認められる場合は、手術後約2~3日はベッド上安静にて頭部挙上を行う
- 手術後にめまいが起こることも少なくないが、約2~3日程度で落ち着くことを説明し、不安の緩和に努める
- 鼻かみは禁止するよう説明する
- アブミ骨手術施行後もしくは外リンパ瘻の合併があるケースでは、退院後、怒責をかけたり激しい運動をすることはしばらく避ける
- 中耳の手術後、一時的に味覚障害が見られる事例もあるが、数ヶ月で改善する場合が多いため、経過観察するよう指導する
- 術後に音が響く感覚や、浮動感が起こる場合もあるが、時間の経過と共に消えることが多いため、悪化がなければ経過観察を行うよう指導する
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