静脈血採血
静脈血採血【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年7月26日
最終更新日:2020年6月29日
(変更日:2020年7月3日) ※
目的
- 静脈血採血を行う際の必要物品やケアのポイントについて理解する
- 安全で確実性の高い静脈血採血の方法を理解し、実践する
必要物品・準備
- 採血針(20~22G)
- 滅菌済み採血管(検査の項目により必要な本数を準備)
- 採血ホルダまたはディスポーザブル注射器
- アルコール綿
- 駆血帯
- 肘枕
- 感染性廃棄物容器(使用済みの針を入れる)
- ディスポーザブル手袋
- 必要に応じて蒸しタオル(静脈が拡張し血管が出やすくなるよう温める)
- 絆創膏・固定用テープ
方法
- 患者に検査の目的や方法を説明し、同意を得る
- 病名・病状について医師よりどのような説明を受けているか確認し、その内容に合わせた検査の目的などを丁寧に説明し、患者の不安の緩和に努める
- 採血管のラベルと患者の氏名・検査伝票の指示が合っているか確認し、採血の前にもう一度確認し、患者に名前を言ってもらい採り違えがないよう注意する
- 物品の準備~処置まで、清潔操作で行う
- 滅菌済み注射器や注射針は清潔操作で準備し、院内感染予防に努める
- 擦式手指消毒薬による手指消毒を徹底し、目に見える汚染がある場合は石鹸と流水による手洗いを実施する
- スタンダードプリコーションに基づき患者に同意を得た上で、感染予防策を取る
- 血液を取り扱うため、ディスポーザブル手袋を着用し針刺し事故には十分注意する
- 患者から医療従事者、または他患者への感染に注意し、処置前後での手洗いを必ず行う(あるいは1患者ごとに手袋を交換する)
- 看護師がやりやすいよう静脈血採血の必要物品を配置する
- 配置の工夫により、手際よく作業を進める事ができ患者が安心し、針刺し事故の予防にもなる
- 採血が困難な患者は、念のため予備の注射針を準備しておくとスムーズである
- 真空採血管を室温に戻しておく
- 真空採血管が室温に戻る前に採血すると、採血管の温度変化で採血管内の圧力が変化し、穿刺後に内容物が患者の体内に逆流する危険性があるため、注意する
- 真空採血管内には添加物が入っているため、吸引した血液が逆流した場合、患者が感染、添加物による殻影響が出る恐れがある
- 血液逆流の恐れがあるため、中心静脈からの真空管採血は行わない
- 患者の状態を確認し、穿刺する静脈を決める
- 以下の部位は避ける
- 麻痺側(採血時に神経障害の有無を確認できないため)
- シャントがある、またはシャント造設予定部位(穿刺によりシャント・予定となる血管をつぶしてしまう可能性があるため)
- 静脈内点滴が留置してある側(静脈内点滴留置中の血管内より採血した場合、点滴成分が血中に混入し正確な検査結果が得られないため)
- 疼痛がある部位(穿刺により疼痛を増強させる恐れがあるため)
- 一般的に上肢の皮静脈を選択する
- 適切に駆血する
- 穿刺部位の5~10cm中枢側に駆血帯を巻き、患者の母指を内側にし拳を握るよう説明する
- 駆血帯の使用時間は、長時間になると血液性状が変化する可能性があるため、2分程度にするよう注意する
- 駆血後は静脈を軽く叩き、患者に手掌を握る・開くを繰り返してもらい、末梢から中枢にかけて軽くこする事により、血管を怒張させる
駆血により還流を停止させ、穿刺を確実に行え、採血量を確保することはできるが、むやみに強く駆血しても効果は変わらず、患者の苦痛を増強させるので注意が必要
- 穿刺部位の消毒をする
- 穿刺部位を伸展させ、穿刺部位を中心に円を描くように外側に向けてアルコール綿で消毒し、その範囲の中で拭き下ろす
- 皮膚をこするように強めに拭き、乾燥したのを確認してから穿刺する
アルコールによる消毒が可能か、事前に患者に確認する
- 静脈内に針を刺し、検査に必要な採血量を確保する
- 事前に検査に必要な採血量の合計を把握しておく
- 針を血管内にまっすぐ挿入するため、座位の場合は肘枕を使い、患者の腕を看護師と向かいまっすぐになるよう下向きに固定する
- >確実に静脈を固定するために、穿刺時に血管が動かないよう穿刺部下側の皮膚を軽く手前に引く
- 皮膚と採血針の角度を15~20度に保ち、確実に穿刺する方の手を患者の腕の上で固定する
- 静脈の走行に沿って静脈近くの皮膚の1cm手前を穿刺する
- 静脈の走行に沿ってゆっくり針先を進め、針の角度を下げて静脈に刺入する
- 静脈内に針が刺入すると急に抵抗がなくなるため、この感覚を静脈穿刺の目安とする
- 針先を静脈の走行に沿い5mm程進め、針先が動かないようにしっかりとホルダや注射器を固定する
採血針の刺入角度が大きすぎると静脈に達する距離が短く、静脈を貫通してしまうおそれがあり、刺入角度が小さすぎると皮下組織に入り静脈まで到達しないため注意する
- 血液を採取する
真空採血管の場合
- 滅菌済み真空採血管、単回使用採血ホルダ(ディスポーザブル)、耐圧性能があるゴムスリーブ付採血針を使用する場合:血液や真空採血管の内容物の逆流を防止し感染のリスクを抑えた方法、駆血帯を装着したまま採血が行える
- 上記の3つ以外のものを1つでも使用する場合: 真空採血管の内容物の逆流により感染するリスクが高い、駆血帯を装着したまま採血管をホルダに挿入しないなどの注意が必要
滅菌済み真空採血管などを使用する場合の手順
- 室温程度になった採血管を準備し、ホルダに採血針を装着する
- 駆血帯をし、静脈を怒張させ穿刺する静脈を選ぶ
- 採血針を血管内に刺入し固定する
- 採血管をホルダにまっすぐに完全に押し込む
- この際、静脈の貫通やずれるのを防止するため、採血針を固定している手は絶対に動かさない
- 採血中は患者の腕は下向きで、常に採血管が穿刺部位より下にあることを確認する
- 採血管内の血流が停止したら、直ちに採血管をホルダから外し、駆血帯を外す
- ホルダごと採血針を抜針し、医療廃棄物容器に破棄する
- 安全に針を抜く
- 必要な採血量が確保できたら、真空採血管のをホルダから静かに外し、複数本の採血を行う場合は採血管を交換する
- 最後の採血管をホルダから外した後に、患者に手を開いてもらい、駆血帯を外す
- 穿刺部をアルコール綿で軽く押さえ、手前に静かに針を抜く
- 止血を確実に行う
- 抜針後、皮膚は揉まず5分程度母指で圧迫し確実に止血したことを確認し、絆創膏を貼る ※揉むと出血量が増加し、皮下出血を来たしやすいため
- 採取した血液を適切に取り扱う
- 採血管のラベル・指名・検体伝票を照らし合わせ再確認する
- 凝固剤入りの採血管は、採血後にすぐ転倒混和する
- 保冷の必要性や早急に検査課で処理すべき必要性の有無を確認しておき、すぐ対応できるようにする
- 感染に注意し、使用済み物品を処理する
-
- 使用済みの採血針は針刺し事故防止のため、リキャップせず医療廃棄物処理容器に廃棄する
- 患者の血液が付着したアルコール綿やディスポーザブル製品は、一般可燃ごみや採血針とは別に医療廃棄物のごみ箱へ廃棄する
- 流水と石鹸での手洗い、擦式手指消毒薬を使用し消毒する
真空採血管をホルダ内に挿入した状態で駆血帯を外すと、急激に静脈内圧が低下して真空採血管内の血液が血管内に逆流するリスクがある
針を抜く前に駆血帯を外さないと、抜針後の血液量が増加したり、皮下血腫を作りやすいため、駆血帯を外すタイミングに注意する
出血傾向のある患者は止血しにくいため、穿刺部位を心臓の位置より高くし10分以上圧迫止血するが、広範囲の圧迫は血流障害を来たすため注意が必要である
観察項目
- 患者の年齢や体格、性格
- 基礎疾患とそれに伴う症状の観察(出血傾向や浮腫の有無)、感染症やアレルギーの有無
- 麻痺などの神経障害の有無、シャントやシャント造設予定の有無、疼痛の有無と部位の確認
- 血管の走行や蛇行の有無、太さや弾力性の有無、検査所見での動脈硬化の有無
- 治療方針と患者への説明内容の把握
- 採血中~終了後の患者の状態観察(ショック症状、皮下血腫、神経・動脈損傷の有無、止血の状況)
アセスメント
- 患者に検査の目的などを丁寧に説明し、患者の不安の緩和に努めたか
- 針刺し事故を含めた感染予防に留意し、物品の準備から処置終了まで対策を取っていたか
- 静脈血採血に伴うリスクを把握し、予防や早期発見に努めていたか
- リスクとして考えられるものは、皮下血腫・神経や動脈の損傷・ショック症状など
- 検体取り違えを防止するため、処置ごとに患者の名前を確認しているか
注意点
- 高齢者の血管は動脈硬化などで弾力性がなく動きやすいため、皮膚を十分に伸展させて固定する必要がある
- 肥満で皮静脈が見えない場合、一度駆血帯を巻き皮静脈がありそうなところを指で探り、深部で血管に触れたら駆血帯を外すと、血管が触知できなくなった箇所に血管がある可能性が高い
- 浮腫がある患者の場合、血管の走行が予測される部位を指で強めに圧迫し、細胞内液を移動させ血管を見やすくする
本コンテンツの情報は看護師監修のもと、看護師の調査、知見、ページ公開時の情報などに基づき記述されたものですが、正確性や安全性を保証するものでもありません。
実際の治療やケアに際しては、必ず医師などにご確認下さい。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に関しては本記載内容とは対応が異なりますので、必ず各病院ごとに作成されている感染症ガイドラインに従ってください。
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