目的
- 気道確保は心肺蘇生法の最も基本的な手技であり、一次救命処置として重要である
- 気道確保を行う際の必要物品やケアのポイントについて理解して、適切なケアを行う
必要物品・準備
必要物品
- ガーゼ
- エアウェイ(患者の状態に応じた種類・サイズを準備)
- 吸引物品
- 肩枕用のバスタオルなど
方法
- 呼吸状態および意識障害の有無を確認する
- 意識障害がある場合:舌根沈下による気道閉塞・狭窄を起こすが、気道狭窄時にはいびき様呼吸となる
- 気道閉塞がある場合:シーソー呼吸(呼気時に胸部が膨らみ腹部が凹む、吸気時は逆転)がみられ寒気が不十分となるため、胸郭の動きと合わせて呼息・吸息の流れを確認する
- 異常呼吸音がある場合:気道狭窄音(ヒューヒュー音)は気管内に異物がある可能性がある
- 呼吸停止している場合:原因が舌根沈下なのか、口腔内・気道内異物なのかをアセスメントし次の対応に移る
- 咽頭より奥の異物を除去する
- 患者に意識障害がなければ可能な限り咳をしてもらう
- 自力喀出が困難な場合は、背部叩打法や腹部圧迫法など、外力を加え異物除去する
- 乳児の場合:看護師の上腕から手の平に乳児をうつ伏せに乗せ、母指・第2指で頬を挟み、顎を突き出し、肩甲骨の間を軽く叩く(殴打法)
- 8歳未満の幼児・学童の場合:片方の手で児の前胸部を支えうつ伏せにし、頭部を胸部より下げ、もう片方の手根部で肩甲骨の間を強く叩く
- 可動性異物の誤飲時や、上記方法で除去できない場合、ハイムリックを行う
- 横隔膜を拳上し肺を圧迫し、人工的に強い呼気を生じさせて異物を喀出させる
- 坐位の場合:患者の背部に回り、一方の手の拳を心窩部に当て、もう一方の手をその上に添え、手前上方に強く引き締める
- 仰臥位の場合:患者の大腿部にまたがり、一方の手根部を心窩部に当て、もう一方の手をその上に添えて頭側に向け圧迫する
- 意識がなく口腔内に異物がある場合、顔を横に向け指交差法(母指と第2指をひねるように開く)により開口し、もう一方の指先にガーゼを巻きつけ吐物などの異物を掻き出す
- 乳幼児の場合、咽頭より奥に入り込むリスクが高いため行わない
- 高齢者で義歯をしている場合、さらなる誤飲を防ぐため外してから行う
- 吸引設備がある場合、吐物の吸引を十分に行う
- 用手による気道確保を行う
頭部後屈・おとがい拳上法による気道確保
- 患者の前額部に片方の手を当て、もう一方の手の第2・3指でおとがい部を拳上する
- 頸髄損傷の疑いのある患者の場合、頭部後屈は避けおとがい部のみ拳上する
下顎拳上法
- 両手の母指を両口角の下方に、他の4指は下顎上行枝(下顎角より耳側の下顎部)に置き、下部歯列が上部歯列より前になるよう拳上させる
- 患者の状態に応じて、エアウェイによる気道確保を行う
- 用手気道確保の方法として確実であるが、看護師が患者の頭側に位置するため1人での心肺蘇生法には向いていない
鼻咽頭エアウェイ
- 多少意識や反射がある場合にも使用できる
- 鼻背に沿うように挿入すると出血を起こしやすいため、顔面に対して垂直に挿入する
口咽頭エアウェイ
- 昏睡状態で反射が消失している場合にのみ使用する
- 頭部後屈し指交差法により開口させて、エアウェイを逆向きに挿入する
- 凸面を舌に滑らせるよう進め、途中適度な深さで180度回転させて正しい位置に挿入する
- 挿入後は下顎角に両手を当て上方に押し上げながら、母指でエアウェイの後端を押し込む
観察項目
- 患者の年齢、体格、意識障害の有無、基礎疾患
- バイタルサイン、チアノーゼ、四肢冷感の有無など全身状態の観察
- 呼吸状態の観察
- 自発呼吸の有無、気道狭窄音の有無、呼吸パターン・呼吸音、呼吸数、胸郭の動き、パルスオキシメーター値など
- 吐物の観察
- 異物の可動性の有無
- エアウェイの効果、固定状況
- X線検査、血液検査など検査結果の確認
アセスメント
- 呼吸状態の観察を適切に行い、原因の検索が行えたか
- 年齢、体格、意識障害の有無、異物の可動性の有無などを確認し、患者の状態に応じた方法が選択できたか
- 安全な方法で異物の除去が行えたか
- 気道確保の方法は適切であったか
- 効果的に行えたか
注意点
- 気道確保は一次救命処置で最も重要となるため、どんな状況でも行えるよう日ごろからイメージしておく
- 小児の場合、保護者の十分な情報収集が重要である
- 気管内の可動性異物の誤飲の場合、声門下腔を完全に閉鎖するリスクがあるため、乳児の足首を持ち逆さにする事は禁忌である
- エアウェイを舌で押し出す、嘔吐様の動きがある場合には危険なため抜去する