気道確保

気道確保【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年7月27日
最終更新日:2018年05月30日
(変更日:2013年10月23日) ※

目的

  • 気道確保は心肺蘇生法の最も基本的な手技であり、一次救命処置として重要である
  • 気道確保を行う際の必要物品やケアのポイントについて理解して、適切なケアを行う

必要物品・準備

必要物品

  • ガーゼ
  • エアウェイ(患者の状態に応じた種類・サイズを準備)
  • 吸引物品
  • 肩枕用のバスタオルなど

方法

  1. 呼吸状態および意識障害の有無を確認する
    • 意識障害がある場合:舌根沈下による気道閉塞・狭窄を起こすが、気道狭窄時にはいびき様呼吸となる
    • 気道閉塞がある場合:シーソー呼吸(呼気時に胸部が膨らみ腹部が凹む、吸気時は逆転)がみられ寒気が不十分となるため、胸郭の動きと合わせて呼息・吸息の流れを確認する
    • 異常呼吸音がある場合:気道狭窄音(ヒューヒュー音)は気管内に異物がある可能性がある
    • 呼吸停止している場合:原因が舌根沈下なのか、口腔内・気道内異物なのかをアセスメントし次の対応に移る
  2. 咽頭より奥の異物を除去する
    • 患者に意識障害がなければ可能な限り咳をしてもらう
    • 自力喀出が困難な場合は、背部叩打法や腹部圧迫法など、外力を加え異物除去する
    • 乳児の場合:看護師の上腕から手の平に乳児をうつ伏せに乗せ、母指・第2指で頬を挟み、顎を突き出し、肩甲骨の間を軽く叩く(殴打法)
    • 8歳未満の幼児・学童の場合:片方の手で児の前胸部を支えうつ伏せにし、頭部を胸部より下げ、もう片方の手根部で肩甲骨の間を強く叩く
    • 可動性異物の誤飲時や、上記方法で除去できない場合、ハイムリックを行う
      • 横隔膜を拳上し肺を圧迫し、人工的に強い呼気を生じさせて異物を喀出させる
      • 坐位の場合:患者の背部に回り、一方の手の拳を心窩部に当て、もう一方の手をその上に添え、手前上方に強く引き締める
      • 仰臥位の場合:患者の大腿部にまたがり、一方の手根部を心窩部に当て、もう一方の手をその上に添えて頭側に向け圧迫する
  3. 意識がなく口腔内に異物がある場合、顔を横に向け指交差法(母指と第2指をひねるように開く)により開口し、もう一方の指先にガーゼを巻きつけ吐物などの異物を掻き出す
    • 乳幼児の場合、咽頭より奥に入り込むリスクが高いため行わない
    • 高齢者で義歯をしている場合、さらなる誤飲を防ぐため外してから行う
    • 吸引設備がある場合、吐物の吸引を十分に行う
  4. 用手による気道確保を行う
肩の下に枕・折りたたんだバスタオルを挿入し頭部を下げると、頭部後屈・頚部拳上の姿勢となり、効果的に気道確保が行える(頸髄損傷の場合は禁忌)

 

頭部後屈・おとがい拳上法による気道確保

  • 患者の前額部に片方の手を当て、もう一方の手の第2・3指でおとがい部を拳上する
  • 頸髄損傷の疑いのある患者の場合、頭部後屈は避けおとがい部のみ拳上する
人工呼吸時はこの状態で行うが、下顎の軟部組織を圧迫すると舌が硬口蓋に押し上げられ気道閉塞するため、注意する

下顎拳上法

  • 両手の母指を両口角の下方に、他の4指は下顎上行枝(下顎角より耳側の下顎部)に置き、下部歯列が上部歯列より前になるよう拳上させる
  • 患者の状態に応じて、エアウェイによる気道確保を行う
  • 用手気道確保の方法として確実であるが、看護師が患者の頭側に位置するため1人での心肺蘇生法には向いていない

鼻咽頭エアウェイ

  • 多少意識や反射がある場合にも使用できる
  • 鼻背に沿うように挿入すると出血を起こしやすいため、顔面に対して垂直に挿入する

口咽頭エアウェイ

  • 昏睡状態で反射が消失している場合にのみ使用する
  • 頭部後屈し指交差法により開口させて、エアウェイを逆向きに挿入する
  • 凸面を舌に滑らせるよう進め、途中適度な深さで180度回転させて正しい位置に挿入する
  • 挿入後は下顎角に両手を当て上方に押し上げながら、母指でエアウェイの後端を押し込む

観察項目

  • 患者の年齢、体格、意識障害の有無、基礎疾患
  • バイタルサイン、チアノーゼ、四肢冷感の有無など全身状態の観察
  • 呼吸状態の観察
    • 自発呼吸の有無、気道狭窄音の有無、呼吸パターン・呼吸音、呼吸数、胸郭の動き、パルスオキシメーター値など
  • 吐物の観察
  • 異物の可動性の有無
  • エアウェイの効果、固定状況
  • X線検査、血液検査など検査結果の確認

アセスメント

  • 呼吸状態の観察を適切に行い、原因の検索が行えたか
  • 年齢、体格、意識障害の有無、異物の可動性の有無などを確認し、患者の状態に応じた方法が選択できたか
  • 安全な方法で異物の除去が行えたか
  • 気道確保の方法は適切であったか
  • 効果的に行えたか

注意点

  • 気道確保は一次救命処置で最も重要となるため、どんな状況でも行えるよう日ごろからイメージしておく
  • 小児の場合、保護者の十分な情報収集が重要である
  • 気管内の可動性異物の誤飲の場合、声門下腔を完全に閉鎖するリスクがあるため、乳児の足首を持ち逆さにする事は禁忌である
  • エアウェイを舌で押し出す、嘔吐様の動きがある場合には危険なため抜去する
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