目的
- 嚥下障害患者に適切な対応を行う
疾患の概要
- 喋下運動とは食物の塊が胃へ送られるまでの一連の運動過程・運動機能を指す
- 嚥下運動は、第1~3期(相)に分類されている
- 第1期(相):口腔期(相)であり、随意的運動が見られる
- 第2期(相):咽頭期(相)であり、反射的運動が見られる
- 第3期(相):食道期(相)であり、食塊が蠕動運動や重力によって食道から胃に搬送される
- 嚥下障害とは、何らかの原因によって、上記の嚥下第1期~第3期のいずれかの段階で障害あるいは異常が起こり、誤嚥や喋下困難を生じた状態を指す
- 食塊は第1期の口腔期(相)における随意運動に続き、第2期の咽頭期(相)にて複雑な反射的運動が起こることにより、食道へと送られる
- 嚥下第1期と第2期の運動にずれが生じている場合や第2期そのものに障害などがある場合は、気道に飲食物などが入り込むが、この状態を誤嚥と呼び、主な症状の1つに「むせ」がある
- 「むせ」は誤嚥によって咳嗽反射が誘発されることによって起こる症状だが、高齢者の場合は、咳嗽反射が弱い場合もあるため、誤嚥と「むせ」とは必ずしも一致しない場合がある
診断
- 食道内圧検査、内視鏡、咽頭食道透視、嚥下運動関連筋の筋電図などがあるが、一般的には内視鏡や咽頭食道透視を行う
治療
- 喋下障害そのものに対しての治療は、外科的治療と保存的治療とに分類される
外科的治療
- 嚥下障害の外科的治療は誤嚥防止術と嚥下機能改善術に分類される
- 誤嚥防止術
- 嚥下機能の再建が難しい場合に、音声機能を犠牲にする手術方法である
- 喉頭気管分離術や喉頭摘出術などがある
- 脳卒中や治療方法のない末期の神経筋疾患によって起こる嚥下障害があり、頻繁に起こる嚥下性肺炎の予防目的で行う
※経口摂取ができるようになるための術式ではない - 誤嚥防止術によって、気管内吸引の頻度は減り、気管カニューレも不要となるためも患者自身や家族の負担が軽減される
- 嚥下機能改善術
- 中でも輪状咽頭筋切断術が有名でが、この術式だけで経口摂取ができるようになった症例は少ない
- 多くの場合、輪状咽頭筋切断術を単独で行うのではなく、甲状軟骨の挙上を行い、下顎骨固定術を併用する
- 保存的治療に効果が見られないワレンベルグ症候群の嚥下障害に対してはよい適応である
- 誤嚥防止術
アセスメント
- 脳神経外科領域における脳神経麻痺の分類には球麻痺と仮性球麻痺があり、嚥下障害の治療方針を決定する大まかな目安にもなる
- 球麻痺による嚥下障害
- 延髄のある神経核(舌咽神経、顔面神経、三叉神経、迷走神経)などの麻痺によって構音、発声、咀嚼、嚥下などの障害をきたすが、治療によって改善する場合が多い
- 仮性球麻痺による嚥下障害
- 静的嚥下障害と動的嚥下障害
- 咽頭腫瘍などのように、食物の通路そのものの異常によって起こる嚥下障害を静的嚥下障害という
- 延髄梗塞など、嚥下運動を担当する神経の障害によって起こる嚥下障害を動的嚥下障害という
- 誤嚥の分類
- 喉頭挙上の際に、誤嚥が認められるものを喉頭挙上期誤嚥、喉頭下降の際に誤嚥が見られるものを喉頭下降期誤嚥という
- 嚥下障害の診断は、嚥下障害の原因疾患の診断と、 嚥下障害の病態診断からなる