食道静脈瘤患者のケアのポイント

食道静脈瘤患者のケアのポイント【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年8月28日
最終更新日:2018年06月29日
(変更日:2013年11月7日) ※

目的

  • 食道静脈瘤患者に適切なケアを行う

疾患の概要

  • 食道静脈瘤とは、静脈が食道粘膜下において腫瘤状に拡張したものであり、門脈圧亢進症によって生じる
  • 門脈から大循環系にかけての側副血行路の一部である
  • 門脈圧亢進症の原因は約9割が肝硬変であり、その他には肝外門脈閉塞症、特発性門脈圧亢進症などがある
  • 食道静脈瘤が破裂してなければ症状は特に見られないが、破裂した場合は血圧低下・ショック・下血・吐血などの症状が見られる場合もある
  • 治療を行わない場合、破裂による死亡率は約5割である
  • 腹水、肝脾腫による腹部膨満感や肝機能障害による易疲労感、全身倦怠感、食欲不振、鼻出血などの出血傾向などの症状が見られることがある

治療

内科的治療

  • 治療の第1選択はとして、内視鏡治療となる
  • 内視鏡治療には内視鏡的静脈瘤結紫法内視鏡的硬化療法があるが、食道潰瘍が形成されるため発熱、出血、術後胸痛などが生じる場合があり、稀に食道穿孔が起こる場合もある
  • 内視鏡的静脈瘤結索法
    • 内視鏡的に輪ゴムや0-リングなどで静脈瘤を結紮し、静脈瘤を脱落・壊死させる方法である
  • 内視鏡的硬化療法
    • 静脈瘤の周囲の粘膜下や静脈瘤そのものに対して硬化剤(シアノアクリレート、エタノールアミンオレート、無水エタノール、エトキシスクレロールなど)を注入することによって、血栓化を行う
    • 静脈瘤破裂時は緊急処置としてS-Bチューブを使用する場合もある
    • 肝性昏睡や出血性ショックなどを伴う場合は、これらの治療を並行し、循環動態が安定した後に、内視鏡的静脈瘤結索法もしくは内視鏡的硬化療法にて止血を試みる

外科的治療

  • 頻度は少ないが、胃広範囲血行遮断+脾臓摘出や食道離断術などを行う場合がある

アセスメント

  • 特徴的に所見は特に認められないが、黄疸による皮膚黄染、腹水の有無、皮膚の変化、肝脾腫、手掌赤斑、くも状血管拡張などの症状の有無を観察する
  • 眼球・眼瞼結膜や黄疸・貧血の有無も確認する
  • 静脈瘤破裂に伴うショック状態の場合、心拍数の上昇、冷汗、血圧低下、脈拍触知不能、意識障害、呼吸不全などが見られる場合もある
  • 診断は上部消化管内視鏡検査にて行われる
  • CT検査上は、食道静脈瘤そのものは不明瞭なことが多いが、門脈系血管の拡張や脾腫、肝の萎縮、肝表面の凹凸不整、腹水などが認められる場合もある
  • 肝障害の程度にもよるが、血液検査上は、血清アルブミン値の低下、ビリルビンやALT、ASTの上昇が認められる
  • 汎血球減少やヘモグロビンの低下が認められる場合もある

看護のポイント

  • 治療を行っていない患者の場合、食道静脈瘤破裂の早期発見や対処を行う
    • 吐血・下血の有無やバイタルサインの変動の有無を観察し、貧血による症状(動悸・ふらつき・めまいなど)の有無にも注意する
    • 静脈瘤破裂によりショック状態を呈している場合は、バイタルサインを初め、全身状態の観察とケアを施行する
  • 内視鏡治療を行った場合、穿孔や術後出血などの合併症の観察を施行する
  • 再出血を防止するため、食事指導や内服薬の管理についても十分な説明を行う
  • S-Bチューブが留置されている場合は、チューブ固定や圧迫が良好か確認し、精神的苦痛や疼痛に対しても十分注意することが大切である
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