目次
目的
- イレウスの種類や原因をアセスメントし、症状に合わせた適切なケアを提供できる
病態
- イレウスとは腸管麻痺などにより腸の蠕動運動が低下した状態
- 機械的イレウス(腸内腔が閉塞して起こる)と機能的イレウス(腸内容物が停滞する)がある
- 麻酔により一時的に止められた腸管の蠕動運動は、麻酔の覚醒とともに回復してくるが、開腹術では術後の蠕動回復が遅れることがある
- 術後は生理的イレウスの状態になる場合もあるが、72時間を超えても継続している場合は術後イレウスを疑う
術後の蠕動運動を障害する要因
全身性の要因
- 麻酔による要因(副交感神経抑制剤・麻薬・全身麻酔薬・全身麻酔の深さと時間)
- 術後の体動減少
- 麻薬性鎮痛剤の使用
- 電解質異常、脱水、低栄養・低蛋白血症、低酸素血症
- 重症基礎疾患
- 高齢、肥満
腸管蠕動を支配する因子
- 神経性因子
- 自動能(壁在神経叢)
- 自律神経支配体液性因子
- 消化管ホルモン(コレシストキニン・ガストリンなど)
腹部の要因
- 開腹(腹膜刺激・内臓神経損傷・血液成分付着・血腫・腫瘍)
- 腸管切除
- 腹膜炎・腹腔内感染
- 腹水
症状と原因
機械的イレウス(腸管の閉塞)
単純性(閉塞性)
腸間膜の血行停止がないもので、術後の癒着性イレウスが代表的である
- 症状
- 排ガスや排便の停止・腹部膨満・脱水・嘔吐
- 間欠的な腹痛・悪心・蠕動運動の不穏・蠕動音の亢進・腹部聴診で金属音
- X線上腸管ガスと多数のニボー像
- 原因:術後癒着・先天性・腫瘍・炎症など
複雑性(絞扼性)
腸間膜の血行停止により腸管壊死を伴い、急激に悪化する
- 症状
- 排ガスや排便の停止・腹部膨満・脱水
- 持続性の腹痛・圧痛・腹部腫瘤・急激な嘔吐・白血球数増加・血圧低下
- 原因:腸管閉塞後の腸間膜の血行停止による腸管壊死
機能的イレウス(腸管に器質的変化はない)
麻痺性
腸管壁の神経・筋が影響を受け蠕動運動が麻痺した状態
- 症状
- 排ガスや排便の停止・腹部膨満・脱水・嘔吐
- 腸蠕動音の低下・腹痛・X線上腸管ガス多数
- 原因:腸管壁の神経・筋が影響を受け蠕動運動が麻痺したこと
痙攣性
腸管の一部が痙攣した状態
- 症状
- 排ガスや排便の停止・腹部膨満・脱水
- 腸蠕動音の低下・緩徐にはじまる周期性嘔吐や腹痛
- 原因:鉛中毒・ヒステリーなど
検査
- 血液検査
- 腹部単純X線撮影
- 造影剤を用いた小腸大腸X線撮影
- エコー検査
- CT検査 など
治療
- 保存的療法:イレウス管による減圧・抗生剤投与・輸液・高圧酸素療法
- 症状が改善しない場合や腹膜炎を合併した場合は、手術療法(開腹によるイレウス解除術など)となる
看護のポイント
アセスメント項目
- 術式に伴う侵襲(手術範囲・麻酔時間)
- 胃管やドレーンからの排液量と性状
- 疼痛の程度・部位、腸蠕動音の聴取などの腹部状態の観察
- 腹部単純X線撮影の所見
ドレナージの管理
- 胃管やドレーンからの排液量と性状の観察
- ドレーンの屈曲や閉塞予防
- ドレーンの確実な固定と抜去の予防
- 定期的なミルキング
腸蠕動を促進させるための援助
- 早期離床をすすめる
腸管機能を維持するための援助
- ADL向上をすすめる
- 全身の血行を促進・消化管機能の正常化・腸管癒着の防止に効果がある
- 排便習慣を取り戻す