術後縫合不全のケアのポイント
術後縫合不全のケアのポイント【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2014年1月14日
最終更新日:2018年06月30日
(変更日:2013年12月6日) ※
目的
- 縫合不全のメカニズムを理解し、早期発見に努め、適切なケアを提供できる
病態
- 手術創縫合部の生理的融合が障害され、縫合線に破綻をきたした状態であり、術後1週間ころまでに起こりやすい
- 縫合不全が小さな場合はあまり問題にはならないが、大きな場合は禁食・中心静脈栄養・ドレナージなどを行う
- 腹膜炎を合併した場合は、再手術の適応となる
縫合不全のリスク因子
- 再建された臓器の挙上による牽引・過度の緊張
- 無効なドレナージ
- 吻合部血行障害や、吻合部の内圧上昇など手術手技によるもの
- 高齢、貧血、低栄養
- 慢性基礎疾患(糖尿病・肝硬変など)およびステロイド剤の使用
- 感染症
症状
- 腹部の疼痛、発熱、腹壁の緊張・膨隆
- ドレーン排液の性状変化(混濁・膿性・胆汁・便汁など)
検査・診断
- 透視(経口またはドレーンより造影剤を注入)を行うと、縫合不全の箇所から造影剤が漏れ出てくる
- 毛髪ほどの小さな縫合不全の場合は、X線透視下の造影では判断できない場合がある
治療
- 禁食・中心静脈栄養・ドレナージなどの保存的療法
- 間欠的持続吸引器装着による積極的ドレナージ
生理食塩水を用いたドレーン洗浄は、縫合不全を悪化させるリスクがあるため、基本的には行わないが、医師の指示がある場合、理由などについて確認する
看護のポイント
アセスメント項目
- バイタルサイン
- ドレーンからの排液の色・性状・量・匂い、およびドレーン周囲の感染徴候
- 吐気・嘔吐などの腹部症状
- 疼痛の程度・部位
- X線、CT、血液データなどの各種検査データ
術式による好発部位
- 食道切除・再建術:吻合部(食道×胃・食道×結腸)
- 幽門側胃切除術:残胃との吻合部(ビルロートⅠ法の場合は十二指腸など)
- 胃全摘術:食道空腸吻合部・十二指腸断端
- 膵頭十二指腸切除術:吻合部(膵×空腸・胆管×空腸・胃または十二指腸×空腸)
- 胆道手術:吻合部(胆管と空腸または十二指腸)
- 結腸切除・低位前方切除術:吻合部
ポイント
- 縫合不全が起こると消化液が腹腔内に漏れ、腹膜炎を起こすリスクがあるため、排液の観察を確実に行い早期発見に努める
- 術式・吻合部による排液の性状を理解する
- 消化液を含む排液が皮膚に持続的に接触するとびらんをきたすため注意する
- 膵液には消化酵素がふくまれ、これが漏れ出すと自己融解をきたすため、ドレーンアミラーゼ値が高値の場合は膵液瘻を疑う
- 検査のために造影剤を使用すると下痢を起こしやすいため、検査後はトイレの位置など環境整備を行う
- 縫合不全の場合でもイレウスのリスクはあるため、離床を促す
離床に伴うバイタルサインや腹部症状の変化などには十分留意する
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