目的
- 自己抜管を起こすリスクを観察し予防策を講じることができる
- 自己抜管を起こした際に適切な処置を行うことができる
自己抜管とは
- 自己抜管とは患者自身が自分で挿管チューブを抜いてしまうことをいう
- 自己抜管は、いつでも誰にでも起こりうる可能性がある
- 自己抜管の原因のほとんどは、鎮痛・鎮静の不十分さである
自己抜管を起こす危険性のある患者の特徴
- 自己抜管における観察項目として特に重要なポイント
- 鎮痛、鎮静の不十分: 挿管の苦痛に耐えられない
- 精神状態の不安定: 興奮、不穏、判断力の低下
- 意識レベル低下、認知症: 治療の必要性や現状の認識能力の低下
- 環境因子: 挿管チューブ固定の不十分、人工呼吸器回路の整頓不良 など
- その他、自己抜管のリスクを判断するポイント
- 入院期間、ICU入室期間が長い
- 不適切な呼吸管理(呼吸補助が患者に合っていない)
- 睡眠不足、昼夜逆転
- 身体拘束をされている
- 血中二酸化炭素濃度が高い
- 不穏があり、体動が活発である など
自己抜管の予防
適切な鎮痛、鎮静
- 挿管チューブは患者にとって異物であることを理解する
(口や喉に24時間チューブが留置されることは非常に苦痛を伴う) - 挿管チューブの自己抜管を予防するために、適切な鎮痛、鎮静が第一選択となる
- 挿管による苦痛を緩和できる必要最小量の薬剤を投与できるよう、きめ細かな評価が必要
(鎮静に使用する薬剤を参照) - ウィーニング(呼吸器離脱)時期が不適切だった場合(早すぎ/遅すぎ)呼吸困難感を自覚し、自己抜管につながる可能性があるため、特に注意を要する
精神的ケア
- 挿管により会話ができず、意思疎通がうまく図れない、24時間呼吸器につながれていることの精神的苦痛を理解する
- 挿管や吸引などの処置の必要性、現在の状況を十分に説明する
- まばたきや手のサインなど、患者と意思疎通のためのツールを共有する
環境的子の除去と整備
- 挿管チューブの固定の不十分
- チューブ固定テープのゆるみ、浮き、カフのエア漏れがないようチェックし、十分な固定を行う
- 人工呼吸器回路の整頓不良
- 患者の手が届かないよう回路の配置を工夫する
抑制、拘束
- 上記の対策を行っても、自己抜管のリスクが高い場合は身体抑制や拘束を検討する
- 必要最低限の抑制、拘束方法を選択し、こまめな観察と評価を行い記録に残す
- 抑制時に締めすぎると循環障害を起こす可能性もあるため、適切な圧で行うようにする
自己抜管が起こってしまったら
- 自己抜管による弊害
- カフが膨らんだまま無理な力でチューブを引き抜いた状態
- 気道を傷つけ、気道や咽頭に浮腫が起きる
→ 再挿管が困難になる
- 気道を傷つけ、気道や咽頭に浮腫が起きる
- 気道確保がされないことによる人工呼吸の中断
- 呼吸不全
- カフが膨らんだまま無理な力でチューブを引き抜いた状態
- 自己抜管発生時の対応
- ただちに応援を呼び、医師へ連絡する
- モニターを装着し、呼吸状態および全身状態をすみやかに観察する
- 気道確保、酸素投与を行い、自発呼吸がないまたは減弱している場合はバッグバルブマスクやジャクソンリースを用いて人工換気を行う
- 再挿管の準備をしておく
- 医師は呼吸状態を評価し、再挿管の適応について判断する
- 他の看護師は再挿管の準備をする
自己抜管を発見した時の観察項目
- 自己抜管時には看護師が不在である場合が多い
- 人工呼吸器のアラームが発見の手掛かりになる可能性が高い
- アラームが鳴ったら、必ず訪室し患者の観察を行うこと
- 自己抜管を発見したら下記を観察する
- 患者の呼吸状態(自発呼吸の有無、咽頭狭窄や肺雑音の有無)
- 意識レベル、全身状態の確認
- 自己抜管を見つけた時間とその状況
アセスメント
- 自己抜管にすぐに気づくことが出来たか
- 自己抜管に対する適切な対処を行うことが出来たか
- 対処後、充分な観察を行うことが出来たか