認知状態の評価

目的

• 認知症と他の症状とを鑑別する
• 認知症症状の程度を把握することで、適切な対応を行う

方法

• 認知症は、認知症患者に必須の症状（中核症状）と、必ず出現する訳ではないが、環境や状況によって二次的に出現する症状に分類される（周辺症状）
  • 中核症状：記憶障害（自分の身に起こった出来事を忘れてしまうなど）、実行機能障害（計画的に物事を行うことができないなど）、失語（物を見ても、名前が出てこないなど）、失認（物を見ても何かわからないなど）、失行（どのように服を着るのかわからないなど）
  • 周辺症状：暴言・暴力、介護に対する抵抗、焦燥感・不安感、妄想、幻覚、睡眠障害（昼夜逆転）、食行動異常（どんな物でも食べようとする）、徘徊など
• 本人や家族に対し、それぞれ観察と問診を行うことで、状況を把握する

主な検査方法

• ミニメンタルステート検査（MMSE）
  • 言語機能、記憶、見当識、注意力、計算、構成能力の評価を行うことを目的とした検査であり、幅広く使われている
• 改定長谷川式簡易知能評価スケール（HDS－R）
  • 認知機能障害のスクリーニングとして、計算力、記憶力、言語能力、見当識の評価を行う
  • その時の状態の概略を把握することが目的の検査で、幅広く使われている

アセスメント

認知症と類似疾患の鑑別

うつ

• 特徴
  • 焦燥感や不安感が強い
  • 倦怠感や不眠症状がある
  • 意欲低下がある
  • 抑うつ状態である
• 認知症との違い
  • 会話は普通に行うことが可能であり、記憶も正常
  • 抑うつ状態が持続する
  • 自殺願望を抱く場合がある

せん妄

• 特徴
  • 落ち着きが見られず、焦燥感や不安感がある
  • 呼びかけても返答に時間がかかる
  • 軽度の意識障害があり、ぼんやりしている・反応が鈍い
  • 幻視が見られる
• 認知症との違い
  • 記憶障害は比較的軽度だが、日常生活において支障が生じている
  • 夕方から夜間にかけて悪化することが多い
  • 症状出現の時期が特定できる

（加齢に伴う）物忘れ

• 特徴
  • 時折、度忘れをする 時々、人の名前を思い出すことが困難になる
  • 自分が体験したことの一部分を忘れる
• 認知症との違い
  • 物忘れはあるものの、特に日常生活において支障をきたすことはない
  • 場所や時間がわからなくなってしまうことはない
  • 体験の全てを忘れることはない
  • 進行の程度は極めて遅い

注意点

• うつ状態、せん妄、物忘れは認知症として間違えられやすいので注意する
• 自殺願望を抱く場合はうつ状態と認知症の併発の可能性もあるため、注意が必要である
• ミニメンタルステート検査（MMSE）や改定長谷川式簡易知能評価スケール（HDS－R）を行う際、それぞれの質問項目の内容は人によって馬鹿にされたように感じて憤ったり、真面目に答えないケースもあるため、理解と協力が得られるよう説明を行う
• 自分が認知症かも知れないということを受け入れられない場合は、うまく検査の場を取り繕う場合もあるので、観察力や洞察力が必要である