目的
TIAとは何か理解し、早期の発見・治療につなげ、脳梗塞への移行を予防する
疾患の概要
- TIAとは、局所の脳・脊髄・網膜の虚血によって慧起される、急性梗塞に至らない一過性の神経障害をいう
- 症状は2~ 15分以内に消失することが多い
- TIAは脳梗塞の前兆であり、適切な治療が行われないと脳梗塞に至る可能性があるため、早期診断・治療が重要
原因
- 動脈硬化性病変や心臓内血栓からの微小塞栓による、一時的な脳血管の開塞
- 脳血管に狭窄・閉塞があり、血圧低下時に血液循環が低下し、一時的に脳虚血となる
症状
- 内頚動脈領域 : ―過性黒内症が特徴的で、対側の運動障害・知覚障害、優位半球の障害では失語症がみられる
- 椎骨・脳底動脈領域 : 多彩な症状を来たし、単独の症状ではTIAと診断しにくいが、一側または両側の同名性半盲、運動障害・感覚障害、嚥下困難・構音障害 などがみられる
検査と診断
治療
再発予防(内科的治療)
- TIAの症状が出現した場合、すみやかに抗血栓薬の投与を開始する
- 心原性のTIA(持続性または発作性心房細動で、心内血栓が梗塞の原因)は、抗凝固療法(ワルファリンカリウムなど)
- 非心原性のTIA(アテローム血栓陛脳梗塞やラクナ梗塞)では、抗血小板薬(アスピリンなど)
- 脳梗塞の危険因子となる高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理、禁煙指導、心疾患の治療、運動指導などを行う
外科的治療
- 頸部から頭蓋内の主幹動脈狭窄性病変に起因するアテローム血栓性脳梗塞が対象
- 頸動脈狭窄が高度、潰瘍性病変を合併する中等度以上の狭窄の症例は、外科治療(頸動脈内膜剥離術やステント留置)にて脳梗塞予防につながることが多い
観察項目
- 発作の詳しい症状、持続時間、頻度などの把握
- TIAの症状の把握(一過性黒内症、片麻痺、脱力、構音障害など)
- TIA・脳梗塞の危険因子の把握(生活習慣、既往歴、検査所見など)
- 発作時は、意識レベル・バイタルサインの変動、神経症状の有無の観察
アセスメント
- 患者の主訴をよく聞き、既往歴などからTIA・脳梗塞のリスクや症状を把握しているか
- TIAを起こすと脳梗塞移行へのリスクが高まるため、異常時は早期に受診できるよう患者への指導を行っているか
- 常にリスクを把握し、症状の変化が見られた時はその原因について検討する
合併症予防
- TIAは脳梗塞へ移行する恐れがあるため、早期の発見・対応が大切である
- 血栓性疾患(肺梗塞、深部静脈血栓など)のリスクが高いため、血圧や呼吸状態などの全身管理が必要
- 深部静脈血栓などの予防には弾性ストッキングが有効
- 抗凝固療法施行中は、出血傾向に注意する
注意点
- TIAは何もしなくても症状が軽快する事から、患者が医療機関を受診する機会が少ない
- 患者にはTIA・脳梗塞リスクを説明し、以下の症状が出現した時はすぐに受診するよう指導しておく
- 一過性黒内症の症状 : もやがかかる・ちらちらと何かが断続的に見える・見えない部分が出てくる、など
- 片麻痺の症状 : 体の片側(右か左かどちらかの半身)に力が入らない・動かしにくい、など
- 構音障害の症状 : 言葉が話しにくい、発音が上手く出来ない、など
- TIAが疑われたら、迅速に専門医のいる医療機関での治療が必要となるため、症状が軽快したからといって安易に帰宅させない事が重要