顔面神経麻痺患者への対応
顔面神経麻痺患者への対応【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年7月2日
最終更新日:2013年7月2日
(変更日:2021年4月27日) ※
目的
疾患の概要
- 顔面麻痺とは、脳神経の麻痺においては頻度が一番高く、様々な原因によって第7神経が侵され、表情筋の運動麻痺を来たした状態のことを指す
- 末梢性(顔面神経核より下部の障害)と中枢性(顔面神経核より上部の障害)に分けられ、末梢性は更に頭蓋外、頭蓋内麻痺に分類される
末梢性障害
- 脳炎、脳卒中、脳腫瘍、多発性硬化症などが原因で起こり、顔面神経症状のみならず、半身麻痺や眼球運動障害などが見られる
- 代表的なものにベル麻痺、ハント症候群がある
- ベル麻痺: 原因が特定できず、かつ急激に起こる顔面麻痺
- 近年、ウイルス感染と顔面神経に関連した栄養血管の循環不全が原因である可能性が高いと言われており、病態的には神経そのものが浮腫により腫脹することによる麻痺であると推測されている
- ハント症候群: 主な特徴として末梢性顔面麻痺、めまいや難聴、耳介ヘルペスなどが挙げられる
- 原因は水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化によるものが疑われている
- 中耳炎の波及や側頭骨腫瘍あるいは頭部外傷などにより、麻痺が起こる場合もある
ベル麻痺の場合、その背景には色々な原因疾患が隠れている場合があるため、十分な観察を要する
中枢性障害
- 脳炎、脳卒中、脳腫瘍などが原因で起こり、他の神経症状を併発する
- 表情筋の麻痺はそれほど強くなく、額に皺を寄せることが可能である
検査
- 検査は神経耳科学的検査(前庭機能や聴力を調べる)や画像診断(MRI、CTなど)、一般検査(尿、血液検査)や血圧測定などを基本として行う
- 血液検査では、ウィルス感染(特にHIV)や糖尿病、白血病、サルコイドーシスや結核、髄膜炎の有無を調べることも重要である
髄膜炎の症状が認められた場合は、
髄液検査、結核やサルコイドーシスの場合は胸部レントゲンやツベルクリン反応の検査も適宜追加する
単純ヘルペスウイルスと水痘帯状ヘルペスウイルスについては、顔面神経麻痺との関連性が深いため、血清抗体価の測定も行う
評価の方法
- 麻痺の回復過程や治療効果について客観的かつ再現性のある評価を行うために用いる
- 顔面神経麻痺の程度を評価するための評価票(40点法)
- 機能検査法:アブミ骨筋反射、流涙検査、顎下腺分泌機能検査、味覚検査(塩味、甘味、苦味)など
- 電気的診断法:なるべく早い時期に神経変性について評価を行い、治療法の選択や予後を判定する
臨床症状・所見
- 麻痺が強い場合、顔面の健側と患側では大きな左右差が認められる
- 表情筋を動かした際には麻痺側との非対称が更に明らかになる
- 患側の閉眼不全、鼻唇溝の消失、口角下垂などの症状が認められる
治療法
- 顔面神経麻痺の手術は顔面神経減圧術や形成術が施行される
- ベル麻痺の場合:麻痺の程度が比較的強い場合は入院治療を考慮し、ステロイドを大量に与薬する
大量投与により重篤な副作用を生じる恐れがあるため、十分な経過観察が必要となる
- 神経浮腫の軽減目的でデキストラン製剤や循環を改善させる目的でプロスタグランジンを用いる場合もある
- ハント症候群の場合:抗ウィルス薬とステロイド剤の投与を行う
看護のポイント
- ベル麻痺やハント症候群の場合は、それらの疾患の背景に高血圧や糖尿病があることが多いだけではなく、肉体的、精神的疲労がきっかけで発症することも少なくないため、全身的にケアを行うことが必要である
特に消化性潰瘍や糖尿病がある場合は、ステロイドの大量投与により重篤な副作用が現れる可能性がある
- 基本的にベル麻痺やハント症候群の場合、入院治療が前提であることを理解してもらうことが重要である
- 顔面神経減圧術を施行した場合は耳小骨を触っているので、鼻かみをしたり、頭を強く動かすことを避けるよう、患者に説明する
- 回復過程には個人差があるため、焦らずリハビリを行うよう指導する
- 入院治療中から、後遺症や再発の可能性について説明を行い、精神的ストレスの緩和に努める
- 顔面の寒冷刺激は極力避けるよう説明する
- 麻痺が改善しない場合は、発症後2週間以上経過してからマッサージなども含め、リハビリテーションを行う
- 経過が悪い例では、針治療も検討する
観察項目
- 顔面神経麻痺の程度
- 味覚障害の有無
- 目の乾燥感
- 流涙の有無
ステロイドの大量投与を行う場合は、副作用の発現(消化管出血、糖尿病の悪化など)に対する十分な観察が必要
アセスメント
- 顔面神経麻痺の原因疾患には様々なものがあるため、病歴や問診などを基に適切な検査を行う必要がある
注意点
- 顔面神経麻痺は程度によって症状の出方が異なるため、程度が弱い場合は気づかなかったり、後日悪化することもあるため、十分な観察を行う
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