慢性副鼻腔炎・鼻茸患者への対応
慢性副鼻腔炎・鼻茸患者への対応【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年7月9日
最終更新日:2013年7月9日
(変更日:2021年7月9日) ※
目的
疾患の概要
- 成因には全身的因子と環境的因子があると言われている
- 全身的因子として栄養状態、素質(アレルギーなど)、精神的素因などがある
- 環境因子は医療状況、衛生、生活様式の違い、大気汚染により、発症の差異が見られる
- 炎症性疾患の局所的因子として、鼻中隔弯曲に伴い、鼻腔の形態変化(鼻甲介など)が起こり、副鼻腔開口部の排泄・通気障害が起こることが挙げられる
- 細菌感染の関与には、慢性副鼻腔炎における顎洞内貯留液からの検出菌として肺炎球菌、ブドウ球菌、レンサ球菌、インフルエンザ菌などが多く、肺炎桿菌、緑膿菌などの混合感染も認められる
- 上記などの細菌感染と形態異常が副鼻腔の炎症の遷延化につながる
- 鼻茸の組織像は、大別して浮腫型、線維型、細胞浸潤型の3つがあり、浮腫型が大半占める
- 浮腫型:好酸球の浸潤が比較的多く、粘膜が浮腫状に肥厚し、上皮で杯細胞の増生が認められる
- 線維型:粘膜の線維成分の増殖が目立ち、疲痕組織様の組織像を呈している
- 細胞浸潤型:粘膜下固有層に好中球、リンパ球、形質細胞などの炎症細胞浸潤や好酸球、肥満細胞、肉芽形成も認められる
治療
保存的治療
局所療法
- 分泌物吸引、鼻処置、鼻洗浄 鼻粘膜の腫脹を除去する
- 血管収縮薬や収斂剤をスプレーあるいは綿棒を用いて鼻内に塗布する
- ネブライザー(エアロゾル治療)
- 上顎洞穿刺・洗浄
- 下鼻道から上顎洞をシュミット(Schmidt)探膿針を使用して穿刺し、貯留液の性状を把握すると共に抗生物質入りの生理食塩水で洗浄を行う
- 点鼻薬
- 高度な鼻閉があるとき、血管収縮剤入りの点鼻薬を使って鼻粘膜の収縮を緩和し、副鼻腔の排泄・換気を良好にする
全身療法
- 主に抗生物質の使用や酵素薬内服療法が用いられている
手術療法
- 手術療法には、鼻内法と鼻外法があるが、近年では鼻内法の施行が大半を占める
- 内視鏡下鼻内副鼻腔手術で、基本的に全身麻酔で行う
- 副鼻腔の排泄と換気異常を改善し、洞内にある粘膜の正常化を図り、治癒に導く
- 手術終了時には、鼻・副鼻腔内に鼻腔整復と止血の意味でガーゼ挿入が行われ、通常は片側の鼻腔にベスキチンガーゼ数枚を挿入する
- 術後ガーゼ抜去後は感染予防のために洞内の清掃や分泌物の吸引、創部の痂皮や血液の除去などを施行し、ネブライザー治療を行う
- 外来通院を継続し、薬物療法も引き続き行う
術後合併症
- 鼻出血
- 前あるいは後節骨動脈や蝶口蓋動脈の損傷によるものが多く、まれに内頸動脈や海綿静脈からの出血もあるが、この場合は致命的である
- 頭蓋内合併症
- 眼合併症
- 視神経管骨壁の損傷によって起こる視力障害や、眼窩板の損傷による複視、眼球突出がもっとも多く、まれに鼻涙管損傷による涙嚢炎流涙がある
- 歯牙障害
- 上顎洞を手術している際、上顎洞に歯根部が突出している場合に起こりやすい
- ショック
- ボスミンやキシロカインなどの中毒もしくはそれらの薬液が下気道へ流下したことによって生じる
観察項目
- 鼻閉塞、鼻漏、頭重感、頭痛、 嗅覚障害、 鼻性注意不能記憶力減退、注意力散漫などの有無
- 術後出血、疼痛、流涙の有無
アセスメント
- 鼻閉塞
- 鼻漏
- 上皮の細胞組織の増殖や血管透過性の亢進による漿液性・粘液性分泌が増加することによって起こり、後鼻漏の訴えが多く見られる
- 頭重感・頭痛
- 急性増悪時や前頭洞病変のあるときには頭痛を生じるが、通常は頭重感の方が多い
- 嗅覚障害
- 鼻茸や分泌物の過多、粘膜腫脹によって嗅裂が閉塞すると呼吸性嗅覚脱失または減退が起こる
- 鼻性注意不能
- 注意力散漫、記憶力減退などの症状が見られる場合もある
- 下気道症状
- 気管支拡張症や慢性気管支炎合併し咳や痰などが見られる
喘息がある患者に慢性副鼻腔炎や鼻茸症が合併する場合も多い
検査と検査所見
- 内視鏡検査
- 前鼻鏡検査
- 前鼻鏡で鼻腔前半部の観察を行う
- 硬性内視鏡を使用した場合、各部位の詳細な観察ができる
- アレルギー疾患が合併している場合、中鼻道の閉塞や鼻粘膜の腫脹、蒼白が見られる
- 後鼻鏡検査
- 後鼻鏡で鼻腔後半部の観察を行う
- 両方の後鼻腔や下鼻甲介後端肥大、嗅裂や中鼻道に鼻茸や分泌物の観察が可能であり、蝶形洞、後篩骨洞病変の把握もできる
- X線検査
- 篩骨洞病変の判読はしにくいが上顎洞病変の判別が可能である
- CT
- 正確に副鼻腔病変や罹患洞の病変の程度を把握できる
- 喘息合併タイプでは前・後篩骨洞を中心とするものが多く、感染型タイプでは上顎洞・前篩骨洞陰影を中心とするものが多い
- MRI
- ポリープ、腫瘍、粘膜肥厚、真菌症、貯留液など鑑別が可能であり、副鼻腔の軟部陰影の把握に優れている
MRIはCTのように骨の描出ができないため、副鼻腔の局所解剖所見が必要な場合はCTとの併用を行う
-
- 鼻腔通気度検査、嗅覚検査
- 鼻内所見と鼻腔通気度の値が合致しない場合があるので、検査は複数回行うことが望ましい
- 長期に渡る慢性副鼻腔炎患者の場合は嗅覚障害の自覚がない場合もあるため、アリナミンテストなどを施行する
- アレルギー検査
- 慢性副鼻腔炎はアレルギー疾患との関連性があるため、総IgE値、末梢血好酸球数、CAP―RASTの検査は必ず行う
喘息やアスピリン喘息合併症がある患者の場合は、家族歴や既往歴聴取も必要である
看護のポイント
術前後の看護
- 術前に手術に対する説明を十分に行い、不安感や緊張を軽減させる
- 局所麻酔下で手術を受ける患者の場合は、麻酔時の疼痛による痛みや術中に出血が起こること、術後数日間はタンポン挿入により口呼吸になることなどを十分説明する
- 患者の体動が術中に起こると、合併症が起こる危険性が高くなるため、安楽な体位や声かけを行う
- 術中に、咽頭血液流下によって咳嗽が起こりやすくなるので、誤嚥しないよう、口腔内にためておくことを説明する
- 術後4~5日は出血の危険性があり、洗髪や入浴ができないため、身体の清潔保持に努め、上顎洞手術を行う患者の場合は歯内の創部の安静保持のために歯磨きではなく、含嗽することを説明する
- 帰室後にタンポンによる圧迫痛や創痛やが出現し、痛みが強いと血圧の上昇が起こり、後出血の原因となる場合があるので、積極的に鎮痛薬などを用いる
アスピリン喘息がある患者は、投薬に注意が必要である
- 術後合併症を早い段階で発見するために、眼症状(眼瞼腫脹、視力障害、眼球運動障害)の有無に注意する
- 鼻内にタンポンが挿入されている時には、圧迫により流涙が出現するが、タンポンを抜いた後にも流涙が持続する場合は、鼻涙管損傷の疑いがある
- 鼻中隔矯正術後に発熱が見られる場合は、術後血腫が疑われる
- 退院後は、鼻・副鼻腔粘膜の乾燥予防のためにマスクの装着をすることと、定期受診の必要性について説明する
- 水泳や鼻かみの時期などは医師に確認する
注意点
- 鼻腔内を観察する際、疼痛が生じたり、くしゃみを連発したり、精神的不安を抱く場合があるため、事前に内容を説明し、理解を得る
- 上顎洞洗浄・穿刺を行う場合、患者は痛みや不安などがあるため、十分に治療の方法やメリットについて説明し、理解してもらう
- 患者の心理状態に配慮し、処置の無理な施行は避ける 高度の鼻閉がある場合、血管収縮薬入りの点鼻薬を使用するが1日に何度も使用すると鼻粘膜のリバウンドや効果減退の可能性もあるため、適切な回数で使用する
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