浣腸

浣腸【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年7月25日
最終更新日:2020年06月19日
(変更日:2020年6月30日) ※

目的

  • 浣腸を行う際の必要物品やケアのポイントについて理解し、適切な援助を行う

必要物品・準備

必要物品

  • ディスポーザブルタイプの50%グリセリン浣腸液(容量については医師の指示に従う)
  • 潤滑剤(オリーブ油、ワセリンなど)
  • トイレットペーパー
  • 処置用シーツ
  • バスタオル
  • 必要に応じてポータブルトイレ、便器、陰部洗浄物品

準備

  1. 患者に浣腸を行う事が適切かどうか判断し、注意事項の確認をする
    • バイタルサイン、検査での腸管炎症・狭窄所見の有無、患者の最終排便日や排便状況、腹部触診や必要時の直腸診による宿便の状態、排ガス・腹部膨満の有無、腸蠕動音の聴取 などを確認
    • 浣腸の禁忌、慎重投与、副作用について確認をする
      ※場合によっては、医師の指示を仰ぐ
  2. 患者に浣腸の目的や方法・注意点などを説明し、排泄する場所を確保しておく
    • 患者に浣腸を行う目的・方法について十分に説明した上で、同意を得る
    • 処置中に不快を感じた場合は、すぐに知らせるよう説明する
    • 患者の安静度やADLに応じて、患者と相談し排泄する場所を選択する
    • 事前にトイレは確保し、トイレでの排泄が困難な場合はベッドサイドにポータブルトイレや便器を準備し、すぐ排泄できるように準備しておく
  3. 患者とその周囲の環境を整える
    • 患者には、浣腸前に膀胱内を空にし膀胱内圧を低下させると浣腸液が注入しやすくなり苦痛が緩和されるため、排尿を済ませておくよう説明する
    • カーテンを閉め、バスタオルなどを使用し不必要な肌の露出を避け、患者の羞恥心に配慮する
    • ベッド周囲の汚染を防止するため、臀部の下には処置用シーツを敷く
    • 援助前後で比較できるよう、バイタルサインの測定を行う
  4. 浣腸液を体温程度に温める
    • 温湯に浣腸液を入れ、約40℃に温める
    • 直腸温は約37.5℃であり、それよりやや高めの温度にした方が直腸壁を刺激し腸蠕動運動を促す
    浣腸液が高温になると腸粘膜が炎症を起こすリスクがあり、低温では腸の毛細血管の収縮により血圧上昇・悪寒・腹痛を起こすリスクがあるため、適温になるよう注意する

方法

  1. 患者の体位を整える
    • 浣腸液を腸内に流れやすくするため(直腸→S状結腸→下行結腸)、直腸の構造から左側臥位とし膝を曲げるよう援助する

    浣腸時の体位と直腸・肛門の構造

    kantyo

  2. カテーテルの長さに注意し、挿入する
    • グリセリン浣腸の場合、カテーテルの目盛りを目安とし、ストッパーをスライドさせ挿入の長さを合わせておく ※成人は6~7cm、小児は3~6cm、乳児は3~4cm程度
    • 十分に浣腸液を腸内に注入できるよう、カテーテルの先端を上向きにして容器内の空気を抜いておく
    • 挿入の長さは、肛門管の長さにカテーテル先端の長さ約2cmを加える
    • 成人の場合、カテーテル挿入が5cm以下になると肛門管内に浣腸液を注入してしまうため、肛門括約筋を刺激し便意が早く起こるため液の保留が困難になる
    挿入が長すぎると、S状結腸への移行部の損傷や直腸穿孔を起こすリスクがあるため、注意が必要である
    • カテーテルの滑りを良くするため、カテーテル挿入の長さまで潤滑剤を塗る ※カテーテルの穴をふさがないよう注意する
    • 局所麻酔である塩酸リドカインゼリーの使用はショック症状を起こすリスクがあるため、安易に使用しない
    カテーテル挿入時は、出血、腸穿孔、血圧変動によるショックを起こすリスクがあるため、患者に声掛けしながら状態に変化がないか注意する
  3. 浣腸液を注入する
    • 患者にゆっくり口呼吸するよう声掛けしながら、カテーテルを肛門から腸管に沿うように挿入し、浣腸液をゆっくり注入する
    • 注入中は患者の状態変化に注意し、腹痛など異常が認められた場合は中止し、バイタルサインを測定する
    • 口呼吸をすると肛門括約筋が緩み、腹圧もかからず、カテーテルを挿入しやすい
    • 急激な注入は排便反射を引き起こし、すぐに便意を催すため注意が必要である
  4. 有効な排便ができるように、患者に説明し協力を得る
    • 浣腸液を注入後、直腸粘膜の損傷を避けるように静かにカテーテルを抜いて、肛門部をトイレットペーパーで約3~5分圧迫し浣腸液の漏れを防ぐ
    • 患者には、有効な排便ができるように我慢する必要があり、便意が強くなってから排便するよう説明する
    • 浣腸液注入直後は便が硬く浣腸液のみが排泄されてしまうため、腹部マッサージをすると腸蠕動運動が亢進し排便しやすくなる
  5. 援助後の患者の状態と排泄物の確認をし、片づけをし環境を整備する
    • 患者の状態の観察を行う(バイタルサインの変化、肛門痛や出血の有無、顔色や冷汗の有無、疲労感、腹部膨満感や残便感、腸蠕動音の確認)
    • 排便の状況を確認する(排便量や性状)
    • トイレでの排便時、観察のため便は流さずにナースコールを押すよう患者の理解・協力を得る
    多量の排便により循環動態に影響を及ぼし、血圧変動・気分不快などを生じる場合があるため、患者の状況によってはトイレに付き添う必要がある

観察項目

  • バイタルサインの変動、全身状態の観察、患者の年齢
  • 悪心・嘔吐などの消化器症状の有無
  • 患者の普段の排便状況
  • 患者の最終排便日とその排便状況、排ガスや腹部膨満の有無、腸蠕動音の聴取状況
  • 腹部触診や必要時の直腸診による宿便の状態
  • 検査での腸管炎症・狭窄所見の有無などの確認
  • 援助後の患者の状態と排便の観察(バイタルサインの変化、肛門痛や出血の有無、顔色や冷汗の有無、疲労感、腹部膨満感や残便感、腸蠕動音の確認、排便の量と性状)

アセスメント

  • 浣腸の禁忌・慎重投与となる状況ではないか確認し、患者の状態によっては医師に指示を仰ぐ必要がある
  • 患者に浣腸の目的や方法を説明し理解が得られたか、羞恥心への配慮を十分に行い、患者が安心して援助を受けることができたか
  • 援助時はショックに注意し、安全な方法で浣腸を行えたか

注意点

  • 多量の排便により血圧変動を来たす場合があるため、血圧が変動しやすい患者においては医師の指示を仰ぐ、排泄をベッド上で行うなどの注意が必要である
立位による浣腸処置時は、直腸穿孔の危険性に十分注意する

浣腸の慎重投与

  • 腸管や肛門に炎症・創傷がある患者:出血を起こし、グリセリンが吸収され溶血・腎不全を起こす可能性があるため
  • 腸管麻痺がある患者:腸蠕動亢進により腹痛など症状悪化の可能性がある
  • 重症硬結便がある患者:浣腸では効果が期待できず、腹痛などの症状悪化の可能性があるため
  • 頭蓋内圧亢進症状があるか、亢進が予測される患者:症状悪化の可能性がある
  • 乳児:乳児の反応が十分に把握しにくい場合、過剰投与となりやすいため
  • 高齢者:高齢者の場合は体液量減少による脱水を起こしやすく、少量から投与する
  • 妊婦:安全性が確立されておらず治療上の有益性がリスクを上回る場合のみ慎重投与するが、投与により子宮収縮を誘発し流産・早産を起こすリスクがあるため投与しない方が望ましい

浣腸の禁忌

  • 腸管内出血、副宮内炎症、腸管穿孔またはその恐れのある患者:腸管外漏出による腹膜炎誘発、腸蠕動亢進による症状悪化、グリセリン吸収による溶血・腎不全発症する可能性があるため
  • 全身衰弱が著明な患者:強制的排便によりさらに状態を悪化させ、ショックを起こす可能性があるため
  • 下部消化管術直後の患者:腸蠕動亢進による腸管縫合部の離開を誘発する可能性があるため
  • 悪心・嘔吐、激しい腹痛などの急性腹症が疑われる患者:症状悪化の恐れがあるため
本コンテンツの情報は看護師監修のもと、看護師の調査、知見、ページ公開時の情報などに基づき記述されたものですが、正確性や安全性を保証するものでもありません。
実際の治療やケアに際しては、必ず医師などにご確認下さい。
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