腹膜炎患者のケアのポイント
腹膜炎患者のケアのポイント【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年8月2日
最終更新日:2018年06月30日
(変更日:2019年9月26日) ※
目的
疾患の概要
- 腹膜炎とは何らかの炎症が腹腔内で生じ、腹膜に波及した状態のことを指す
- 原因疾患として急性虫垂炎、胆嚢炎、憩室炎、消化管穿孔、胆嚢穿孔などがあり、ぶどう球菌や大腸菌などが原因菌となる
- 結核などで慢性の経過をたどる慢性腹膜炎や、急性の経過をたどる急性腹膜炎がある
- 炎症の波及の範囲によって、汎発性腹膜炎と限局性腹膜炎に大別される
症状・診察所見
症状
頻脈、意識障害、血圧低下、尿量減少などをきたす場合もある
理学所見
- 腹部の圧痛、筋性防御、反跳痛が認められる
- 腸管麻痺による腸蠕動音の消失や腹部膨隆を認める
診断・検査
- 腹膜炎は腹膜刺激症状の有無によってある程度の診断は可能である
- 血液検査では血球の上昇などを認める
- 腹膜炎の原因疾患に関しては腹痛の部位や病歴やCT検査、単純X線検査などの画像検査によって、更に明確な診断を行う
- 単純X線検査では小腸ガス像の有無や腹腔の遊離ガスを見る
- CT検査では、腹水の有無や腹腔の遊離ガス、膿瘍の有無や臓器の異常所見、腸管の壁肥厚の診断が可能である
腹膜炎の主な原因疾患
- 急性虫垂炎
- 虫垂炎には蜂巣炎性、カタル性、壊疸性虫垂炎があり、特に壊疸性虫垂炎や蜂巣炎性の場合は、腹膜炎を合併することが多い
- 所見として、ブルンベルグ徴候や筋性防御、右下腹部に圧痛が認められる
- CT検査では虫垂腫大が認められ、腹水や周囲の膿瘍形成などが見られる場合もある
- 消化管穿孔
- 胃、小腸、大腸、十二指腸などのどの部位にも発生する可能性があり、いずれも潰瘍、外傷、異物、悪性腫瘍などが原因となる
- 上部消化管穿孔が疑われる場合:タール便の有無、胃・十二指腸潰瘍の既往や消炎鎮痛薬の内服などの病歴を聴取することが重要である
- 小腸穿孔の場合:原因は潰瘍、癌の他、異物や外傷によるものもある
- 交通外傷などの鈍的外傷による消化管穿孔では50%以上が小腸であり、次いでS状結腸や横行結腸、上行結腸が好発部位となっている
- 大腸穿孔の場合:糞便による虚血、大腸癌や大腸憩室などが原因となる
- 下部消化管穿孔によって起こる腹膜炎の場合:しばしばショック、多臓器不全、敗血症を合併することがあり、予後は不良である
治療
- 腹膜炎と診断された場合は基本的に外科的処置を行う
- 汎発性腹膜炎の場合:ドレナージと手術による原因疾患の治療が施行される
- 消化管穿孔の場合:切除または穿孔部閉鎖術、急性虫垂炎の場合は虫垂切除を行う
- 大腸穿孔の場合:縫合不全などのリスクが高いことが多いため、人工肛門の造設を併用する場合がある
- 腹膜炎を合併している場合:感染性滲出液を腹腔内から除去することが必要なため、術中に大量の生理食塩水を用いて洗浄を行う
- さらに術後膿瘍の予防、感染性滲出液のドレナージ目的、縫合不全のインフォメーションとしてドレーンを留置する
- 手術療法に加え、シヨック、呼吸不全、腎不全、敗血症、DIC等の多臓器にわたる重篤な合併症に対する治療が必要である
※特に下部消化管穿孔による腹膜炎や高齢者の場合、命に係わるケースもある
看護のポイント
- 腹膜炎の原因疾患により合併症や経過が異なるため、疾患についての理解を深め、それに応じた十分なケアを行う
- 急激に発することが多いため、患者や家族への精神的援助が必要である
術前
- 特に汎発性腹膜炎の場合、急激な悪化が起こる場合があり、ショック、呼吸不全、敗血症、DIC等、様々な臓器に渡って重篤な合併症が起こる危険があるため、バイタルサインのチェックや全身の観察などを十分に行う
術後
- 手術で原疾患の除去を行っても、引き続き、上記同様の重篤な合併症を来たしている場合があるためバイタルサイン、呼吸・循環動態などの管理を十分に行う
- しっかりとドレーン管理などを行い、縫合不全や後出血、術後膿瘍などの術後合併症 の早期発見に努める
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