目的
- 胆嚢結石・胆嚢炎患者に適切なケアを行う
疾患の概要
- 胆嚢結石は胆嚢の中に作られた結石のことである
- 多くは症状がなく、偶発的に検診などで発見されることもあるため、無症状胆石症と呼ばれている
- 場合によっては胆道感染から起こる胆嚢炎や癌痛発作を併発する
- 胆嚢収縮あるいは腸管運動機能の低下、食習慣、急激な体重減少、脂質異常症などが胆嚢結石の形成に関係している因子であるが、従来から、5F[40代(Forty)、女性(Female)、多産(Fecund)、白人(Fair)、Fatty(肥満)]ともいわれる
- 胆嚢結石の種類としては、コレステロール胆石(混成石、混合石、純コレステロール石)、色素胆石(ビリルビンカルシウム石、黒色石)、まれな胆石(脂肪酸カルシウム石、炭酸カルシウム石、他の混成石、その他)に分類されており、コレステロール系結石が全体の約7割を占める
- 急性胆嚢炎は胆嚢に生じた急性の炎症性疾患であり、多くの場合、胆嚢結石に起因しており、胆汁中にある細菌が感染を起こすことにより発症する
- 慢性胆嚢炎は慢性的に胆石が刺激されることにより発症すると考えられ、胆嚢壁の線維化、胆嚢粘膜の萎縮を主症状とし、しばしば急性胆嚢炎を生じる
症状
- ほとんどの場合、症状は見られないことが多いが、胆石発作が起こった場合は、食後に右季肋部や心窩部にかけての痛みや右肩への放散痛が認められる
- 誘発因子は特に高脂肪食の摂取であり、発作時には悪心・嘔吐が生じることがある
- 胆嚢結石によって生じる急性胆嚢炎には三徴(発熱、腹痛、黄疸)がある
- 胆嚢炎の場合、マーフィー徴候(右季肋部を圧迫しながら深呼吸を行った際、息を吸った時に呼吸が止まる)が特徴的な腹部所見として認められる
診断
- 胆嚢炎や胆嚢結石に対して行う画像診断は、第1選択として簡便で侵襲が少ない体外式腹部超音波検査を行うが、所見として胆嚢壁肥厚、胆嚢腫大胆嚢周囲の液体貯留やガス像などがある
- 急性胆嚢炎の重症度判定にはCTが適しており、コレステロール結石を除く胆嚢結石の質的診断に有効である
- 胆嚢炎の存在診断にMRIが適している
治療
- 基本的に自覚症状がない胆嚢結石の場合は、経過観察を行う
- 経過中は胆嚢癌発症や肝機能障害の発生の可能性について考慮する
- 無症状の場合でも、状況に応じて手術を検討する場合がある
- 癌の疑いのある壁肥厚がある場合、結石が多数の場合、胆嚢造影の結果が陰性の場合、超音波にて胆嚢の評価が不十分な場合など
- 胆嚢結石症に対しての基本的治療は胆嚢摘出術であり、多くの場合、腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行される
- 炎症が強い場合などでは開腹手術へと移行することがある
- 胆嚢摘出術の合併症には術中の出血、胆石の腹腔内遺残、胆道損傷、術後の創感染や胆汁瘻などがある
- 急性胆嚢炎の基本的な治療は手術であり、腹腔鏡下胆嚢摘出術が望ましい
- 胆嚢ドレナージ法には、経皮経肝胆嚢吸引穿刺法(PTGBA)や経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)、内視鏡的経鼻胆嚢ドレナージ(ENGBD)がある
看護のポイント
- 胆嚢結石に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った後はインフォメーションドレーンが腹腔内に挿入されることが多い
- 急性胆嚢炎などの炎症併発例の場合にもドレーン挿入が行われる
- 胆汁瘻や術後出血などの術後合併症を早期発見するため、ドレーンからの排液の観察を十分に行う
- 急性胆嚢炎に対して胆嚢ドレナージを行った後は、経鼻的もしくは経皮的に体外へドレナージチューブが挿入されている
- 経皮的ドレナージを行った場合、腹腔内に胆汁の漏出が見られ、胆汁性の腹膜炎が起こることもあるため、刺入部の痛みだけではなく、腹部所見の有無を常に考慮しながら観察を行う
- 経皮的ドレナージは一般的に、皮膚にドレナージチューブが縫合固定されており、さらにテープによる固定を行う
- ドレーンのテープ固定の角度や方向によってはドレナージ経路の閉塞や狭窄などのトラブルが起こる危険性があるため、患者の安全面などを考慮した固定を行う
注意点
- ドレナージ中は点滴などのチューブ類も併用されていることが多く、チューブのトラブルが生じやすいため、患者教育や環境整備に注意する
- 経鼻的にドレナージを行っている場合は、体動などによってチューブの逸脱などが生じやすく、特に認知症などがある高齢者の場合は注意が必要