呼吸理学療法
呼吸理学療法【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年7月27日
最終更新日:2020年07月30日
(変更日:2020年8月4日) ※
目的
- 呼吸理学療法を行う(体位ドレナージを中心に)際の必要物品や援助のポイントについて理解する
- 呼吸理学療法とは
- 貯留している分泌物をより少ないエネルギーで排除できるようにし、肺でのガス交換をより効果的に行い酸素化効率を上げることが目的となる
- 呼吸筋の訓練など理学療法士が専門的な技術を用いて行う事が多い
- 対象患者:排痰量が30ml/日、術後で自己喀痰・排液が困難な患者、人工呼吸管理により自己喀痰が困難など
- 体位ドレナージ、咳嗽の介助、吸入や吸引の処置、呼吸筋の効率を上げる呼吸訓練などがある
- 電動式振動法(バイブレーション)、胸部軽打法(タッピング)、スクイージングの効果については、様々な意見がある
必要物品・準備
必要物品
- 安楽枕(体位変換用枕など)
- 必要に応じて吸引セット、吸入器
- パルスオキシメーター
準備
- 体位ドレナージが可能か患者の全身状態をアセスメントし、必要性について評価する
- 患者に体位ドレナージの必要性、目的と方法について説明し、理解と協力を得る
※心身の緊張をとき、リラックスする事が呼吸の安定につながる - 事前に排尿・排便を済ませるよう説明する
※食前に終了するよう調整する - 体位ドレナージ中の体位が安楽となるよう、環境への配慮や安楽枕を準備し、患者の状態に応じて吸引の準備をしておく
体位ドレナージ中の咳嗽や深呼吸は、患者自身の意志により行われるものであり、1回の体位ドレナージは30分が効果的で長時間同一体位をとるため、患者の理解・協力が必須である
方法
- 痰喀出がしやすくなるよう気道の加湿をする
- 去痰薬や気管支拡張薬入りの吸入や水分摂取など加湿により痰の流動性を高める
- 夜間の睡眠中に痰が貯留するため、午前中に行うのが望ましい
- 痰の貯留部位を上にし、体位ドレナージを行う
- 体位変換を行う場合は、各種モニター類の変動や、患者の表情や訴えに注意し、ゆっくりと行う
※横隔膜運動を阻害しないよう安楽枕を挿入する
- 聴診にて痰が中枢気道に移動した事を確認する
- 咳嗽を促し自己喀痰できるよう援助し、喀痰できない場合は吸引を行う
- 大きな深呼吸後に1~2秒間最大吸気を維持し気道内圧を上昇させた後、一気に大きな咳をすると喀痰しやすい
- 体位ドレナージ後の評価を行う
- 呼吸状態の評価:痰の量・性状、呼吸数・リズム、呼吸音の性状と部位の変化、パルスオキシメーター値の変動
- 体位ドレナージの方法の評価:体位のとりかた、長時間同一体位による患者の疲労、患者の咳嗽の仕方の指導は適切であったか
慢性呼吸不全の患者の場合(重力を利用し排痰を促す代表的な方法)
- 上葉:坐位(ファウラー位)
- 下葉:腹臥位
- 左下葉S9:側臥位(頭低位)となり、下肢側を50~60cm拳上する
- 左右下葉S10:腹臥位(頭低位)となり、下肢側を50~60cm拳上する
急性呼吸不全の患者の場合
- 状態が変動しやすい
- 仰臥位で背側に痰が貯留しやすいため、患側を下にした側臥位が効果的である
人工呼吸器装着中の患者の場合
- 上~下葉区、後肺底区:腹臥位
- 後上葉区(上~下葉区、後肺底区):前方へ45度傾けた側臥位
- 中葉、舌区:後方へ45度傾けた側臥位
- 肺尖区、前上葉区、前肺底区:背臥位
- 外側肺底区、患側上肺野:側臥位
人工呼吸器による換気を行っていても、身体の下側に分泌物が貯留することで無気肺を起こすリスクがある
⇒時間ごとに体位変換を行い排痰を促す
観察項目
- 基礎疾患とそれに伴う症状の観察
- 血圧の異常、不整脈、心疾患、肺水腫、肺出血、脳浮腫などの有無
- 呼吸状態の観察
- 肺ラ音の有無、呼吸数・リズム、痰の量と性状、自己喀痰の可否、体動や処置によるSpO2の変動、呼吸苦など患者の自覚症状の有無
- 検査結果の確認
- 胸部レントゲン写真、動脈血ガス分析値、肺機能検査結果など
- 治療状況の把握
- 人工呼吸器の設定、酸素吸入の有無、去痰薬などの投与の有無、リハビリの介入や手術の有無
- 術後の疼痛の有無と程度の確認
アセスメント
- 体位ドレナージの必要性は理解できているか、協力する意思はあるか
- 体位ドレナージの必要性、行ってよいか患者の全身状態を評価し、適切な方法で行えたか
- 体位ドレナージ中~終了後にかけて、起きやすいリスクを把握し十分な観察を行い、異常の早期発見・対処に努めたか
- 安心して安楽な体位ドレナージが受けられるよう最大限の配慮を行ったか
- 体位ドレナージの効果を呼吸状態より確認し、その方法について適切に評価できたか
注意点
- 常に患者の顔色や訴えを把握し、異常の早期発見に努める
- 体位による低換気・気道閉塞から呼吸抑制を起こすリスク
- 循環動態変動のリスク
- 術後などは疼痛の増強のリスクなどがある
- 低頭位とする場合、不整脈、血圧の変動、呼吸困難の悪化、頭蓋内圧亢進症状などに注意する
- 人工呼吸器管理中の場合、気管内挿管・気管切開中のことが多く、体位変換時の抜管事故を防ぐため必ず2人以上の介助で行う
- 理学療法士によるリハビリが介入している場合は情報共有し、呼吸訓練や体位ドレナージの方法について統一したケアが行えるように連携する
体位ドレナージの禁忌
心不全、肺感染症、肺水腫、肺出血、重症不整脈、重症高血圧、脳浮腫など
※局所的な肺感染症のある患者の場合、体位ドレナージにより全肺野に感染が広がるリスクがある
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