咽頭炎患者への対応
咽頭炎患者への対応【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年7月16日
最終更新日:2013年7月16日
(変更日:2021年4月27日) ※
目的
疾患の概要
- 咽頭炎とは、主に細菌やウイルスなどの感染によって咽頭に炎症が生じたものであるが、化学物質の慢性的刺激あるいは火傷や外傷によるものもある
- 最も多い所見に咽頭発赤があるが、必ずしも強い発赤が伴う訳ではないため、咽頭粘膜表面の分泌増加や浮腫の観察が必要である
- 頸部リンパ節腫脹があることも多い
急性咽頭炎
- 罹患する頻度が高く、感冒、急性上気道炎によって生じる咽頭違和感や咽頭痛もこれに当てはまる
- 主症状として、咽頭発赤、咽頭痛などが見られるが、鼻閉、鼻汁増加などの鼻症状を併発する場合も少なくない
- 炎症が下咽頭に波及すると嚥下時痛も起こる
- 炎症が強い場合は、頭痛や発熱も伴う
- 様々なウイルスによって生じるが、ウイルス感染がきっかけとなって細菌の2次感染が起こり、炎症の遷延が起こることも多く、中でも化膿性溶連菌の場合は、飛沫感染によって激しい咽頭炎を起こす
- ほとんどの場合、原因ウイルスによって臨床所見が異なることはないため、原因になる病原体を臨床的に特定することは困難である
- 扁桃陰窩に付着する膿栓は細菌感染の疑いがある
- 潰瘍がある場合は、梅毒や結核が疑われるが、悪性腫瘍の可能性も視野に入れる
- 水疱性病変がある場合、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスの感染が疑われるが、多くの場合、水疱が破れ、浅くて小さな潰瘍ができる
- 咽頭帯状疱疹は片側にびらんや小水疱が認められ、顔面神経麻痺を合併する場合がある(ラムゼイ・ハント症候群)
- 著明な白血球数の低下が見られる急性白血病や無顆粒球症で急性咽頭炎の症状が見られる場合がある
- 通常、無顆粒球症は特発性に起こるが、解熱鎮痛薬、サルファ剤や抗生物質といった抗菌薬、クロルプロマジンのような向精神薬の副作用として発症することも多い
慢性咽頭炎
- 慢性咽頭炎は、ウイルスや細菌が遷延することはほとんどないが、咽頭において炎症や感染が続く病態である
- 慢性副鼻腔炎によって起こる鼻閉や後鼻漏による口呼吸が原因になり、常に咽頭刺激が起こった結果、慢性的に違和感や異物感、咽頭痛が起こりやすい
- 飲酒や長期間喫煙、刺激性ガスの吸入や慢性的な塵埃、アレルギーによっても起こる場合もある
- 特殊な咽頭炎 伝染性単核球症 EBウイルスが原因で起こり、唾液を通して伝染する
- 咽頭や扁桃、舌のリンパ組織の腫脹、あるいは頸部リンパ節の腫脹が見られ、咽頭や扁桃表面に偽膜が認められる
- 肝や脾臓の腫大があり、肝機能障害がみられ、血液検査では非典型的リンパ球や単球増加が見られる
結核
- 咽頭に結核病変が起こることは非常に少ないが、肺結核で喀痰に伴う排菌が多い場合に、2次的に痛みを伴った浅い潰瘍や咽頭あるいは喉頭に病変が生じる
梅毒
- 初期梅毒では感染後約3週間程度で硬結が生じ、潰瘍化が起こって硬性下疳になる
- 口唇、舌、扁桃が好発部位となる
- 2期梅毒の場合、通常は感染後約4~ 6週間程度で頭痛、咽頭痛、発熱、リンパ節腫脹、粘膜発赤が起こり、咽頭や扁桃に乳白色の斑点が出現し、咽頭においてはそれらが潰瘍化したり、融合する
- 3期梅毒では、約5~25年後にゴム腫が起きるのが特徴である
カンジダ症
- 何らかの原因で全身的あるいは局所的変化が生じ、病原性を持つようになる
- 糖尿病、エイズ、放射線照射などにより、白斑や白苔が見られる
咽頭STD
- 性行為によって直接性器の病原体(クラミジア、淋菌、梅毒のスピロヘータ・バリダ、単純ヘルペスウイルス、トラコーマチスなど)が咽頭や口腔に感染する場合がある
- これらの病原体はオーラルセックスがきっかけで、口腔や咽頭から性器へと伝播する場合もある
治療
薬物治療
- 急性咽頭炎はほとんどがウイルスによって起こるため、基本的に抗菌薬は使用せず、抗ヒスタミン薬(鼻汁抑制)や鎮痛解熱薬などによる対症療法を施行する
- 溶連菌による感染が疑われる場合、第1選択としてペニシリン系抗菌薬を用いる
- 伝染性単核球症の疑いや、ペニシリンにアレルギーがある場合は、セフェム系抗菌薬を使用する
- クラミジアの場合、セフェム系やペニシリン系の抗菌薬では効果がないため、マクロライド系かテトラサイクリン系の薬剤を使用する
- 結核の場合、抗結核薬の3者併用療法、梅毒の場合は、ペニシリン系薬剤の使用を第1選択とする
- 呼吸器のウイルス感染の場合は基本的に自然回復するので、抗ウイルス薬は使用しない
- 咽頭帯状疱疹の場合、アシクロビルの投与を行い、顔面神経麻痺がある場合は早い段階で副腎皮質ホルモンを使用する
- 含嗽やトローチの使用は2次感染を予防する働きはあるが、炎症や感染を抑制する働きはない
トローチに抗菌薬が含有されている場合、使用過多により、逆に真菌が増殖する恐れがあるので、用量を守って使用することが大切である
外科的治療
- 咽後膿瘍や扁桃周囲膿瘍のように膿瘍形成が認められる場合、切開にて排膿を行う必要性がある
- 口腔・咽頭領域で発生する膿瘍は嫌気性菌によって起こることが多いため、基本的に嫌気性菌に感受性がある抗菌薬を使用する
- 咽頭炎による脱水や食事摂取困難などで体力の消耗が激しい場合には、補液治療を施行する
観察項目
- 発熱の有無、程度
- 疼痛の有無と部位
- 水分・食事摂取量
- 咽頭所見
- 中耳炎症状の有無(乳幼児の場合)
アセスメント
- 咽頭炎の病態を理解し、適切な問診や観察が行えているか
- 咽頭炎に関連する疾患の既往歴・現病歴の聴取
- 咽頭炎以外にもみられる疾患の症状の把握
- 現在の患者の病態に合わせた指導が行えているか
- 乳幼児の場合は脱水などにも注意が必要
- 高齢者の場合は、平熱との比較も必要
- 慢性化している場合、生活習慣の改善が必要な場合もある
看護のポイント
- 乳幼児は疼痛を訴えることが不可能なため、水分や食事摂取量の低下の有無を注意して観察し、幼小児の場合は、中耳炎を合併している頻度が高いので、中耳炎症状にも注意する
- 発熱は個人差や炎症の程度によって様々であるが、特に高齢者の場合は平熱が低いだけではなく、高熱が出ないケースもあるため、検温の際は注意する
- 急性咽頭炎は飛沫感染によって発症するものが多いため、予防目的でマスクを着用することは効果的である
- 急性上気道炎の病原体として最も頻度が高いライノウイルスは家具類やドアの取っ手などに付着したものから手を介して感染するため、手洗いの励行にも努める
- 慢性咽頭炎の場合は、自律神経失調、精神的ストレス、更年期などの内分泌異常が関連している場合があるため、適宜、生活指導を行う
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