胃全摘術のポイント
胃全摘術のポイント【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年10月10日
最終更新日:2018年09月16日
(変更日:2018年12月10日) ※
目的
- 手術の流れを理解し、適切な器械操作および手術介助ができる
- 手術の経過を把握し、緊急の場合に備えることができる
手術の概要
- 病巣の切除および胃癌根治手術の目的で、リンパ節郭清を行う
- 胃癌根治術の場合は、脾臓を摘出し脾門部のリンパ節郭清を行う
- 消化管再建(吻合)は、術後の消化液の逆流を抑えることが重要となる
- 食道・空腸の切離、消化管再建には、自動吻合器を用いることが多い
- 腹腔鏡、腹腔鏡補助下でおこなわれる場合もある
術前評価と患者の特徴
術前評価
- 術前評価として、主に以下の検査を行う
- 血液検査:感染症の確認、肝機能・腎機能・凝固能・耐糖能・貧血や栄養状態の評価を行い、必要な場合は輸血や栄養状態の改善を図る
- 胃透視検査:病変の大きさや広がりを確認し、切除範囲を決定する
- 上部消化管の内視鏡検査:病変部の範囲や形状の確認の他、病理組織検査のために生検を行うことがある
- CTスキャン:多臓器への浸潤、遠隔転移、リンパ節転移について評価する
- その他:呼吸機能検査、胸腹部X線検査、負荷心電図など
患者の特徴
- 胃癌などの病巣が、胃の上部に存在するか、限局しない(広範囲にある)場合が適応となる
- 術前には経口摂取制限が行われているため、脱水・低栄養・電解質異常などをきたしていることがある
- 腫瘍からの出血がある場合は、貧血傾向になっている可能性がある
手術の流れ
- 患者入室後、モニター症着
- 側臥位となり、硬膜外麻酔を施行する
- 仰臥位に体位固定し、全身麻酔を開始
- 膀胱留置ドレーン挿入、直腸温計挿入
- 消毒、ドレーピング
- 執刀
- 開腹
- 大弯側・幽門上のリンパ節郭清、および血管処理を行う
- 胃と十二指腸の間を切離する
ここから消化再建が終了するまでは消化管の内側が表面に出ているため、不潔となる器械・清潔である器械をしっかり区別しておく
- 総肝動脈から脾動脈周囲までのリンパ節郭清、および血管処理を行う
※超音波凝固切開装置を使用する場合、組織損傷を起こす可能性があるため、ブレードが周囲組織に接しないように注意する - 噴門部小弯側のリンパ節郭清を行う
- 食道を切離する
※ここで検体が出るが、器械盤の上に保管しておくか、すぐに下す(外回り看護師が受け取る)のかを、医師に確認する - 脾臓・膵体尾部を脱転させる
※術野が深くなるため、間接介助看護師は無影灯をきちんと合わせる - 脾動静脈を結紮・切離する
- ルーワイ法による再建、空腸の切離
- 食道空腸吻合を行う
※空腸と食道を器械吻合した後、空腸断端は自動吻合器で閉鎖する - 空腸空腸吻合 を行う
※器械吻合であることが多い タバコ縫合器・自動縫合器・吻合器の使い方や替え刃の装着方法と、吻合方法を理解しておく
自動吻合器、自動縫合器はそれぞれの場面において複数回使用するため、使用する場面と器械を把握し、必要に応じて替刃の準備をしておく
- 腹腔内の洗浄、止血確認を行う
※温生食3,000mL程度を準備しておき、すぐに清潔野へ補充できるようにする - ガーゼカウント、器械カウントを行う
万が一、ガーゼ・器械・針・ドレーンの切れ端など、一つでもカウントが合わない場合は術者へ報告し、カウントが合うまで検索を行う
- ドレーン留置 ※ドレーンの留置本数およびドレーンの先端部位を術者へ確認し、病室看護師へ申し送る
- 閉腹 ※トータルでの出血量をカウントし、麻酔科医・術者へ報告する
- 閉創後、ドレッシング
- 麻酔覚醒
- 退室
看護のポイント
麻酔
- 全身麻酔
- 硬膜外麻酔
※抗凝固薬内服の既往あるなど、出血のリスクが高い患者の場合は、状況により判断される
体位
トラブルへの対応(器械出し看護師)
- 腸管吻合用の針糸の準備
※吻合が不十分な場合の補強、吻合器が使えない場合の手縫いに使用する - 止血用の器械や物品の準備
※脾臓周囲の操作時に予想外の出血することがある
トラブルへの対応(外回り看護師)
- 術中の徐脈や低血圧に注意する
※臓器の牽引により迷走神経反射や腹腔神経叢反射が出現することがある - 輸血の準備
※出血が多い場合の速やかな対応に備える - 自動吻合器の種類・サイズの確認・準備
※基本的に25mmを使用するが、21mmや手縫いの準備もしておく
術式変更の準備
- 術式変更時に備えて器械を準備しておく
※癌の浸潤により、肝臓・脾臓・横行結腸の合併切除が行われることがある
術後のドレーン管理
- 移動時にドレーンなどの付属物が抜去されないよう注意する
病室への申し送り事項
- 術式、トータルでの出血量、ドレーンの本数や留意部位など
- 麻酔方法、現在確保されている輸液ルートの本数および部位など
- 術中に使用した輸血や血液製剤など
- 麻酔中に起こったバイタルサインの変化や、それに対して使用した薬剤の量や最終使用時刻など
- 体位固定(仰臥位)による影響として、後頭部・仙骨部・踵部などの発赤、上腕部の過伸展などのトラブルの有無
本コンテンツの情報は看護師監修のもと、看護師の調査、知見、ページ公開時の情報などに基づき記述されたものですが、正確性や安全性を保証するものでもありません。
実際の治療やケアに際しては、必ず医師などにご確認下さい。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に関しては本記載内容とは対応が異なりますので、必ず各病院ごとに作成されている感染症ガイドラインに従ってください。
本コンテンツの情報により発生したトラブル、損害、不測の事態などについて、当社は一切の責任を負いかねますので、予めご了承いただきますようお願いいたします。
※コンテンツの日付け表記ついて「公開日…ページを公開した日」、「最終更新日…情報を更新した日」、「変更日…システムやデザインの変更を行った日」をそれぞれ指します。
「いまさら聞けない看護技術」の最新情報をチェックしよう
当サイトは、「あした仕事で使う知識を学べる」ナース専用のハウツーサイトです。
Facebook または Twitter で最新情報をチェックして、職場の同僚と差をつけよう!
Follow us!
ナース転職サイト おすすめ 3サイト
転職しようかな…と考えている看護師の方には、以下の転職支援サービスの利用がおすすめです。
-
看護roo!(カンゴルー)
● 累計利用者数50万人以上
● 求人数トップクラス
● 東証プライム市場上場企業
● 資格が活かせる病院以外の求人も豊富
公式サイト 口コミ・詳細 -
レバウェル看護(旧:看護のお仕事)
● 求人数トップクラス
● 累計利用者数は40万人突破!
● 病院求人多数
● がっつり働きたい人におすすめ
公式サイト 口コミ・詳細 -
マイナビ看護師
● CM多数!大手転職支援サービス
● 全国各地の求人をカバー
● ブランク・未経験OK求人が多い
公式サイト 口コミ・詳細
もっと詳しく知りたい方は、「ナースの転職サイト比較ランキング」をご覧になり、自分にあった転職サイトを探してみてください!
ナースハッピーライフを通じて転職支援サービスに登録いただくと、売上の一部がナースハッピーライフに還元されることがあり、看護技術の記事作成や運営費に充当することができます。応援お願いいたします。