低位前方切除術のポイント

低位前方切除術のポイント【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年10月11日
最終更新日:2018年09月16日
(変更日:2014年5月26日) ※

目的

  • 手術の流れを理解し、適切な器械操作および手術介助ができる
  • 手術の経過を把握し、緊急の場合に備えることができる

手術の概要

  • 下部直腸の病巣部を切除し、S状結腸の切離面と下部直腸の断端(肛門側)とを吻合する
  • 根治手術の目的で、D3リンパ節郭清を行う
  • 消化管再建には、自動吻合器を用いることが多い
  • 術野が深くなるため、持針器や鉗子類などは、長いものを準備しておく

術前評価と患者の特徴

術前評価

  • 術前評価として、主に以下の検査を行う
    • 血液検査:感染症の確認、肝機能・腎機能・凝固能・耐糖能・貧血や栄養状態の評価を行い、必要な場合は輸血や栄養状態の改善を図る
    • 注腸造影検査:病変の大きさや広がりを確認し、切除範囲を決定する
    • 下部消化管の内視鏡検査:病変部の範囲や形状の確認の他、病理組織検査のために生検を行うことがある
    • CTスキャン:多臓器への浸潤、遠隔転移、リンパ節転移について評価する
    • その他:呼吸機能検査、胸腹部X線検査、負荷心電図など

患者の特徴

  • 腫瘍下縁が直腸腹膜反転部以下にかかる直腸癌などに適応される
  • 術前には経口摂取制限が行われているため、脱水・低栄養・電解質異常などをきたしていることがある
  • 腫瘍からの出血がある場合は、貧血傾向になっている可能性がある

手術の流れ

  1. 患者入室後、モニター症着
  2. 側臥位となり、硬膜外麻酔を施行する
  3. 仰臥位に体位固定し、全身麻酔を開始
  4. 膀胱留置ドレーン挿入、直腸温計挿入
  5. 消毒、ドレーピング
  6. 執刀
  7. 開腹
  8. S状結腸から上部直腸にかけてを剥離する
    ※このあたりから術野が深くなるため、間接介助看護師は無影灯をきちんと合わせる
  9. 下腸間膜動静脈を切離する
  10. S状結腸と上部直腸間で切離する
  11. 下部直腸の遊離
  12. 下部直腸を切離し、直腸を切除する
    ※ここで検体が出るが、器械盤の上に保管しておくか、すぐに下す(外回り看護師 が受け取る)のかを、医師に確認する
  13. 腸間吻合
    吻合の方法としては、切離面同士を吻合する端々吻合となるが、器械吻合で行うことが多く、吻合時は肛門側からの吻合器挿入を行う
    タバコ縫合器・自動縫合器・吻合器の使い方や替え刃の交換方法と吻合方法を理解しておく
  14. 腹腔内の洗浄、止血確認を行う ※温生食3,000mL程度を準備しておき、すぐに清潔野へ補充できるようにする
  15. ガーゼカウント、器械カウントを行う
    万が一、ガーゼ・器械・針・ドレーンの切れ端など、一つでもカウントが合わない場合は術者へ報告し、カウントが合うまで検索を行う
  16. ドレーン留置
    ※ドレーンの留置本数およびドレーンの先端部位を術者へ確認し、病室看護師へ申し送る
  17. 閉腹
    ※トータルでの出血量をカウントし、麻酔科医・術者へ報告する
  18. 閉創後、ドレッシング
  19. 麻酔覚醒
  20. 退室

看護のポイント

麻酔

  • 全身麻酔
  • 硬膜外麻酔
    ※抗凝固薬内服の既往があるなど、出血のリスクが高い患者の場合は、状況により判断される

体位

  • 砕石位
    ※肛門側からの操作が必要となる場合が多いため、砕石位となる

トラブルへの対応(器械出し看護師)

  • 腸管吻合用の針糸の準備
    ※吻合が不十分な場合の補強、吻合器が使えない場合の手縫いに使用する

トラブルへの対応(外回り看護師)

  • 術中の徐脈や低血圧に注意する
    ※臓器の牽引により迷走神経反射や腹腔神経叢反射が出現することがある

術式変更の準備

  • 術式変更時に備えて器械を準備しておく
    ※癌の浸潤により、人工肛門造設他臓器合併切除が行われることがある

術後のドレーン管理

  • 移動時にドレーンなどの付属物が抜去されないよう注意する

病室への申し送り事項

  • 術式、トータルでの出血量、ドレーンの本数や留意部位など
  • 麻酔方法、現在確保されている輸液ルートの本数および部位など
  • 術中に使用した輸血や血液製剤など
  • 麻酔中に起こったバイタルサインの変化や、それに対して使用した薬剤の量や最終使用時刻など
  • 体位固定(砕石位)による影響として、後頭部・仙骨部・踵部などの発赤、上腕部の過伸展などのトラブルの有無
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