中心静脈カテーテル挿入の介助
中心静脈カテーテル挿入の介助【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年8月8日
最終更新日:2020年6月29日
(変更日:2020年7月3日) ※
目的
- CVC(中心静脈カテーテル)挿入時の必要物品と流れ、ケアのポイントについて理解し、ケアを行う
- 中心静脈カテーテルは集中管理などの治療を行う場合や、中心静脈栄養を行う際に必要となる
中心静脈栄養法とは
- 中心静脈とよばれる心臓近くの太い静脈へカテーテルを留置し、そこから高カロリーな輸液を投与する事である
- 生命維持や成長に必要なエネルギー、各栄養素を経静脈的に必要十分量投与する事が可能であり、栄養状態の維持・改善を目的として行われる
- 適応:消化管が利用不可能、または利用すると病態悪化が予測される場合(イレウス、穿孔性腹膜炎、炎症性腸疾患、消化管出血、短腸症候群など)
必要物品・準備
必要物品(内頸静脈穿刺の場合について)
- 聴診器、パルスオキシメーター、体温計、血圧計
- 処置用シーツ
- ディスポーザブルの手袋・マスク・エプロン・キャップ
- 滅菌ガウン、滅菌手袋
- 滅菌ドレープ、滅菌穴あきドレープ
- シリンジ(10ml、20ml)は必要本数準備
- 注射針(18G、23G)、必要時カテラン針
- 滅菌ガーゼ、綿球、鑷子
- 消毒薬(クロルヘキシジンアルコールまたはポビドンヨード)
- 生理食塩水(100ml)、輸液セット
- 生理食塩水(20ml)、リドカイン塩酸塩(局所麻酔薬)
- ヘパリンナトリウム
- 2‐0ナイロン糸、縫合セット
- 中心静脈カテーテル(挿入部位や体格などによりカテーテルのサイズ・長さを医師に確認)
- ドレッシング材、固定用テープ
- 超音波診断装置
- 点滴棒
施設毎にカテーテルキットに違いがある為、必要物品を揃える際に事前に確認しておく
準備
- 心静脈栄養法の適応、主な挿入部位と部位別の注意点や患者の状態を把握する挿入部位別の注意点
- 内頚静脈:穿刺が容易、カテーテル挿入距離が短く確実、頸部に穿刺するため固定が困難・外見が目立つ・意識のある患者には恐怖感がある
- 右鎖骨下静脈:カテーテル固定が容易、衣服に隠れ目立ちにくい、気胸を合併するリスクがある
※動脈誤穿刺による出血に注意が必要 - 大腿静脈:穿刺に伴う合併症が最も少ない、カテーテルの固定が困難、会陰部付近で汚染されやすい
※長期留置による静脈血栓を起こすリスクがある など
- 介助者の装備を整える
- 処置の前後で手洗い・うがいを行う
- 介助者はディスポーザブルの手袋・エプロン・マスクを着用する
- 処置の目的や方法についての説明内容を把握し、患者の理解・協力を得た上で、患者の準備・周囲の環境を整備する
- 具体的な方法について説明し不安の緩和に努める
- 同意書上の患者・家族の署名を確認する
- 処置に時間がかかるため、処置前に排泄を済ませてもらう
- 汚染防止用の処置用シーツを敷き、挿入部位に合わせて着衣をずらす
- 処置中は首を動かさないよう説明し、苦痛時の対応について決めておく
- 術野が不潔にならず処置がスムーズに行えるよう環境整備する
※無影灯のある処置室などが適している
- 医師が超音波検査で内頸静脈の位置・血流を確認する
- 水平仰臥位とする
※内頸静脈・鎖骨下静脈穿刺時は血管を怒張させるため、下肢拳上またはトレンデブルグ体位を取る
- 必要物品を配置する
- 滅菌四角布を広げた上(滅菌野)に、清潔操作で必要物品を配置する
方法
- 消毒を行い、滅菌状態を確保する
- 穿刺しやすいよう、顔を穿刺部とは逆に向けてもらう
- 医師が穴あき滅菌ドレープを患者にかける
- 滅菌操作で行うため、滅菌ガウン、メディカルキャップ、滅菌手袋、マスクを着用する(高度バリアプレコーション)
- 医師がカテーテルを挿入する
- 穿刺中は処置ごとに患者に声掛けしながら不安の緩和に努め、状態の観察を行う
- 医師にシリンジ、針を渡す※無菌操作で行う
- シリンジに触れないよう開封する
- 看護師は局所麻酔のアンプルを持ち、医師が吸いやすい様角度を調整する
- 医師が局所麻酔を行い、穿刺を行う
- 最初に試験穿刺を行う
- 静脈からの血液逆流を確認後、本穿刺を行う
- 穿刺針の外筒にカテーテルを挿入し、外筒をピールオフする
- カテーテルからの静脈血逆流を確認後、カテーテル内の凝固防止のためヘパリン生理食塩液を注入する
カテーテル挿入の処置中は以下の合併症に注意し、呼吸状態を含めたバイタルサインや患者の訴えに注意する
- 静脈穿刺時の副損傷によるもの:気胸、血管損傷、血胸、動脈穿刺、皮下気腫、腕神経叢損傷、胸管損傷、皮下血腫
- カテーテル挿入時の合併症:空気塞栓、カテーテル塞栓、敗血症、血栓症
- 穿刺の刺激により不整脈が出現する場合があり、心電図モニターの波形の変化に注意する
動脈穿刺をした場合
- 垂直方向に穿刺針を抜去後、5~10分圧迫止血する
- ダイレーターを挿入した場合、ダイレーターを抜去後20~30分圧迫止血し、圧迫固定する
- バイタルサインの変動に注意し、止血に成功しても仮性動脈瘤形成のリスクがあるため継続的に観察する
- 縫合固定する
- カテーテルを皮膚に縫合、固定する
- 穿刺静脈部位、挿入の長さ、何針縫合したかを確認し記録する
※X線検査にて先端部の位置が確認できるまで、カテーテル内の凝固に留意する
- カテーテルの挿入位置確認
- X線検査により、カテーテルの先端が正しい位置(内頸静脈の場合、右心房付近の上大静脈)に挿入されていることを確認する
※頭側への迷入の有無、気胸の有無など - カテーテル位置を確認後、指示された輸液を滴下する
- ルートを固定する
- 輸液ライン、カテーテルをドレッシング材で保護し、固定用テープで保護する
- 離れたルート(延長ルートフィルター付き)を固定用テープで固定し、衣服より出たルートはループを作り衣服に固定する
- 出血がある場合、はがれやすいためガーゼを使用する
観察項目
- 患者の基礎疾患の把握、アレルギーの有無
- 患者の理解度、安静度、ADL
- バイタルサインの変動
- 呼吸状態の変動の有無
※呼吸数、呼吸音・リズム、息苦しさ、チアノーゼ、皮下気腫など - 挿入部位、挿入の長さ、縫合固定部の確認
- 検査結果の確認(X線検査、血液検査)、水分出納量の把握
- ルートの接続状況
※挿入部の保護フィルムの状態、ルート内への血液逆流・空気混入の有無、フィルターの変色、ルートの交換日、ルートの緩み・ねじれ・屈曲の有無など
アセスメント
- 処置前の患者・医療者の準備は適切に行えたか
- 処置中の患者の苦痛を最小限に留めるよう配慮し、不安の緩和に努めたか
- 処置中~終了後の合併症の出現に注意し、異常の早期発見・対処に努めたか
- 処置は滅菌操作で行われるため適切に介助を行い、感染予防に努めたか
- カテーテル留置中は合併症に注意し、適切な管理が行えたか
注意点
- 挿入に対する危険因子の有無を事前に把握しておく
※出血傾向、抗凝固療法中、項部硬直、放射線療法中、肥満、6歳以下、穿刺部位の腫脹・腫瘤、頸部・胸部の手術歴ありなどは注意が必要 - 穿刺部位により観察するポイントが異なるため注意する
- 生理食塩液またはヘパリン生理食塩液でルートフラッシュを行う場合、患者によっては血管内に血栓形成している事がありフラッシュにより血栓を飛ばすリスクがあるため注意が必要である
- 挿入準備~挿入後3日間は、合併症を起こすリスクが高いため、チェックリストなどを用いて確実な観察を行い、異常の早期発見・対処に努める
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