目的
- 結腸癌患者に適切なケアを提供する
疾患の概要
- 結腸とは盲腸・上行結腸・下行結腸・横行結腸・S状結腸を総称したものであり、直腸と結腸を合わせて大腸という
- 結腸の機能は、主として小腸から送られた腸液から水分の再吸収を行っている
- 大腸癌とは粘膜上皮細胞に生じる直腸癌と結腸癌を含んだ悪性の腫瘍であり、好発部位はS状結腸と直腸である
- 結腸癌のうち約3割は遺伝的との関係性が疑われており、濃厚な遺伝性が認められるが、大多数は後天的に遺伝子変異が蓄積し発生すると考えられている
- 癌の発生要因としては肥満や高脂肪・低繊維の食事が関係していることがわかっている
症状
- 便秘、血便、腹痛などがある
- 癌が進行し、内腔が狭窄してくると腸管内のガスや便が通過しにくい状態になるため、便の形状が細くなったり、腹部膨満の症状が認められる
- 上行結腸や盲腸に腫瘍が発生した場合は、便が通過しやすい状態になっているため、無症状のことが多く、既に進行した状態で発見されることも多い
診断
- 大腸内視鏡検査か注腸検査が推奨されるが、注腸検査よりも内視鏡検査の方が、ポリープ切除や生検検査などをすぐに行える点で優れている
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR)後の追加切除や早期癌などで腹腔鏡下手術を施行する可能性が高い場合は、内視鏡検査を行う時にマーキングを施行し、検査直後に腹部レントゲンの撮影を行う
- 進行すると肺や肝臓、肺腸管周囲のリンパ節などにも転移するためCTを施行する
- MRIは鋭敏に小さな肝転移を描出できる
- PET-CT検査は、腫瘍の大きさが10mm程度あれば描出できるため、腹膜播種などの診断が可能である
治療
外科的治療
- 基本的に根治切除が可能な場合には切除術を施行する
- 早期癌で深達度が粘膜下層もしくは粘膜層に軽度浸潤している場合、リンパ節転移の可能性はほとんどないため、内視鏡下切除が推奨される
- 有茎性ポリープに対しては、切除(ポリペクトミー)を行う
- 亜有茎性・無茎性ポリープに対しては、生理食塩水などを粘膜下層に注入して膨隆させた後にEMRを施行する
- 粘膜下層深部への浸潤がある場合、癌とリンパ節とを共に切除する
- 近年、術後の痛みが少なく、手術創も小さい腹腔鏡手術が普及しつつある。腹腔鏡手術では術後の経口摂取の開始や離床を開腹手術よりも早期に開始することが可能であり、術後の早期回復・早期退院が可能となる
- 癌性腹膜炎や腫瘍の進行によって腸閉塞を起こした場合、バイパス手術や人工肛門の造設を施行することで経口摂取が可能となる場合がある
- 出血などの症状が見られている場合は腫瘍だけを切除する場合もあるが、既に進行癌であることが多い
- 患者の栄養状態、体力、ヘモグロビンやアルブミンなどの検査値、予後などを考慮したうえで手術を検討する
- 根治切除はできないが、随伴症状が特に見られない場合、化学療法を施行する
- 基本的な抗癌剤はロイコボリン、5‐FUであり、イリノテカンを併用するレジメン(FOLFIRI)やオキサリプラチンを併用するレジメン(FOLFOX)が一般的である
看護のポイント
- 人工肛門は直腸癌の手術などの場合に増設され、術後は人工肛門の陥没、便が漏れることによる皮膚障害が起こりやすいため、十分な観察と処置が必要である
- 人工肛門増設は患者にとっても見た目が大きく変わるため、精神面でのサポートや、家族へのサポートも必要となる