腰椎麻酔の介助
腰椎麻酔の介助【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年9月15日
最終更新日:2020年6月29日
(変更日:2020年7月3日) ※
目的
腰椎麻酔の概要
- 腰椎麻酔は、くも膜下腔の局所麻酔薬を注入することによって麻酔効果を得る麻酔法である
メリット
- 全身麻酔や硬膜外麻酔に比べ手技が簡単であり、分節麻酔ができる
- 短時間で確実な麻酔の効果を得られる
- 手術部位において十分な筋弛緩が得られる
- 麻酔薬の投与量が少ない
- 術後の鎮痛に利用できるできるため術後管理が容易となる
- 患者は意識を保つことができる
- 患者の手術によるストレス反応を抑えることができる
- 経済的である
デメリット
- 手術範囲は横隔膜以下となる
- 麻酔高が高くなると呼吸抑制がある
- 一回注入法のため長時間の手術には不適であり、調節性が少ない
- 神経学的な合併症がある
禁忌
- 同意、協力が得られない場合
- 出血傾向や出血素因のある場合
- 神経疾患のある場合
- 穿刺部位の炎症や、脊椎の解剖学的変性ある場合
- ショック状態にある、あるいは循環血液量が高度に減少している場合
副作用と合併症
- 全脊椎くも膜下麻酔
- 血圧低下、呼吸抑制
- 悪心・嘔吐、脊髄くも膜下麻酔後頭痛
- 髄膜炎
- 複視などの脳神経麻痺
- 疼痛、下半身の知覚異常、運動神経麻痺、膀胱直腸障害などの脊髄神経麻痺
必要物品
- 攝子
- 消毒用綿球
- 消毒液
- 穴あきドレープ
- シリンジ(局所麻酔用・脊髄くも膜下麻酔注入用)
- 注射針(局所麻酔針、脊髄くも膜下麻酔薬吸い上げ用)
- 局所麻酔薬
- 脊髄くも膜下麻酔薬
- 穿刺針
- 固定用テープ
- 滅菌手袋
- マーキング用ペン
方法
- 穿刺体位の確保、固定
- 患者に側臥位となってもらう(側臥位が困難な患者の場合は体位は異なるので事前に確認する)
- 患者へ両膝、両股を曲げ、顎を引き、顔はお臍のあたりを見る体勢へと促す
- 脊柱がまっすぐになるように枕などで調節する
- 手術台と脊柱が水平、背面は手術台と垂直にする
- 患者の背部をベットの端までよせる
- 介助者は患者の頭と下半身を保持する
- ベットの高さを麻酔科医師の指示の位置に合わせる
- 医師による穿刺部位のマーキング
- 患者から見えない位置での処置になるため、処置の手順を説明し、不安の軽減に努める。
- 医師による穿刺部位の消毒、ドレーピング
- ドレープの位置がずれないように注意する
- 消毒液は温蔵庫で温めておく
- 薬剤の準備穿刺部位への局所麻酔
- 局所浸潤麻酔薬と脊髄くも膜下麻酔用の局所麻酔薬を麻酔科医に渡す
- 薬剤はラベルを麻酔科医に見えるように向け、口頭でも薬品名を告げる
- くも膜下腔への穿刺、確認
- 穿刺針の先がくも膜下腔に到達すると、脊髄液(無色透明)を認める
- 体動を防ぐため、穿刺の針が神経の近位にふれると、しびれや神経刺激症状痛みがあることを説明し、協力を得られるようにする
- 薬剤の注入、穿刺部の保護、体位変換
- 薬液が注入されたら、時間経過で麻酔判定を行うため、注入時間を確認しタイマーをONにする。
- 穿刺針は抜去された穿刺部位はテープを貼り保護する。
- 麻酔効果の出現が早いため、血圧などバイタルサインの変動に注意する。
- 局所麻酔の比重によって麻酔高を調整する場合は、すぐに体位を戻さず、側臥位のまましばらく様子を見ることがある
- 体位を戻すときは、麻酔効果が出現しているため、複数名で介助する。
- 麻酔効果の判定と、麻酔高の調整
- アルコール綿などにて冷覚判定、もしくはピンプリック法にて鈍針など先のとがったもので圧痛を確認する
- 注入後約5分は麻酔高の確認を頻回に行う
- 予定麻酔高を得るために、体位・ローテーションなどで調整する
- 注入後約10分で麻酔高は最高に近づき、約20分で最高に達するとされている
- 注入後約30分は麻酔高が変動し、以降も変動の可能性がある
麻酔高が不足する場合:
高比重麻酔薬使用時 → 頭低位とする
低比重(等比重)麻酔薬使用時 → 頭高位とする
麻酔高が広すぎる場合:
高比重麻酔薬使用時 → 頭高位とする
低比重(等比重)麻酔薬使用時 → 頭低位とする
注意点
- 麻酔が効いている場合は血管が拡張し温かいが、効いていない場合、代償的に血管が収縮して体温が低下し、寒さを感じやすくなるため、保温に留意し、必要であれば加温する
- 脊髄くも膜下麻酔の合併症である血圧低下は局所麻酔注入後15分から20分以内に発生することが多いので、バイタルサイン変化に注意する
- 局所麻酔薬注入後、5分程度で血圧低下などの副作用が出現しやすいため、特に注意する
- 麻酔高が十分で、全身状態が安定すれば手術準備にうつる
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