目的
- 手術の流れを理解し、適切な器械操作および手術介助ができる
- 手術の経過を把握し、緊急の場合に備えることができる
手術の概要
- 腹腔内に炭酸ガスを注入して腹腔内を広げ(気腹)、腹腔鏡を挿入して腹腔内の様子をテレビモニターに映しながら行う手術である
- 利点として、傷が小さく、術後の疼痛が少なく、術後の回復が早い傾向にある
- 欠点として、開腹手術より視野が狭く、炭酸ガスでの気腹による合併症のリスクがある
- 外科では、胆石症・胃癌・大腸癌・虫垂炎などが適応
- 婦人科では、良性卵巣腫瘍などが適応
- 手術によっては、途中から5cm程度開腹し用手的に吻合や腫瘍摘出を行うことがある
- 超音波凝固切開装置や内視鏡用自動縫合器を使用することがある
術前評価と患者の特徴
術前評価
- 術前評価として、開腹手術の場合と同様に以下の検査を行う
- 血液検査:感染症の確認、肝機能・腎機能・凝固能・耐糖能・貧血や栄養状態の評価を行い、必要な場合は輸血や栄養状態の改善を図る
- CTスキャン:多臓器への浸潤、遠隔転移、リンパ節転移について評価する
- その他:呼吸機能検査、胸腹部X線検査、負荷心電図、それぞれの疾患に応じた検査など
患者の特徴
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術後に、気腹のためのや横隔膜挙上による無気肺がおこることがある
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肥満により内臓脂肪が多い場合は、手術が難航する場合がある
手術の流れ
- 患者入室後、モニター症着
- 側臥位となり、硬膜外麻酔を施行する
- 仰臥位に体位固定し、全身麻酔を開始
- 膀胱留置ドレーン挿入、直腸温計挿入
- 消毒、ドレーピング
- さまざまなコードや気腹チューブなどが術野からおりてくるので、外回り看護師がテレビモニターや気腹装置などにつなぐ
- 執刀
- 1本目のトロッカーの挿入・固定
- 気腹開始
- 2本目以降のトロッカーの挿入・固定
- カメラで腹腔内を見ながら、ベッドをローテーションし良好な視野を得られるよう調整する
- それぞれの術式による手順を実施
- 腹腔内の洗浄、止血確認を行う
- ガーゼカウント、器械カウントを行う 万が一、ガーゼ・器械・針・ドレーンの切れ端など、一つでもカウントが合わない場合は術者へ報告し、カウントが合うまで検索を行う
- ドレーン留置
※ドレーンの留置本数およびドレーンの先端部位を術者へ確認し、病室看護師へ申し送る - 閉腹
※トータルでの出血量をカウントし、麻酔科医・術者へ報告する - 閉創後、ドレッシング
- 麻酔覚醒
- 退室
看護のポイント
麻酔
- 全身麻酔(気管内挿管)
- 硬膜外麻酔
※抗凝固薬内服の既往なあるなど、出血のリスクが高い患者の場合は、状況により判断される
体位
- 仰臥位や砕石位など疾患により異なる
- テレビモニターの配置やローテーションできるベッドの選択を考慮する
トラブルへの対応(器械出し看護師)
- 出血や癒着による急な開腹手術への変更に備えておく
トラブルへの対応(外回り看護師)
- 術中トラブルによる開腹は、出血によることが多いため、開腹手術の器械や物品の準備をしておき、緊急時にスムーズに開腹へ移行できるようにする
- 気腹による高CO2血症や横隔膜挙上、気道内圧上昇に注意する
術式変更の準備
- それぞれの疾患の術式変更時に備えて器械を準備しておく
術後のドレーン管理
- 移動時にドレーンなどの付属物が抜去されないよう注意する
病室への申し送り事項
- 術式、トータルでの出血量、ドレーンの本数や留意部位など
- 麻酔方法、現在確保されている輸液ルートの本数および部位など
- 術中に使用した輸血や血液製剤など
- 麻酔中に起こったバイタルサインの変化や、それに対して使用した薬剤の量や最終使用時刻など
- 気腹による合併症の状況や今後観察しうる可能性など