腹腔穿刺
腹腔穿刺【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年8月27日
最終更新日:2020年07月25日
(変更日:2020年8月4日) ※
目的
- 腹腔穿刺の必要物品、ケアの流れやポイントについて理解する
- 患者が安全・安楽に腹腔穿刺を受けられるように援助する
腹腔穿刺とは
- 腹腔内の体液貯留を経皮的に穿刺することである
- 目的
- 治療:腹水の排除、膿瘍ドレナージ、薬剤の注入
- 検査:腹腔内貯留液の有無を確認する
必要物品・準備
必要物品
- 排液カップ
- 消毒液、綿球
- ディスポーザブル手袋・エプロン・マスク、メディカルキャップ、滅菌ガウン
- 処置用シーツ、バスタオル、安楽枕(必要時)
- 鑷子
- 滅菌手袋、穴あき滅菌ドレープ
- リドカイン塩酸塩、シリンジ(10ml)、注射針(23G)
- アスピレーションキット(穿刺針・シリンジ・三方活栓・カテーテルなどがセットになったセットであり、無い場合はこれらを個別に準備する)
- 検体容器
- 固定用テープ、延長チューブ
- フィルムドレッシング材
- 超音波診断装置
準備
- 介助者の装備を整え、患者の状態を整える
- 介助者は、手指衛生を行いディスポーザブル手袋・エプロン・マスクを装着する
- 処置は患者にとって苦痛を伴うため、医師からの説明内容を確認し、同意・協力を得る(処置の同意書に患者・家族の署名があるか確認)
- 処置が長くなるため、事前にトイレを済ませておくよう説明する
- 除水中はルート・排液カップがつながり、行動が制限される事を事前に説明しておく
- 体位は仰臥位とする
- 穿刺部位によっては座位・側臥位で行う事があり、安楽枕で調整する
- バスタオルなどを用いて、不必要な部分の露出は避ける
- 医師が超音波検査で穿刺部位を決定する
- 穿刺部位:臍と左右上前超骨棘を結ぶ直線上の外側1/3の部位(腹直筋外側)
- 腹直筋を避けることにより腹壁動静脈の損傷を防止できる
- 腹水は側腹部から貯留しやすいため効果的に穿刺できる
- 穿刺部位を油性マジックで印をつけ、超音波で使用したジェルをタオルで拭き取る
方法
- 消毒する
- 消毒薬を綿球カップに注ぎ、鑷子と共に医師に渡す
- 処置野確保のため、穿刺部位を中心に広めに消毒する
- 処置部位の清潔を確保する
- 医師はマスク・キャップ・滅菌ガウン、滅菌手袋を装着する
- 医師へ物品を渡すときは、滅菌操作で行う
- 穴あきドレープを開封後医師へ渡し、処置部位の清潔を確保する
- 医師が局所麻酔を行う
- シリンジを開封し、医師へ渡す
- リドカイン塩酸塩のアンプルをカットし、医師に再確認してもらい、医師が注射筒で吸いやすいようアンプルを傾ける
- 23G注射針を医師へ渡し、穿刺部周辺に局所麻酔を行う
- 穿刺する
- アスピレーションキットを開封し、医師の届きやすい場所へ配置する
- 医師が穿刺針で穿刺し、シリンジで吸引し腹水を確認後、穿刺部と周辺皮膚を縫合糸で固定する
- 医師が穴あきドレープを除去する
- 刺入部を固定し、保護する
- 挿入部はガーゼ保護またはフィルムドレッシング材で保護、ルートはテープ固定する
- 保護材は排液量の漏れ具合に応じて選択する
- 刺入部のわき漏れが多い:ガーゼ保護し、適宜交換
- 刺入部のわき漏れが少ない:フィルムドレッシング材保護
- 除水する
- 医師の指示で除水ルートを接続し、排液カップを設置する
- 指定の速度・指定量の除水を行う
- 除水終了後は、安楽に過ごせるようルート部をガーゼ保護するなど工夫する
※穿刺部は側腹部からやや後方に留置されることが多いため
穿刺時の観察ポイント
- 疼痛・苦痛の有無の確認
- 呼吸状態の変動(息苦しさ、SpO2の変動)
- バイタルサインの変動
除水中は血圧低下に注意する
- 腹腔内圧が腹水貯留による圧迫で上昇、除水により急に減少し静脈圧が低下し起こる
- 短時間の除水は避け、排液速度に注意する(最高で30分に500mlまで)
- 頻回に血圧測定を行い、状態に注意する
観察項目
- 患者の基礎疾患とそれに伴う症状の観察(腹水の有無と程度、出血傾向の有無)
- バイタルサインの変動(血圧低下、頻脈など)
- 疼痛・苦痛の有無の確認
- 呼吸状態の変動(息苦しさ、SpO2の変動)
- 除水時の指定の速度・量の把握、水分出納量の確認
- 排液の量・性状、色の観察
- 感染徴候の有無の観察
- 刺入部の状態観察(固定状況、周囲の皮膚状態、わき漏れの有無、出血の有無)
- ルートの接続状況(閉塞や屈曲の有無)
- 検査結果の把握(超音波、血液検査、検体検査)
- 患者への病状説明とその内容、患者・家族の受け止めの状況確認
アセスメント
- 患者にとって苦痛を伴う処置のため、十分な説明を行い同意・協力が得られたか
- 処置中は患者の苦痛を最小限に留め、十分な観察を行い合併症予防に努めたか
- 清潔・滅菌操作で介助を行い、感染予防に努めたか
- 腹水の肉眼的所見・検査結果より、正常より逸脱している場合は原因検索を行えたか
- 血性:癌性腹膜炎、腹腔内出血
- 膿性:癌性腹膜炎、細菌性腹膜炎
- 乳び性:リンパ瘻
- 胆汁様:胆汁瘻
- 粘液性、ゼリー状:腹膜偽粘液種
注意点
- 除水後は水分・電解質バランスが崩れるため、除水前~終了後まで十分な観察が必要である
- 長期的な除水を行っている場合、アルブミン低下による浮腫に注意し観察を行う
- 排液が出ない場合の対応
- 体位により流出量が変化しやすく、調整する
- 閉塞の有無を確認する
※腹水に含まれるフィブリン繊維により閉塞しやすい - 医師へ報告し、必要に応じて医師がシリンジで吸引する
- 除水中に患者がトイレに行きたいと訴えがあった場合、ベッドから離れる際、一度除水を中止する
本コンテンツの情報は看護師監修のもと、看護師の調査、知見、ページ公開時の情報などに基づき記述されたものですが、正確性や安全性を保証するものでもありません。
実際の治療やケアに際しては、必ず医師などにご確認下さい。
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