目的
- 脳浮腫により治療を受ける患者のケアのポイントについて理解する
- 頭蓋内圧亢進、脳ヘルニアへの移行を防ぐ
疾患の概要
脳浮腫とは
- 脳組織の水分量が増加し、容積が増大している状態をいう
- 通常の浮腫は細胞間質に水分が貯留するが、脳浮腫は細胞間質と細胞自体にも貯留する
発生機序による分類
血管性浮腫の頻度が最も高いが、実際には様々な原因が複合して浮腫が発生している
血管性脳浮腫
- 血液脳関門の破綻が起き、浸透圧勾配により血漿中の成分が間質に流出して起こる(脳腫瘍、脳出血、脳挫傷、脳虚血)
間質性脳浮腫
- 脳室内の髄液の過剰な貯留により、間質に漏出して起きる(水頭症)
細胞毒性脳浮腫
- イオンポンプ障害により細胞成分が蓄積、浸透圧勾配により間質内の水分が細胞内に流入して起こる(脳虚血の急性期、低酸素血症、中毒、尿毒症、肝性昏睡)
検査・診断
- 頭蓋内圧亢進が疑われた場合、CTで原因検索を行い、状況に応じて頭蓋内圧を測定し確定診断を行う
- CT所見:低吸収域となる
- そのほか、必要に応じてMRIやPET、頭部X線検査、眼底検査を行う
- MRI所見:T1強調像で低信号、T2強調像で高信号、FLAIR像で著名な高信号となる
治療
外科的治療を行う場合でも、施術までの待機の間、抗浮腫薬の使用など内科的治療を先行する
内科的治療(降圧療法)
- 全身管理:呼吸・輸液管理、頭部20~30度拳上
- 抗浮腫薬の使用:脳浮腫の改善、頭蓋内圧を低下させる
- 浸透圧利尿薬:中等度の頭蓋内圧亢進に適応
- ステロイド剤:脳腫瘍に伴う脳浮腫に適応
- バルビツレート療法:脳代謝低下と脳血管収縮を図り、高度の頭蓋内圧亢進に使用
- 低体温療法:体温32~34度で脳代謝を低下させ脳血流量を減少させる
※他手段で不可能なケースや重症頭部外傷・脳梗塞の一部に適応
外科的治療(根治的治療)
- 脳室穿刺・ドレナージ、V-Pシャント:頭蓋内に貯留した髄液の排出、髄液循環障害に適応
- 外減圧術:頭蓋骨を開放し圧を外部へ逃がす、びまん性脳腫脹や脳梗塞が適応
- 内減圧術:壊死組織を除去する、適応は外減圧に同じ
- 腫瘍摘出術、血腫摘出術:血腫・腫瘍などに適応
観察項目
- 患者の基礎疾患、意識レベルや神経症状の観察
- バイタルサイン、呼吸状態の観察、水分出納チェック
- 症状の有無の確認(頭痛、悪心・嘔吐、視力障害、片麻痺など)
- 検査結果の確認(CT・MRI画像、頭部X線検査、眼底検査、頭蓋内圧測定など)
- 治療方針と説明内容、患者・家族の受け止めの状況把握
- 治療の効果・副作用の出現の確認
アセスメント
- 頭蓋内圧亢進、脳ヘルニアへの移行を予防し、異常の早期発見・対処に努めたか
- 治療に伴う合併症を把握し、予防に努めたか
合併症予防
- 異常の早期発見・対処に努め、頭蓋内圧亢進、脳ヘルニアへの移行を予防する
- 内科的治療に伴う以下の合併症に注意する
- 浸透圧利尿薬:脱水・心拍出量低下
- ステロイド剤:易感染、糖尿病誘発
- バルビツレート療法:呼吸抑制、血圧低下、意識レベル低下
- 低体温療法:易感染、血小板・カリウム減少、心肺機能低下
- 外科的治療に伴う感染・出血など侵襲性合併症を予防する
注意点
- 脳浮腫を起こすと頭蓋内圧亢進を来たし、脳ヘルニアを起こすリスクがあるため注意が必要である
- 脳腫脹とは病態が異なるため注意する(脳血液量の増大により脳容積が増大した状態)