看護師として、仕事のときに人と接する機会のない人はいないのではないでしょうか。看護師や医師、他の医療スタッフ、患者さんなど、必ず誰かしらと接すると思います。それにもかかわらずコミュニケーションが苦手な看護師さんも多いのではないでしょうか。
今回はそんな看護師さんのために、コミュニケーションをスムーズに行うためのコツをご紹介します。
コミュニケーションが必要な場面とありがちな失敗例
ではまず、ありがちな“失敗”をみてみましょう。
新人Aさんのエピソード
新人のAさんは、O先生がちょっと苦手。上から目線の言葉を言われるし、いつも何だか難しい顔をしています。
あるAさんが夜勤の日に、O先生も当直でした。その日は5つ先輩のMさんと一緒の夜勤でしたが、M先輩とO先生はたまに冗談もいいながら普通に会話しています。
夜勤帯になってO先生が病棟へやってきて患者さんたちのカルテに記録を始めました。夜の検温にいくと、熱発している患者さんがいます。しかしカルテには熱発時の指示がなく、O先生に指示を出してもらわなくてはいけません。
話しかけたいけど中々話かけられずもじもじしていると、M先輩が記録を見てO先生に指示を仰ぎました。坐薬を使うことで対処できましたが、M先輩からは「患者さんは辛いんだし、もっと早く指示を貰ってね」といわれてしまいました。
クリニック勤務のCさんのエピソード
クリニックに勤めはじめたCさんは、なぜか上司であるSさんから冷たくあしらわれています。
Cさんはココに就職する前は7年ほどブランクがありますが、その前は大学病院の整形外科病棟に勤務していました。どうやらSさんは「大学卒、大学病院勤務」というあたりが気に入らないようです。
ところがクリニックは同じ整形外科でも、手の外科専門。外来手術もあるし、使用する器械も病棟では見たことのないモノばかり。それでも看護師は3人しかいないのに、一番の古株であるSさんは、あまり細かいことを教えてくれません。
聞いても「自分で調べれば?」「あの病院にいたんだから分かるでしょ?」といわれてしまいます。入職して3ヶ月ですが、すでに辞めたくなっています。
では、どう対処すればいいのか
それぞれの場面で、相手はどんな気持ちなのか、相手に対してどんな姿勢で対処すべきなのか
まずAさんのケースをみてみましょう
O先生が上から目線なのは、まぁ性格ですし、今さらどうにもなりません。でもM先輩のように普通に会話できる人もいるのです。いつも難しい顔をしているのは、その人の個性かもしれません。
Aさんが感じる“O先生の話かけにくいところ”は、Aさんにとってだけなのでしょうか。だとしたら、O先生はAさんに対して、何か気に入らないことがあるはず。Aさんが気付かないうちに、O先生を怒らせる何かをしているのかもしれません。
しかし誰に対しても同じ態度ならば、それはもうO先生の個性(良くはないですけどね)と考え、ごく普通に話しかければ良いのです。M先輩の様子をよく観察してみて、自分とどう違うのか比べてみると分かりやすいでしょう。
次にCさんのケース
このケースではクリニックになっていますが、病棟でも良くあることかもしれません(多いのもどうかと思いますが)。
この場合、CさんがSさんに嫌われている理由は明確ですが、だからといって今さらどうなるものでもありません。でも仕事を続ける上では、Sさんとのコミュニケーションは必須です。ここはCさんが下出に出て、必要なことは教えてもらわなくてはなりません。
もう一人の看護師に聞く、という手もありますが、この場合のCさんは、このクリニックでの生き字引のような人です。それをさしおいてもう1人の看護師に聞くのは、Sさんの機嫌(関係)を、さらに悪くする可能性もありますよね。
コミュニケーションを円滑にするコツ
コツ1:相手がどういう人物であるか、その時の状況はどうか、その時の相手の機嫌はどうかを見極めて、伝える言葉を工夫する
例えばAさんの場合、熱発時の指示が欲しいことを素直に伝えますが、言葉は少し違うものを心の中に準備しておきます。
- いつもにも増して機嫌が悪そうに見える時:「忙しいところすいません」と、先に申し訳ないけど…という言葉を付ける
- いつもより機嫌が良さそうに見える時:「先生、○○さんの熱発時の指示がないのですが、39度ありますので指示を下さい」と明瞭簡潔に要件を伝える
他にも、少し待てる状況であれば「お手すきの時にお願します」とか、もっと手っ取り早く「○○さんが39度ありますが、何を使えば良いですか」という聞き方もあります。
コツ2:はっきりと大きな声で話かける
人はボソボソ聞こえる言葉に、不快に感じることはあっても、好感を持つことは少ないでしょう。耳元で囁く愛の言葉ではないのですから、はっきりと正確に要件を伝える必要があります。
人によってはかなり難しく感じるかもしれませんが、実は一番大事なことかもしれません。
コツ3:教えてばかりではなく、自分自身もある程度は情報を仕入れておく
何でも“教えて”や“お願い”するのではなく、自分自身もある程度は情報を集め、これで良いか?という聞き方をした方が良いこともあります。
例えばCさんの場合、全てを教えてもらうのではなく、「これは□□ですか?」という聞き方をすれば良いこともあります。
またAさんの場合、カルテを遡れば、以前の熱発時の指示があるかもしれませんし、病棟内での何となくのルールがあることもあります。それを調べてある程度答えを予測して聞く場合と、全く予備知識が無くて聞く場合では、自然と聞き方も違ってきます。
「こいつはデキない」と思われるか、「まぁ努力は認める」となるかは、アナタ次第です。
おわりに
相手が、同じ病棟のスタッフ間なのか、上司なのか、医師なのかによって、少しずつ言い回しを変えるだけでも、上手くコミュニケーションが取れることもあります。
でも一番の基本は「自分が答えに困る聞き方はしないこと」です。また、話かける相手にふさわしい言葉使いもあります。
看護師は多くの人とのコミュニケーション能力が問われる仕事です。相手の立場を気遣いながら言葉を選べば、そうそう失敗することもなくなると思いますよ。