病院という枠のなかの中心に患者がいて、その周りに医師、看護師、栄養士、理学療法士、作業療法士、他にも院内には多数の専門スタッフが治療と、その介助を行っています。
この中で看護師のポジションは、おそらく医師と同じくらい患者に近い位置にいるとイメージできると思います。実際、患者の一番近くでケアを行っているのは看護師です。
チーム医療においては、看護師の役割、働きかけ次第で医療の質が大きく変わります。
そんな中、看護師がどこに、どのように働きかければよいのでしょうか。
重要なポイントは「情報の共有」ではないでしょうか。
円滑なチーム医療を行うために看護師が最初にすべきこと
最初にすべきことは『アナムネをとる』。つまりアナムネーゼをしっかりと丁寧に聴取することです。あたり前のように思われますが、ここで必要な情報が欠けているとチーム医療は発揮できません。患者の病歴、生活習慣、疾病の原因となる情報をとることは、誰でも一番に聴取しアセスメントをはじめると思います。
しかし、入院時に早い段階で、患者のキャラクター、家族構成、自宅の構造、介護者あるいは協力者の負担など、患者の退院後の生活をイメージして聴取しておくことは、治療の開始と同時にスムーズに退院を迎えるための準備にとても大切な情報です。
私は過去、退院間近になって自宅退院が困難、介護者の協力が得られない、などの理由で退院日が伸びたり、退院したはずの患者が数日で再入院をしてしまうという問題にいくつか直面したことがありました。
その度に学んだことが、アナムネーゼを丁寧に、かつ有効に聴取し、患者に関わる他職種のスタッフと情報を共有するということでした。
医師との情報共有
医師は患者の入院時より病態生理、治療方針を確認し、原因を追及します。看護師はそのような医師の意図を正確に理解して、他職種に伝達します。
普段医師は外来、検査、処置などの業務で忙しいです。看護師も医師とは一定の時間を割いてゆっくり話し合うことは難しいですが、他のスタッフはもっと難しいのです。
より効率良く情報共有するためには、私たち看護師も事前に病態生理、検査データやアナムネーゼの内容からアセスメントを行ったうえで、声をかけるなどの工夫が必要です。
頭のいい看護師でも、一見、自動的に医師の治療を理解し、ケアを始め、医師の意図を理解し、すぐに行動できる素晴らしい看護師にみえるかもしれません。しかし病態ばかりに重点をおくと、少しの誤認が後に大きく影響することもあります。
やはり人間が考え、実施することは、間違いも起こり得ることを忘れず、同じ認識をもてるように言葉を交わすことが重要です。
他職種との情報共有
医師との情報共有の後、早期に必要な専門職への介入を依頼します。
職種によっては介入開始するまでに時間がかかることもあります。看護師がいかに早期に働きかけるかで、患者に提供できるケアが変わります。
そして、最も大切なことは、看護師が情報を抱えず、全スタッフで情報を共有するということです。
例えば、薬剤師には服薬指導だけでなく、服薬介助が必要な患者や認知症の患者には、治療に支障がきたさない範囲で服薬回数や量の調整を検討してもらい、医師に提案してもらうことも患者の個別性を考慮したケアになります。
理学療法士、作業療法士には、リハビリの目標設定が実際の患者の退院後の生活に必要な運動量と機能に合わせてもらいます。
また、介護が必要な場合にはその介護者の負担が少しでも軽減できるように、介護者の希望を聞き、介護者への指導も依頼することも患者とその家族を含むケアにつながります。
他にも栄養士、MSW、認定看護師も同様に情報を共有し、介入を依頼することで質の高い医療を提供することができます。
患者との情報共有
私たちスタッフが一生懸命、患者のためにと思って実施しているケアも、患者にとってよい影響があると本人が実感できなければ、不安や不信感を与えかねません。ケアによっては実感できない変化もたくさんあります。
療養の主体はやはり患者です。患者にも状況を説明し、どのような目的でケアを行っているかを理解してもらうことで、患者が安心してチーム医療のなかで闘病できます。
闘病中の苦痛や不安もチームで共有し、ともに同じ方向をむいていることを伝えましょう
カンファレンスを開催すること
そして、ここでもう一つ重要なことは、カンファレンスです。
それぞれの部門が孤立して動いていても、患者の回復には有効ではありません。それぞれのケアが患者の状態に合わせて、最も有効となるためには、全スタッフの情報認識を一致させておかなければいけません。
これも看護師が時間、人をうまく動かし、調整しなくてはいけません。カンファレンスを開催する、これはチーム医療を行うなかで最も有効な手段です。
とはいえ一看護師が他職種を集め、時間を割いてカンファレンスをするということは難しいです。上司に目的、具体的な日程と時間を提案し、他職種の上司にシフト調整を依頼してもらう必要があります。
もともと他職種とのカンファレンスが実施されている場合も、できるだけ多くの職種が参加できることが望ましいので、不足していたり、必要と考えられる職種があれば提案してみることもいいと思います。
おわりに
院内には多数、多職のスタッフがいて、それぞれの役割を担っています。
それらのスタッフが協力し合い、専門知識や技術の強みを引き出してこそ、質の高いチーム医療が発揮できるといえます。そこで患者を中心にその他職種を連結させる役割が看護師です。
カンファレンスという場を設け、情報をお互いが共有しあい、ケアを評価しあい、コミュニケーションの中心にいることがチーム医療の中の重要な看護師の役割といえるのではないでしょうか。