りさん (女性) からのお悩み
麻痺の報告がスムーズにできません。MMT(徒手筋力検査)を使用していない病院での実習なのですが、看護師に分かりやすく伝える方法が知りたいです。
たとえば、多発性脳梗塞の患者さんで右片麻痺の場合、左手の健側と比較する場合。
1. 患者さんが右手が全く挙上できない。指は微動する程度。握手をすると少し握力が入る。くすぐるとくすぐったいコトが認知できる。
2. 右足も挙上できない。下肢を膝立するとすぐに外転する。たまにゆるやかに伸展する。下腿をさわると少し力が入る。
の状況です。
私は「麻痺の観察を報告します。右手側は(バンザイ運動と挙上はできませんでした。握手をした際、わずかに力が入ります。指もわずかにうごきます。右足側は挙上されず膝たてをすると、ゆるやかに伸展されました。右足指はわずかに動きます」です。
看護師により、わかりにくいと指摘がありました。わかりやすく報告したいです。
アドバイスください。
椿(ツバキ)からの回答
まずは、先輩看護師がどのように報告しているのか確認しましょう
まずは、りさん、実習お疲れ様です。
学生さんの実習って、過度の緊張があると思いますし(一応は経験者、はるか昔ですが)、慣れないことをするって、やっぱり大変ですよね。
でも、りさんの”知りたい”って意欲は、良いですね!
意欲がある人は、必ず伸びていくはず。くじけず、一緒にがんばりましょう。
さて、病棟の申し送りにおける「麻痺の報告」ですね。うんうん、これはべテランになっても難しいときがありますよ。
報告の仕方は、夜勤看護師からの申し送りや記録を参考に!
まず、りさんに確認ですが、朝、実習がはじまった直後にあると思われる「夜勤看護師からの申し送り」は、どれくらい参考にしていますか?
自分がどうやって報告すれば良いか分からないとき、最初に参考にするのは、「夜勤から日勤への申し送り」が良いでしょう。
最近は申し送りをやらないところもあるようなのですが、その場合には、夜勤看護師や前日の日勤看護師が書いた【看護記録】を見て、ぜひ勉強してください。
「朝から記録なんてチェックできないよ~」と思う人もいるかもしれません。りさんもそうかな?
でも、実習がはじまる前、患者さんのところに行く前に、必ず情報収集という時間がありますね。それでは足りないと思うなら「あと5分早く来る」という許可を取れば良いんですよ。
大まかな患者さんの情報収集は、ほとんどの場合、初日の病棟オリエンテーションの後におこなわれることが多いですよね。
でも、看護記録は毎日、更新されていくはず。その看護記録に麻痺の状態は何て書かれていたか確認しましょう。
医療用語を使って言葉を統一してみよう
MMTで報告していなくても、看護スタッフ全員でその患者さんの状態を共有するためには、何かしらのポイントがあるはずです。
きっと、使用される言葉が統一されていると思います。実際にどんな医療用語が使われているのか確認してみましょう。
ただ、りさんの報告を聞いてくれる(報告を受ける)看護師だって、ガッチガチの医療用語を期待してるとは、考えにくいです。なんてったって、りさんは学生なんですから。
報告と記録では差があっても良いので、自分が理解できている範囲の医療用語を使ってみるべきだと思います。その方が自分も納得しながら報告ができますよね。
リハビリ関係の本や、脳神経学の教科書でも麻痺の表し方は載っていると思います。
報告例を挙げてみましょう
・今回の患者さんの状態は…
- 患者さんは、右手の挙上が全くできない。指は微動する程度。握手をすると少し握力が入る。くすぐると、くすぐったい感覚が認知できる。
- 右足も挙上できない。下肢を膝立するとすぐに外転し、たまにゆるやかに伸展する。下腿をさわると少し力が入る。
という状況、ということで良いでしょうか。
・今回のりさんの報告は…
「麻痺の観察を報告します。右手側は、バンザイ運動と挙上はできませんでした。握手をした際、わずかに力が入ります。指もわずかにうごきます。右足側は挙上されず、膝立てをすると、ゆるやかに伸展されました。右足指はわずかに動きます」
でしたよね? でも、これだと分からないと看護師に言われた。
・もし看護師として、この患者さんの状態を報告するなら…
例えば、こんな報告はいかがでしょうか。
『午前中(午後)の○○さんの患側の麻痺の状態は、右上肢は自力での挙上不可ですが離握手(りあくしゅ)では若干反応があり、○指(指の名前)も若干反応ありでした。
右下肢も自力では挙上できませんでした。膝立は保持できず、ゆるやかに進展しましたが、足指は若干、反応がありました。触覚に関しては問題なく、麻痺側でも反応がありました。
昨日と比較しても変化はありませんでした。
(※変化があったら、しっかりとどんなことが前回と違うのか報告すること!)
健側に関しては~~~~~
以上です。』
という感じになるのかなと思います。
報告は、患者さんをどのように看護していくかの確認
こういった麻痺のある患者さんの場合、その治療や看護ケアの目標は基本的に、患者さんが自立して、立ったり歩いたりなどのセルフケアができるようになること、だと思います。
例えば、患者さんに『どのくらいの力加減がついてきたのか』をわかるように説明するためには、「何かがあればコップがもてる」とか、「何かがあれば座位が保持できる」など、”こうすれば自力でできる”ところを、見つけ、それをあげていくと良いのではと思います。
『麻痺の状態を報告する』ということは、その状態に対して、あなたがこの患者さんをどのように看護していくのか?を確認することが基本なんだと思いますよ。
最後に、わかりやすく麻痺の報告をするコツ
1. 夜勤者から日勤者への報告を必ず確認する
その患者さんの麻痺について、特に以下の情報収集すること。
- どんな風に申し送りをしているのか
- どんな用語を使っているのか
- 記録にはどのような表現がされているのか など
2. 医療用語がわかったら、自分が納得できる報告をする(報告と記録は違う)
完璧は求められていないが、最低限、1.で使われている医療用語は使うように練習すること。つまり、その意味を自分自身でしっかり把握すること。
3. みんなで報告の練習をする
学生同士、または実習終了後のカンファレンスのテーマにして、みんなで共有したり、先生を一緒にいれてトレーニングしてみるのもいいですね。
報告は一度で完璧にできることはほぼ無いし、りさんができないことはグループのみんなもできていないと思いますよ。チャンスがあるなら、他学科(リハビリ科とか?)の学生に聞いてみるのも良いでしょう。
4. 必ず前回の麻痺状態と比較する。変化があった場合は、必ず報告する
5. 麻痺だけにとらわれず、その患者さんの残存機能に注目し、セルフケアとしては何ができるのかを考える
MMTはとても大事な指標です。
そのため、使わない場合は何かしらの(病院独自の)指標があるかもしれません。それを調べてみることも、とても勉強になりますよ。
個人によって麻痺の状態に解釈のバラつきがあると大変ですからね。
ドクター記録なども参考にするとよいです。「読んじゃダメ」なんてことはないと思います。あくまで勉強のためですから。
ベテランでも、もちろんICU・CCUなどでも、患者さんの微妙な力の入れ具合などは、申し送り時にベテラン同士、患者さんの動きを共有しながら麻痺状態を確認することだってあります。(というか、そうしないと患者さんへの治療やケアが人によって違う、というよろしくない状況を生んでしまうので)
言葉の表現など迷ったら、看護師や先生に「一緒に確認してください」といえる勇気もあるといいかもしれません。
看護師はなんでもダブルチェックですから、断る方がおかしいですよ。
いずれにしても、今回りさんが、申し送りのやり方に疑問を持ち、解決策を探ろうとしているのは、とても良いことだと思います。
この姿勢は、今後もずっと持ち続けてほしいです。頑張ってくださいね。