本音を言えば、できれば避けて通りたい患者さんからのクレーム。
でも、対応するのが管理職だけで本当にいいのでしょうか?人を相手にする仕事ですから、クレーム対応は職務としてスタッフみんなが取り組むべきものです。
ではスタッフを育てるために、どのように指導していけばよいのでしょうか?
クレーム対応は誰の仕事?
「師長ぉ 患者さんがクレーム言ってます~」
「何て言ってるの?」
「言ってることがよくわからなくて、とりあえず怒ってるんです」
「……」
クレーム対応は管理職の仕事、自分には関係ないと思っているスタッフは結構多くいます。
それは態度にも表れますから、「私に言われても」「私は関係ない」といった対応をし、患者さんはさらに怒りを増幅させることになります。
クレーム対応は、スタッフ全員で取り組む仕事です!
とはいえ、対応のすべてをスタッフが引き受ける必要はありません。
大切なのは正しい報告と応援要請、そしてクレームと向き合う姿勢です。
クレーム対応のキモ その1:まずは話を聴くべし
入院中の患者さんが
「この病院はどうなっているんだ!師長をよべ!」
とナースステーションに怒鳴り込んできました。
さぁ、あなたならどうする?
- 「師長を呼んできます」と管理室に走る
- 「どうしたのですか」と尋ねる
- 「そんなに大声出さないでください」と落ち着かせる
呼べって言ってるので1を選択したい気持ちもわかりますが、
ここは一息深呼吸をして、2の ”「どうしたのですか」と尋ねる” で、『患者さんが何を怒っているのか聴く姿勢』を示してください。
クレームの80%くらいは、話を聞けば解決するといっても過言ではありません。
訴えを聞いてもらいたいから、患者さんはナースステーションに来たのです。
怒鳴っているという事象にとらわれてはいけません。結論はその場で出さなくていいんです。
まずは話を聴いてみましょう。
ちなみにいきなり3を選択すると、たいていは炎上するので注意。
クレーム対応のキモ その2:なるべく早く対応せよ
たとえばファミレスで頼んだ料理がなかなか来なかったとします。
店員に聞くと、「少々お待ちください」と言ったきり戻ってきません。
30分後、ようやく料理がやってきて、「オーブンの故障でした」と言われました。
…「店長呼べ!!」ということになりますよね。
一般的に、時間の経過とともに怒りは増幅していくので、待たせれば待たせるほど患者さんは怒ります。待たされる理由が不明確であれば、さらに火に油となります。
そのため、最初の接触者による出来るだけ早い対応が必要なのです。
この店員が声をかけられた時に、
「お客様、大変申し訳ありません。オーブンの故障で、料理提供まで30分程度かかる見込みです。最大限の努力をしてまいりますので、お待ちいただけますでしょうか?」
こんな対応をしていたら、結果は大きく変わってきます。
なるべく早い時期に謝罪、情報伝達を行い、患者さん本人に選択肢を与えることがポイントです。
クレーム対応のキモ その3:真意を読み取るべし
本音って、なかなか言いにくいですよね。
クレームの多くは最初から本音を出さないため、訴えが二転三転することがあります。
繰り返し言いますが、怒鳴っているという事象にとらわれてはいけません。
それは本音なのか?意見なのか?交渉なのか? 客観的に真意を読み取ることが大切です。
いろいろ言ってはみたものの、答えが欲しいわけではなく『自己防衛の結果』である場合もあります。時には感情を受け止める覚悟も必要です。
クレーム対応のキモ その4:応援要請と報告は確実に
クレーム対応は初動が大事!と書きましたが、ひとりで全部抱え込む必要はありません。特に身の危険を感じたら、絶対に一人では対応せず応援を呼びましょう。
初動対応が適切であれば、応援する側もスムーズな介入が可能です。そして、些細なクレームも管理職に報告しましょう。
おわりに :管理職は最後の砦!
常に注意しなくてはならないのは「スタッフを孤独にしないこと」。
クレームに対応するのはやっぱり怖いもので、すべてが自分の責任になるかもしれないと感じるとスタッフはなおさら消極的になってしまいますし、「なんで自分が!」という怒りに変わることもあります。クレーム対応は組織で行うことを忘れないようにしましょう。
「最後は自分が責任とります!」そう言ってくれる管理職であれば、スタッフは安心してクレームに立ち向かえることでしょう。