いまだにナースを召使いと勘違いなさってるドクターの方々…残念ながらまだいらっしゃいます。今回はそんな彼らとナースの仁義なきエピソードを通じて、困ったドクターに振り回されないためのちょっとしたコツをご紹介します。
エピソード1: 注射処方切れ
夕方に翌日からの注射処方が切れていることに気付いたナース。
ドクターへ報告すると
「なんでもっと早く教えてくれないの?僕はもう帰らなきゃいけないんだよ」
と叱られてしまった。
さらに「そっちでどうにかしておいてよ 他の先生に頼むとかさ」と無茶ぶり。
今はまだ勤務時間内ですし、他のドクターは手一杯。困り果てるナース。
そこで、ニッコリと満面の笑顔で
「先生、ご報告が遅くなって申し訳ありません。でも、気づいてよかったです。
明日からの注射がなかったら患者さんに迷惑がかかってしまいますから。」
と一言。無事に注射指示を出していただきました。
エピソード2: ナースは伝書ハトじゃない!
A先生: 「この患者さん、○○科に依頼しておいて」
B先生: 「いや、この症状はそっちの科で診るべきでしょ。そう言っておいて。」
A先生: 「そうじゃなくて、ちゃんと伝えたの?この症状を診てもらいたいの!」
ナースがカルテを抱えて行ったり来たり…
そこで、おもむろにPHSを取出し、
「もしもしB先生、A先生からご相談があるそうなので、お電話代わりますね」
と満面の笑顔でPHSをA先生に渡しました。
A先生は渋々電話を代わり、B先生に診察依頼をし、無事に患者さんの診察をしていただきました。
エピソード3: プライベート事情の持ち込み
夫婦喧嘩して落ち込んでいるC先生。
今日は患者さんの退院を決めるカンファレンスがあるのに
「今日はそんな精神状態じゃないんだよ…別の日にしてもらって!」
この日のために様々な職種のスタッフを招集しているし、患者家族だって待っている。
そのことをナースが伝えても聞き入れない。
そこで、なるべくさわやかな笑顔で、
「今日カンファレンス予定のHさんの奥さん、先生とお話するのを
とても楽しみにしておられて、予定の30分も前から待ってらっしゃいますよ。
Hさん、退院が決まったらお孫さんと釣りに行く約束をするんですって。
今日はスタッフも大勢待ってますから、行きましょう先生!」
とさりげなくカンファレンスルームへご案内。
無事カンファレンスが行われ、Hさんの退院日が決まりました。
困ったドクターへの対処法
どのエピソードも、はっきり言ってドクターの問題です。
注射処方をきちんと行うことはドクターの責任ですし、他科へ頼むなら直接ドクター同士で話すほうが的確です。そして、言うまでもなく、仕事にプライベート事情を持ち込むなんて、職業人として問題です。
しかし、それを真正面から切り込んでも、残念ながらあまり効果がないと思います。ポイントは「満面の笑顔で、こちらの要望をストレートに伝える」こと。
たとえばエピソード1の場合、「先生が処方を忘れたのが悪いんだし、まだ勤務時間内ですよね」と正論を申し上げた場合、おそらく炎上して処方を出さず帰ってしまうでしょう。
ここで論議すべきは、ドクターが自分の仕事をきちんとやるべきということではなく、患者さんへの影響を防ぐことを最優先とすることです。もちろん、上記の方法が必ずしもよい方法というわけではなく、あくまでケースバイケースですが。
ドクターのせいで自分たちが困るといった言い方ではなく、笑顔で「患者さんのためにお願いします!」と言ってみてはどうでしょうか。
おわりに
ナースは女優になるべし!
「患者のためを思うなら、ドクターを怒らせてはならない」
昔、スタッフにこう指導していたナースがいました。
ドクターを怒らせてしまうと、患者さんに必要な指示がもらえなくなり患者さんに迷惑がかかる。だからナースは常にドクターの機嫌を損ねないよう注意しなければならない…。
一理ありますが、無理もあるかなとは思います。
患者さんに精一杯の気遣いをしたいのに、さらにドクターに最大限の気遣いをしていては、ナースの心の健康が心配です。だからこそ、ナースは女優になりましょう。そして管理者こそ、スタッフを守るために大女優になりきりましょう。
なるべく事を荒立てず、でも不当な要求は受けない!
遠慮や我慢ではなく、言い方や攻め方を少し工夫することで、お互いストレスなく仕事ができたらいいですよね。