匿名希望さん (女性) からのお悩み
こんばんは。椿さん、相談させてください。
私はこの4月に入職したばかりの新人看護師です。元々、手術室希望で、希望通りに配属されました。
術式や器械の種類など、とにかく覚えることが沢山あり、学校でならったこととは全然違うので、本当に大変です。
しかし、少しずつですが、自立で入れる器械だしも増えてきて、大変ながらもやりがいを感じていました。
3ヶ月の研修期間が終わり、7月から正職員となったのですが、プリセプターの先輩が急にものすごく厳しくなりました。
先輩の言っていることはごもっともなのですが、「器械だしが遅い」、「物品が揃えられてない」、「術式をきっちり理解できていない」などと、とにかく怒られる怒られる…。
先輩には、ただただ「すみません」と言うばかりです。
また、何をしていいのかわからない時に、私はオロオロしてしまいます。そんな時、先輩からは吐き捨てるかのように、「もっと気づいて動きや…」とのお言葉!
することに気づけていたら、行動にうつしています。うつせないのは、本当にどうしていいかわからないからなんです…と反論したくても、「はい。すみません。」としか言えません。
先輩からは、急に後ろから服を引っ張られたり、何かしようと手を伸ばしてもはらいのけられたり…もします。
この先輩は毎年、自分のプリの子にはものすごく厳しいらしく、去年の先輩はそれで部署変更したそうです。他の同期の子に聞いても、「自分にはとても優しく教えてくれる」とのことで、私と同期の子とでは全然先輩の対応が違うんです。
「自分の担当の子に育って欲しい」という思いを先輩が持つのはわかります。
けれど、私は入職して4ヶ月。覚えるのもなかなか難しいし、先輩みたいにうまくはいかないのは当たり前だと思います。
それでも私は、家に帰っても振り返りをしたり、疾患について調べたりして日々努力しているつもりです。帰ってからは、ほとんど、振り返りして、寝るだけの繰り返し生活です。
毎日叱られることばかりで、先輩から褒められることがひとつもありません。
私は自信もなくなってきてしまい、術中もどのタイミングで聞いていいのかわからず、自然と声も小さくなってしまい、先輩からは「聞こえへんっていってるやろ」と叱られるので悪循環です。
自分で希望して選んだ部署なので、頑張りたいっていう気持ち、逃げ出したくないという気持ちはあります。
でも、ここ数週間は、朝の出勤前に家をでようとしたら、決まってお腹が痛くなり、下痢をしてしまいます。
私は元々便秘で、一週間に一回でるかでないかくらいです。お休みの日は不思議となにも出ないです。また、過緊張なのか、動悸がすごくて(胸のどきどき)、吐き気がすごいです。髪の毛の抜ける量も、はげるんじゃないかというくらい増え、時々、胸や背中を針で刺されたような痛みに襲われます。
休んでしまったら、もう仕事へいけなくなると思い、つらい気持ちを我慢してとにかく出勤しています。頑張ろうと思う気持ちに、心はなんとか引っ張ってきていますが、体がついてきていないような気がします。
科長さんに相談するのが1番いいんだと思いますが、言ったあとに、先輩の風当たりがもっときつくなったりするんじゃないかと思うとなかなか言い出せません。
どうすればいいんでしょうか?仕事のことを考えただけで吐きそうなんです。
看護師は人の命を預かる仕事、大変なのは当然だと思います。大変でも、やりがいを感じて少しでも楽しく働きたいのが希望です。
つらいなって考え出すと、無理して今の所にこだわらなくてもいいんじゃないか??と悪魔が囁いてきます。でも、どうしたら良いのかわからず…長々すみませんが、アドバイスを頂けたらと思います。よろしくお願いします。
椿(ツバキ)からの回答
プリセプターが怒るには何か理由があるのかも。まずは、今自分がやれることを考えてみましょう。
匿名希望さん、こんにちは椿です。
お名前も頂いていますが、匿名希望とのことですので、ここでは「匿名さん」とお呼びします。
手術室はちょっとした異空間です
匿名さんのお悩み、拝見しました。
手術室の新人さんとのことですが、まるで20年ほど前の自分を見ているようなので、色々と考えてみたいと思います。
まず、お悩みの中に、「術式や器械の種類などとにかく覚えることが沢山で、学校でならったこととは全然違うので、本当に大変です。」とありますが、まさにその通り。
新人はどこの部署でも「覚えることが多くて大変」といいますが、手術室は学生の頃の勉強で役に立つことなんて、本当にごくわずか。新たに覚えることの量が半端ない世界です。ちょっとした異空間だと考えても良いくらいです。
例えば、卒後数年が病棟ではリーダーを務めるくらいの先輩ナースでも、手術室へ移動したことで、これまでの経験が”なーんにも役に立たない”と、看護師としての自分に自信を無くすこともあります。それだけ、新しいことを覚えていかなくてはいけない部署なのです。
ここまでは前置きです。では、匿名さんのお悩みを見てみましょう。
プリセプターは、教育する立場にある
匿名さんのお悩みの中心にあるのは、プリセプターである先輩の”表と裏の態度の違い”ですね。
まず、7月に正職員になってから急に厳しくなったということですが、これはまぁ分かる気もします。
4月からの3ヵ月はいわゆる試用期間なので、この時期に厳しくすると辞めてしまう人も多いんです。だからそのプリセプターさんは「試用期間は厳しくしないこと」と、上の人から言われていたのかもしれません。
それから、同じプリセプターさんにあたった去年の先輩(匿名さんの1年上ですね)が、辛くて部署を移動したことや、プリセプターさんが担当している新人さんと他の新人さんとの態度が違うことは、恐らく上の人たち(科長さんとか?)は、ご存知なのだと思いますよ。
それでも、”そのプリセプターさんを新人さんに付ける”ということは、病院側にも何か意図があるのだと思います。
恐らく、匿名さんのプリセプターさんは、自分自身が”教育する立場にある”ことに、大きな責任を感じているのではないでしょうか。「もっと気付いて動きや」という言葉の裏には、「前にも教えたでしょ?」という意味合いがありませんか?
プリセプターさんが、匿名さん以外の他の新人さんには優しいのは、他の人たちへの”教育する立場としての責任が無い”ためではないでしょうか。
プリセプターがプリセプティに厳しい3つの理由
私自身は、プリセプターがプリセプティに厳しい理由は3つあると考えています。
- 厳しく教育しても、「この新人なら」と大きく期待されていること
- 必要以上に厳しくすることで、手術室看護師を諦めてもらうということ
- プリセプターのストレスの吐き口になっているということ
この3つは、まったく違う意味を持っていますので、対応も変わりますよね。
それぞれ理由を見ていきましょう。
1. 厳しく教育しても、「この新人なら」と大きく期待されていること
前述の通り、手術室看護師って新たに覚えることが非常に多く、単に”優しい”とか”丁寧”とかでは済まない部分もあるのです。
その手術室の忙しさにもよりますが、早いところ独立(匿名さんの言葉でいえば”自立”)しないと手術室の運営が立ちいかなくなるところですから、少々厳しくても、看護師にはしっかりと『自分で考える』部分を身につけてもらわなくてはなりません。
だからこそ、厳しくするという場面も、多くみられるところだと思います。
私が新人で手術室に入った時は、プリセプターという制度はありませんでしたが、間違った器械を出せばドクターに投げられたこともありましたし、オロオロしてしまって必要な動作ができなければ、先輩ナースからの怒声が響いたこともありました。
次に、2と3ですが、プリセプターの性格にもよりますが、これは、ある意味”いじめ”につながることかもしれません…
2. 必要以上に厳しくすることで、手術室看護師を諦めてもらうということ
これに関して言えば、本人に手術室看護師としてやる気があっても、
- 本当に色々なことが覚えられない
- マニュアル以外のことが起きたら対処できない
- とっさの時にまったく動けない
以上のような人は、やはり手術室看護師には向いていないのかもしれませんので、手術室看護師を諦めさせるために、プリセプターが必要以上に厳しくされてしまう場合があります。
まぁ、新人ならできないのが当たり前なんですが…
3. プリセプターのストレスの吐き口になっているということ
これに関しては、実際に、新人いじめを自分のストレスのはけ口にしているプリセプターもいます。こういうプリセプターにはあたりたくないものです。
手術室看護師を続けるために、匿名さんにやってほしい5つのこと
匿名さんも分かっておられると思いますが、つらくて1日でも休んでしまうと、恐らくもう仕事に行けなくなるでしょう。
まずは、匿名さんが休まず手術室看護師を続けるためにも、椿がまず匿名さんにやってほしい事をまとめてみますね。
1. 勉強方法を見直す
匿名さんは、家に帰ってからも色々と勉強しているようですが、「物品が揃えられていない」とか「術式を理解していない」とプリセプターさんに言われてしまうのは、やはり勉強不足なのかもしれません。
勉強の量が足りないのではなく、勉強するポイントが間違っているのだと思います。もう一度勉強方法を見直してみてはどうでしょうか。
あと、「器械だしが遅い」のは、常に術式(手術の流れ)を先読みする訓練をし、慣れていくことが必要です。
2. わからない時は、大きな声で周囲に聞く
私自身は匿名さんに、もっと大きな声を出してほしいと思います。周りの看護師や医師に、「え?そんなこと?」という質問ができるのは、新人の1年間だけです。
私は性格的に、おそらくプリセプターさんと似ています。この前も教えたじゃん!という場面で、新人さんがオロオロしているのを見ると、イラッとしてしまうこともありました。
そんな時に小さな声で「すいません」しか聞こえて来なければ、分かっているのかどうかも伝ってきませんし、何をどこから説明すれば良いのか、プリセプターの方も分かりません。
「そうなると余計に厳しくなってしまう悪循環です」というのも何となく頷けます。「聞こえへんっていってるやろ」というのは、まさにコレなのでは?と思います。
本当にどうすれば良いかわからない時は、「何をすればいいのか、指示して下さい!」と周りの人にも聞こえるように、大きな声を出してみてはいかがですか?
3. 上司に相談する
匿名さんは体調不良も起きているようですので、ここは思い切って、上の人に相談してみても良いのでは?そのときの相談の内容は、あくまで体調不良であることがメインとしてです。
そして、上の人から「じゃあ休みなさい」といわれたら、「実は原因はココに…」と現状を伝えれば良いのです。
それでもしプリセプターさんの風当りが強くなるようなら、匿名さんはもっと自分を強くもって、プリセプターさんに分からないことは分からないとはっきり言うことも必要です。
4. プリセプターの先輩と話す
椿は怖い先輩に「なぜ、新人にそんなにつらくあたるのか」と、勇気を出して聞いたことがあります。返ってきた答えは「自分の新人の頃を見ているようで、イライラする」でした。
匿名さんも、勇気を出して「なぜ自分にばかりそんな態度をするのか」を、一度じっくり、プリセプターさんと話し合うことも、必要かもしれません。
匿名さんが、怖がって萎縮したままでは、先には進めないと思いますよ。
5. 時には、プリセプターに刃向かってみる
本来なら”そんな職場は辞める”方が良いかもしれません。
しかし、ここで逃げ出してしまうと、恐らくこの先もずっと『嫌な人がいたらそこから逃げる』ことになるかもしれません。
匿名さんの体調との相談ではありますが、私自身は『(怖い)プリセプターに刃向ってみる』ことをしてほしいと思います。そうすれば、匿名さんの”対人スキル”は格段に向上すると思います。
嫌な人、自分に冷たい人とどう接するか、これも社会人としてのスキルではあります。
椿も手術室新人看護師の頃は、便秘と下痢をくり返したり、朝起きると強い吐き気に襲われたり、考え過ぎて眠れなったりすることもありました。
椿の場合は、”新人同士で愚痴を言い合う”、”とにかく仕事中は必死でメモを取り、家に帰ってからそのメモを何度も読み直す”などをすることで手術室看護師を続けられたのだと思います。
匿名さんも、まずは手術室看護師を続けるために、自分がやれることを考え、行動してみませんか。
それでも「やっぱりダメ」と身体が悲鳴を上げるようなら、異動や転職を考えてみてはいかがでしょう。