ウルフィーさん (?) からのお悩み
看護師の仕事をするようになってから、機能別看護推進の個人病院で6年間勤務し、その後、今の職場に転職し回復期病棟を2年経て、今年度からプライマリー看護推進の一般病棟勤務になりました。
プライマリー看護で患者さんを受け持っていますが、看護介入について悩んでいます。
ご家族に受け持ちの患者さんの病状説明を受けていただき、患者さんの状態についてご家族からは「理解した」と言われました。
しかし、後日ご家族から「こんな状態とは思わなかった」と言われ、先輩看護師にも「コミュニケーションが取れていない」「看護介入が全くできていない」と言われました。
ターミナルの患者さんとの関わりでも、先輩から「患者さんの状態について行けてない。何で、退院できたタイミングを逃したの。患者さんも家族にも残念な事例になったね。」と言われました。
ご家族も、患者さんの病気を理解していると考えたうえで、介護申請などをしてもらうように早期に説明してきましたが、「仕事が忙しい」となかなか動いてくださいませんでした。
患者さんが一番帰れる状態の時になって、ご家族もようやく動き出してくださったのですが、退院日になると患者さんの状態が悪化し、結局退院することができませんでした。
患者さんやご家族と上手く関わったり、看護介入ができず、自分なりに考えて行動してもうまくいきません。
看護の仕事は好きですが、最近は特に自信が持てません。どうしたら良いのでしょうか。
椿(ツバキ)からの回答
常に『看護師の仕事の本質』を考えていれば、”やらなくてはならないこと”が見えてくるはず
ウルフィーさん、こんにちは。椿です。
ウルフィーさんのお悩みを拝見してまず感じたのは、『物事の本質をとらえきれていない』『周りをよく観察できていない』ということです。
それから、先輩の対応には「今さらそれを言うか!」とも思いますけどね。
仕事のやり方と大きく変わった点にばかり意識が向いているのでは?
ウルフィーさんの場合、機能別看護からプライマリー看護に変わったことで、何か大きな不安を抱えてしまってはいませんか?
確かに機能別看護とプライマリー看護は、看護師の仕事の進め方として大きな違いがありますが、だからといって、看護師の仕事の本質は、そう大きな違いは無いと思います。
まず、看護師の仕事の本質を考えてみましょう。
- 患者さんが、今よりもより良い状態になるようにケアすること
- 患者さんの安全・安楽を一番に考えること
- 看護師としての仕事に、責任を持つこと
これらは、機能別看護でも、プライマリー看護でも、共通していますよね。
ただ、プライマリー看護の場合は
- メリット … 患者さんや家族との信頼関係が築ける、看護師の自主性が高まる
- デメリット … 看護師同士のコミュニケーションが減る、看護師の能力によって看護内容に差が生じる
という側面があるのではないかと思います。
ウルフィーさんの場合、現在の職場で何人の患者さんを受け持っているのか分かりませんが、それまでの仕事のやり方と大きく変わった点にばかり意識が向いてしまい、そこで思考が止まってしまっているように感じます。
でも、看護師の仕事の本質って、そんなに変わるものでしょうか。
仕事のやり方が変わることで、考えなくてはならないことは、きっとものすごく増えたと思います。
でも、根底にあるべきなのは、看護師の仕事の本質ですよね。これらを常に考えていれば、おのずと”やらなくてはならないこと”が見えてきませんか。
『物事の本質をとらえきれていない』『周りをよく観察できていない』、そんなウルフィーさんへ、椿からのアドバイスは次の3つです!
1. 患者さんやご家族と上手な関わり方をしている看護師を観察する
ウルフィーさんが『どうすれば良いんだろう』と考えた時は、まずは『自分の考え方に、凝り固まっていないか』と自分を振り返ってみてください。
そして、『周りの看護師は、どんな仕事をしているか』、他の看護師のやり方、患者さんや家族との関わり方を見てみてください。
患者さんや家族の状況は同じではありませんから、他の看護師とまったく同じことは出来ないと思います。
でも、上手な関わり方をしている看護師が、何を考えて、どう行動しているか、まずはそれを観察してみてください。そこにはきっと、ウルフィーさんのやり方とは、違う何かがあると思います。
先輩看護師に『コミュニケーションが取れていない。看護介入が全く出来てない。』と言われたそうですが、ではその先輩看護師との違いは、何だったのでしょうか。
ターミナルの患者さんの例でもそうです。家族の『仕事が忙しい』は、単なる言い訳だったのではないですか。
本当のところ、家族は患者さんを家に連れて帰る意思があったのでしょうか。そこを、ウルフィーさんはどこまで理解していましたか。
家族の本音として『家に連れて帰るのはちょっと…』と思っていたのであれば、『病気を理解していると考えたうえで介護申請などをしてもらうよう早期に説明してきた』ことも、家族からすれば、むしろ不要なことだったのかもしれません。悲しいことですが、そういった家族も実際には居るんです。
そういった、教科書通りではない現実を、どこまでウルフィーさんが的確に捉えていたのか、疑問が残ります。
2. 周りを”相談という方法”で巻き込むことも必要
先輩看護師からの『患者さんの状態について行けてない。何で、退院できたタイミングを逃したの。患者さんも家族にも残念な事例になったね。』という言葉も、もしかすると、もっと早く相談していれば、違う結果になったかもしれません。(まぁそれでも、「今さら言うか!」という気もしますが)
だからこそ、先輩看護師をもっと早いうちから”相談という方法”で、巻き込んでおいても良かったのではないかと思います。
特にプライマリー看護の場合、正解って1つではないと思います。患者さんの状況だけではなく、家族の状況、病状への理解度、経済的な背景など、人それぞれ違いますので、必ずしもコレが正解!というものは無いと思います。全てがマニュアル通りには、いかないんです。
だとしたら、自分よりは看護介入に長けている人たちに、自分の理解や行動が間違っていないか、不足している部分はないかなど、要所要所で確認を取ることも必要なのではないでしょうか。
ウルフィーさんの仕事の進め方を明確に理解しているわけではありませんが、お悩みの中に、そういった記述がまったくないことが、気にかかりました。
確かにウルフィーさんは、新人といえる年齢(経験年数)ではないと思います。でも、だからこそ、それまでと違う仕事のやり方になったのなら、本質から考え直すことが必要なのではないでしょうか。
3. 必要な人物とのコミュニケーションを多くとることが大切
看護技術は、慣れれば出来るようになるかもしれません。でも、他人の考えていることを正確に把握し、よりよい看護計画を立てることにも、ある程度は慣れが必要だと思います。
そこにはもちろん、”他人の考え方”という目に見えないものが指標になるという難しさはありますが、良い経験を詰めれば、それなりに追いつくことはできるのではないでしょうか。
そのためには、まず受け持ちとなる患者さんの病状を正確に把握すること、その上で、必要な人物とのコミュニケーションをより多くとることです。キーパーソンの見極めこそが重要なのです。これが不十分だと、良い看護計画には結びつきません。
ましてや患者さんの家族って、大部分は医療者ではありませんよね。その場合、看護師としての自分が分かる説明と、患者さんや家族が理解できる説明は、一致しないのが普通です。相手が(言い方は悪いですが)素人だからこそ、ある程度は「ホントか?」と、疑ってかかることも必要です。
家族が本当に理解しているのか、それを見極めることが看護師としての仕事の第一歩になるのではないでしょうか。そのための手段がコミュニケーションだと思います。
それから、経験豊富な人のやり方を真似ることも、ある程度は必要です。そのための手段が、”周りへの相談”なのです。
相手(先輩看護師)に、少しくらいウルサイと思われても構いません。現在の仕事の進め方に慣れるまでは、新人のつもりで、どんどん周りを巻き込みましょう。
それが、自分の仕事を上手く進められるようになる、第一歩だと思いますよ。